謎に満ちたストーリーゆえに、さまざまな考察がSNSを賑わしたドラマ『VIVANT』。
9月17日に放映された最終回の怒涛の展開には大きな反響があり、続編を期待する声も高まっています。オンエアが終わった今だからこそ、数々の伏線がどう回収されたのか、気になるキャラクターたちはどんな動きを見せていたのか確認してみたい!振り返ってみたい!
そんな『VIVANT』ロスに応える見直しポイントを、飯田和孝プロデューサーの証言からピックアップしました。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
クランクインする前に10話までの台本がほぼできていたので、1話でドラムが乃木のカバンに盗聴器をつけるシーンと、5話で乃木が最初から盗聴器の存在に気づいていたと種明かしをするシーンは、一連で撮影しました。
そのため1話で乃木がCIAのサム(マーティン・スター)と話すシーンでは、聞かれてはまずいことは盗聴器から離れた広場で話す、という演出にしています。サムが衛星から見た乃木の顔を「ヘタレ面」と言うシーンは、顔を見せるためではなく、実は盗聴器から離れたことを伝える意味もあったんです。
ザイールのアジトに向かう途中、警官からパトカーの中で「例のものは3万だ」と手渡されたのは“銃”。乃木はパトカーから降りる前、車の中でかがみ込み、銃をくるぶしに仕込んでいました。後に乃木もザイールを撃っていたとわかるのですが、そのシーンは1話で放送したシーンと同時に撮っています。1話では銃を撃つ手元が見えないようなアングルのカットにし、5話では野崎(阿部寛)の視点(小型カメラ)からのアングルで見せています。
乃木の動きや体の向きも非常に繊細な演出になるので、体勢や銃の出し方、それでいてザイールの腕を正確に撃ち抜くために違和感のない動きをしなくてはいけない。堺さんは監督、ガンアクション指導、アクション指導を交えて綿密な打ち合わせをし、工夫を重ねて撮影していました。さらに、ザイールを撃ったあと野崎が入ってくるので、撃った銃をどう処理するかということまで細かくシミュレーションをしていたんです。
乃木は普段、情けない男を演じているわけではありません。別班の乃木は“F”が担っていて、普段の乃木は温厚な性格です。
1話で野崎たちとチンギスから逃げている道中、乃木はいつでも逃げられる状態でした。でも、野崎に素性がバレてしまうからあえて逃げなかったのです。また、野崎と行動を共にすることで、公安が“テント”についてどこまでつかんでいるのかを探る意味もあります。乃木と野崎が一緒にいるシーンは1話から見直してみると、別班・乃木の狙いがよりわかると思います。
チンギス(バルサラハガバ・バタボルド)らバルカ警察に追われる野崎と乃木、薫(二階堂ふみ)が、羊が大量に移動する中を逃げるシーンがありました。実際の撮影では3000頭の羊を集めたのですが、どうやって同じ方向に動かすのか。そして、羊の中でどうやって野崎らが乘った馬を走らせるのか。ものすごく苦労しました。思い通りにいったと思いきや、砂ぼこりが立ちすぎて、野崎たちが見えなくなって(笑)。それから散水車を呼んで水を撒いて…試行錯誤の末にあのシーンが誕生しています。
その他、『VIVANT』では広大な砂漠を移動する中、ラクダに命を救われるシーンもあり、動物がドラマの大切な役割を担っています。いみじくも堺さんがモンゴルを“動物の社会の中に人間が入っていく感じ”と表現していらっしゃいましたが、モンゴルは人間と動物の距離感が違う。劇中、長旅を助けてくれたラクダを乃木と薫が心配すると、ドラムが時間をかけてウランバートルまで戻すという描写があります。
そういう動物への思いはモンゴルでは常識で、それを描いたのは監督のこだわり。昨年夏に、モンゴルに初めてロケハンに行きましたが、そこらじゅうに動物がいて、人間と共生していると感じました。そんな動物との距離感を感じたことで、福澤監督もあのストーリーを思いついたのではないかと思います。ちなみに、乃木がラクダに対してモンゴル語で話しかけるのは、モンゴルの動物だからモンゴル語で…という堺さんのこだわりですね。
緊迫したストーリーの本ドラマにゆとりを与えているのが、野崎の存在です。ウィンクや、それこそ1話のトイレに逃げ込んだ時のちょっとやり過ぎなシーンなど。お茶目でみんな野崎を好きになるし、何より野崎って命の危機に見舞われても無敵なんだろうな、この人は死なないんだろうなと思えるようなキャラクターになっていたと思います。
演じている阿部さんもインタビューで「野崎という役はいろいろな挑戦をしました」とおっしゃられていたのですが、オーバーアクション気味な演技や、つかみどころのない表情、隙がありそうでむしろわざと相手を隙に入り込ませようとしているような、とても不思議な魅力が野崎にはあったと思います。
3話で、野崎と乃木、そして東条(濱田岳)がもんじゃ焼き屋で集うシーンは相当大変で。もんじゃを焼きながらセリフを言うのですが、撮り始めるまでに、段取りを2時間ぐらいかけてやった後で撮っています。何気なく見えるシーンですが、コテをさばくという手作業をしながらセリフを言うのは役者さんの仕事とはいえ難しい。この3人だから、普通にやっているというか。
またもんじゃ焼きは日本の良き文化の一つ。このシーンで、“もんじゃ焼きを食べたくなった”というSNS投稿もたくさん見ました。ちなみに、もんじゃ焼き屋のシーンは6話でも登場。野崎と彼の上司である公安部長の佐野(坂東彌十郎)という渋いオジサン2人でもんじゃをつまみに飲んでいます。
3話でデータセンターに侵入するシーン、大型のコンピュータがいくつも並んでいる部屋はセットで、警備室前はロケ、野崎や東条がいる車はセットです。今回は50以上のセットを作っていますが、いろいろと使いまわしています。例えばデータセンターの壁を公安の会議室の壁にしたり、病院の壁を部屋の壁にしたり。台本が先に揃っていた状態だったので、美術さんが「このセットは次はここにこう活用しましょう」と案を出し、それに則って撮影スケジュールを組んだりしていきました。しかも、使いまわしていることがわからないように、1話で使ったものをラストに回すなど、うまく工夫していると思います。
日曜劇場で、堺さん、阿部さん、役所さんというキャスティングだと、池井戸作品をイメージする方が多いはず。さらに今回は放送前に作品に関する情報も出さなかったので、視聴者のみなさんにはきっと「重厚に始まるんだろう」という印象が強かったと思うんです。それであえて、イメージとは真逆の黒猫のかわいいキャラクターでPRしようと思ったんです。実はこのヴィヴァンちゃん、一瞬ですが5話に登場しています。割と画面の真ん中で、こっちを向いて笑ってます。さあ、どこにいるかもう一度、チェックしてみてください。
“癒しキャラ”として大人気となったドラム。6話ではジャミーン(ナンディテン・エルデネ・ホンゴルズラ)の手術の成功を健気に祈る姿が印象的です。このドラムの声については、最初から女性の声にすることは決まっていたのですが、キャスティングには様々議論がありました。
最終的にオファーしたのは、『エヴァンゲリオン』の綾波レイ、『カウボーイビバップ』のフェイ・ヴァレンタインなどでも知られる林原めぐみさんでした。
海外でも見てもらうことを意識してこの作品を作っていたので、世界的なアニメのメインキャストを担当している人が必要だ、きっと福澤監督も納得してくれるだろう、と思いました。
林原さんはドラムのキャラクターや、『VIVANT』を面白がってくださり、引き受けて下さいました。本当に感謝しています。ドラムの初リハーサルで、誰の声とも言わずに携帯で音声を出した時、スタッフが「この声って…ですよね」と言ったことを、鮮明に覚えています(笑)。
4話で、山本(迫田孝也)に巻かれ、そして乃木にはタヌキの置物を見ている隙に巻かれてしまった公安の新庄(竜星涼)。尾行失敗の連続で、SNS上では新庄ポンコツ説などが上がり、ずいぶんとけなされていました。しかし、最終回で彼こそが、9話のラストで乃木に撃たれて死んだはずの別班の仲間たちが生きていたという証拠映像を送ってきた、“日本のモニター”と判明しました。正体がわかったときの野崎の驚きの表情は印象的です。でも、改めて1話から9話まで見直すと、公安に紛れ込み、野崎の目をごまかしてきた新庄の優秀な“テント”ぶりもわかると思います。4話で山本を尾行していて逃したシーンは、同じくテントのモニターである山本を公安から逃したんです。山本からしてみれば、黒須に捕まってあんなことになってしまうので、新庄に助けてもらいたかったでしょうけど。
『VIVANT』全話はU-NEXTで独占配信中!
ノベライズ版も配信中!
『VIVANT 別版 〜副音声で福澤監督が語るVIVANTの世界〜』について、福澤克雄監督と演出陣が語る撮影秘話や作品に込めた想いなど、ここでしか聞けない貴重なお話を伺いました。
最終話を前に、プロデューサー飯田和孝氏に『VIVANT』のヒットの要因や撮影の舞台裏など伺いました。
“飯田Pが語る『VIVANT』最終回までに、もう一度見直しておくべきシーン”とは?これさえ押さえておけば、『VIVANT』を心ゆくまで楽しめるはず!
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