最終回は、登場人物たちが何を考え、何を思って何に向かって動いているのか感じてほしい。『VAVANT』飯田プロデューサー、最終回直前インタビュー!
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最終回は、登場人物たちが何を考え、何を思って何に向かって動いているのか感じてほしい。『VAVANT』飯田プロデューサー、最終回直前インタビュー!

残すところ、9月17日の最終回の1話を残すのみになったドラマ『VIVANT』。豪華出演キャストが生出演した9月10日の「緊急生放送SP」直後に放送された第9話の世帯視聴率は、14.9%を記録。SNSを中心として繰り広げられている番組に対する考察は最終回に向けてさらに盛り上がりを見せています。プロデューサー飯田和孝氏に、本作のヒットの要因や、撮影の舞台裏など伺いました。

今年最大のドラマ『VIVANT』は、国会答弁での会話から始まった!?

━━10日の150分に及ぶ「VIVANTまつり!」でさらに盛り上がりを見せていますが、これまでを振り返って、どう感じていますか?

飯田:ひと言でいえば、ありがたいしかないですね。この盛り上がりを、役者さんもそうだし、スタッフも喜んでいる。何より、今年の2月に国内でクランクインし、5月からはモンゴルに行って2ヵ月半、そしてまた国内で1ヵ月半、クランクアップまで7ヵ月に及ぶ長期間、ずっと撮影に関わったスタッフの家族、田舎にいる親たちもこの盛り上がりや番組の人気できっと報われているんじゃないかと思います。阿部(寛)さんが取材のときに言ってましたが、街を歩いていると、「この後、どうなるんですか?」「野崎は敵、味方どっちなんですか?」とすごく声を掛けられる。1つの作品でこんなに気にされたことは今までなかったと…。そう考えると、先日の特番では、それが如実に感じられたと思います。同じ時間に同じドラマについて盛り上がったこと、これは映画でも配信でもない。やっぱりテレビ番組でしかありえない。テレビの楽しみ方というのを、多くの人が一緒に体感してくれたということが率直に嬉しかったですね。

━ところで、そもそもこの企画自体はいつからスタートしたのでしょうか。

飯田:これは(本作の原作・演出を務める)福澤克雄監督が企画なさったのですが、、2021年の4月期に『ドラゴン桜』をやった後、、その年の10月ぐらいに企画が決まったかと思います。

━━『VIVANT』は自衛隊の影の諜報部隊“別班”の一員が主人公ですが、物語のベースになるようなものはあったんですか。

飯田:ある時、福澤監督がラジオを聞いていたら、国会答弁で「別班」について語っていたそうなんです。日本にも“別班”という組織があって、人知れず日本の安全を守っているということを知ったときに、恐ろしいというのではなく、むしろ安心したらしいんです。この監督の思いは、2話の野崎のセリフにもなっています。そして、同時に、これはドラマになると思って、インスピレーションが湧いたらしいです。

━すごいですね。

飯田:もともと福澤監督は『24』や『ボーン・アイデンティティー』シリーズなどのスパイものの作品も好きだそうで、自分でも作ってみたいという思いがあったのではないでしょうか。ただ日本を舞台にしてテロ集団に別班の人たちが立ち向かうという物語にすると、なかなか実感がわかないし、すごく難しいんじゃないかというところで、監督は悩んで…。たどり着いたのが、別班を主人公にして、その彼が父親を探す物語だったと記憶しています。

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©TBS

スケール感ある物語、謎めいて複雑なストーリーを成立させた要因のひとつは、芝居達者なキャスト陣

━父親を探す物語になり、舞台は日本を飛び出してモンゴルで長期ロケ。非常にスケールの大きいものになりましたが、最初から意図されていたんでしょうか?

飯田:ストーリーが大切だけど、日本の人たちに別班、そして「テント」というテロ組織の存在を落とし込みたいときに、日本国内で銃やテロ組織といったことは、あまりピンと来ない。でも、それが異国の風景の中になるとあまり違和感を感じない。海外が舞台になったのは、ドラマの中に違和感なく入っていけるための道具という感じですね。

━━中でも、モンゴルになったのは?

飯田:モンゴルは砂漠もあるし、街もあるし、緑もあるし、草原もある。いろんな顔、いろんな要素を持っているというところで、すごくメリットがある。確かに、中東に行けば砂漠はあるけれど、緑はないという…その辺のこともあって選んだところはあります。

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©TBS

━━堺雅人さん、阿部寛さん、役所広司さんら非常にビッグネームの方たちをメインキャストに据えられましたが、このキャスティングのポイントは?

飯田:半沢直樹』『ドラゴン桜』『陸王』など、福澤監督がTBSで培ってきた財産である作品に主演された方たちということは大きいですね。二宮和也さんとも『ブラックペアン』で一緒に仕事をされています。松坂桃李さんと二階堂ふみさんは初めてですが、そこは監督も存在感や演技力などひっくるめて、2人を高く評価していました。

━━今回はメインキャストの方だけでなく、すべてのキャストがハマっている気がします。

飯田:そうですね。中心にあれだけの役者さんが集まっているだけでなく、お芝居が達者な方を集めています。よくキャスティングをするときは、ちょっと話題性のある人を入れますが、今回はメインにこれだけのビッグネームの方たちが揃ったので、事前のPRもしませんでした。だから、そもそも話題性のある人を入れるよりも、謎めいて複雑かもしれないストーリーを、しっかりと表現できる演技力のある人というのがキャスティングの基準になっています。

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©TBS

伏線は多いが、後付けではなく最初から各シーンの意味を意識して撮影

━━そんな方たちの中で、やはり堺さんの鬼気迫る演技、乃木とFとの一人二役、薫とのロマンスなど、繊細で緻密な役作りや演技をされていますが、現場で見ていらっしゃって、堺さんのここが凄い!を教えてください。

飯田:去年の10月には、堺さんには準備稿ですが、複数の脚本をお渡ししていました。ですからFの演じ方については最初から監督といろいろと相談されていた。口調を変えるとか、最初はそれこそビジュアルを変えようという話もあったんです。そうやって5ヵ月間ぐらい組み立ててたんですが、Fの撮影初日、リハーサルをやった後に方針が変わって。堺さんは「ガツーンと頭を撃たれたようだった」と言ってましたね。でも、ちゃんとその場で修正されたのだから、そこは凄い。あと、携帯電話をすり替えるシーンがありますが、あのシーンのためにマジック練習もされていて。堺さんのスケジュールの中に、「マジック練習」とあったり。今回の作品は伏線が多いので、それを演じるために、堺さんはものすごく前から準備されてました。

━━そうなんですね。

飯田:また、第1話で乃木がアリのデータを盗むシーンがあります。あのあたりでの乃木はアリにとって、ただの商社マンとしか見えてない。だから、アリを演じる山中崇史さんに対して、堺さんも鋭すぎてもいけないし。その辺の塩梅が、お芝居達者なお二人がかけ合わさっているからこそできているシーンなんだと感じました。

━━今回の『VIVANT』を作り上げていく上で、最も大切にされたことはなんでしょうか。

飯田:伏線が多い作品ですが、あとから、このシーンはこうだったということを追加して撮影しているのではなくて、実はこうだったということを最初からきちんと意識して、撮影の仕方も工夫しながら進めています。今、コロナ禍を経て視聴者の皆さんの映画やドラマを観る力があがっていると感じています。しかも、本作はこれだけ注目される作品になった。決して「考察ドラマ」を作っているつもりはありませんが、そうなっている。後からネタバレのシーンを撮って、前の演技とつながっていないということがありがちですが、そういうことは絶対にないよう、監督も「だからこそ、きちんと丁寧に作らないといけない」と言っていました。

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©TBS

最終回に向けて、とくに観てほしいポイントとは?

━━今回、脚本を4人の方が担当しています。その意図は?

飯田:よく福澤監督が話しているんですが、福澤監督は脚本の大切さを強く意識されていて、「ストーリーを作るということがドラマ作りの7割、8割を占める」と言っている。複数人でアイデアを出し合っていくことで、アイデアの枯渇を避ける狙いもありますし、一人で考えるよりも打開策が見つかりやすい。また今回は若い脚本家も多いので、「若い人たちにちゃんと伝えていくこと、育てていくことがこれからのドラマ作りにおいて大事なんだ」とおっしゃっていました。

━━今回の『VIVANT』の人気で、「ドラマのTBS」の底力を見たと言っている人たちもいます。そんなTBSのドラマ作りを若い世代にも継承しているのでしょうか。

飯田:そう感じていただいているのは、本当に嬉しいです。TBSはADがチーフ、セカンド、サード、フォースとあって、フォースADからだんだんと現場でドラマ作りを学び、ディレクター、ブロデューサーになっていく、そうやって現場を学びながら、ドラマの作り方を学んでいくシステムが昔から今も続いているんです。他局ではもうADという立場もなく、局に入ると、すぐに企画を作る人という位置づけになるところもあると聞きます。きちんと段階を踏んでドラマを学ぶ姿勢を、TBSのドラマ作りにつなげていきたいという思いが、福澤監督にはあるんだと思います。監督が「台本があっても、それが面白いか面白くないかをわかるのが一番難しい」と言ってました。そして「謙遜だと思いますが、俺も面白いかどうかがわかるようになったのは40歳ぐらいだ」と。今回、2人の若手監督が1本ずつ撮っていますが、福澤監督は今回、若手に継承していくということを強く意識されて取り組まれていたと思います。

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©TBS

━━U-NEXT、Tverという動画配信を通じて、作品が流れることで大きなムーブメントを作り上げたと思いますが、地上波だけではない配信とのタッグの経験を通して今感じられていることを教えてください。

飯田:やっぱり、配信で流れるということで何回も観ることができるというメリットは大きいですね。堺さんも言っていましたけど、「(地上波&配信でも流れることで)いろんな楽しみ方をしてもらえる。まずリアルタイムで見るというのは、本当に同じ時間に共有できるという、テレビだけが持つ一番のメリット。でも、配信があれば後から追っかけても観れるし、気になるところを見直すこともできる。何度も楽しめるというのが、本当に面白いものだと思うので、地上波でも配信でも視聴できることで、何度も見られることに耐えられるよう、一生懸命に頑張らないといけないと思いますね。これから、毎回毎回、視聴者の方が何回も観たくなるような作品を作ることが目標になりましたね。

━━最後に、最終回に向けてとくにここを見て欲しい、楽しんで欲しいというところを教えてください。

飯田:テレビドラマなので、考察などで盛り上がってること自体、嬉しいんですが、ここに出てくる登場人物たちが何を考え、何を思って何に向かって動いているのか。最終回はすごく繊細に描かれているので、そこは考察とはまた違う部分を見ていただきたいですね。演じている俳優さんたちもすごく繊細なお芝居で表現していて。スタッフも丁寧にお客さんにしっかりと伝えるために仕事をしていますので、そこを見ていただけると嬉しいです。とにかく、あの世界にどっぷりと飛び込んで感じてもらいたい。それから、また繰り返して見ていただけたらなお嬉しい。見守るつもりで、登場人物たちが考えていること、感じていることを感じてもらえる納得できる79分になっていると思います。

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©TBS

大注目の最終回は、9月17日(日)よる9時より25分拡大で放送されます。感動のフィナーレを、ぜひ放送でご覧ください!

日曜劇場『VIVANT』TBS系にて9月17日(日)よる9:00〜10:19放送(※25分拡大)

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©TBS

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