ドラマを観る時、登場人物に感情移入してしまう方は少なくないだろう。だから、例えば『ミセン-未生-』のように会社員の悲哀を描いた作品は多くの人たちの共感を得て、傑作と語り継がれるのだと思う。ドラマの登場人物たちが、自身と似た境遇であればあるほど没入感を感じられて、夢中になる。女性としての人生を歩んできた筆者は、特段、女性たちの友情や連携を描いた作品に魅了されてしまう。
ということで、今回は「シスターフッド特集」。女性たちの関係性にグッと心を持っていかれた韓国ドラマ5作品を紹介したいと思う。
破局と復縁を繰り返した7年来の恋人と別れ、有名作家のアシスタント業もクビになったドラマ脚本家志望のジンジュ、ドキュメンタリー映画監督として成功を収めるも、最愛の恋人の死から立ち直れていないウンジョン、ドラマ制作会社に勤めながら8歳の息子を育てるシングルマザーのハンジュ。ひとつ屋根の下、互いの悲喜こもごもを共有しつつ平穏な共同生活を送る親友3人組だったが、30歳を迎え、それぞれ人間関係や仕事などに変化が訪れる。
交際経験も社会経験もある程度積んできた30歳独身女性たちのリアルな心情をユーモアたっぷりに描きながら、ドラマ監督、脚本家、制作会社スタッフの苦楽も表現した、メタ要素も携えている傑作。主人公たちがドラマを観ながら、「“愛してる”で終わるのがハッピーエンドなのか?」と議論する場面から始まることからも分かるように、この作品は恋愛がメインテーマ。愛に懲り懲りでも結局は愛を信じる人々を温かな眼差しで切り取っており、エンドロールで紹介される劇中の台詞が胸に響く。
また、相手の心情に寄り添いつつ、必要以上に相手の懐へ踏み込まない距離感を保つ、理想的な友情も描いている。何気ない日常の疑問を延々と語らったり、突発的な夜食や夜遊びを楽しんだり、阿吽の呼吸な3人が微笑ましいと同時に羨ましい。
ジンジュ役はチョン・ウヒ(ドラマ『ヒーローではないけれど』など)、ウンジョン役はチョン・ヨビン(ドラマ『いつかの君に』など)、ハンジュ役はハン・ジウン(ドラマ『星がウワサするから』など)と、今脂が乗っている3人。それぞれの相手役もアン・ジェホン(ドラマ『タッカンジョン』など)、ソン・ソック(『殺人者のパラドックス』など)、コンミョン(映画『市民捜査官ドッキ』など)と豪華な顔ぶれで、その共演も観るのも楽しい。
大学時代からの親友3人組=放送作家のソヒ、ヨガインストラクターのジヨン、折り紙動画クリエイターのジグは、三度のご飯よりお酒が好き。知人から紹介された男性が逃げ出すほどの大酒飲みで、何かにかこつけては行きつけの居酒屋で酒を煽りまくる日々を過ごしていた。しかし、ソヒは記憶力が低下、ジヨンは特大ニキビが誕生、ジグは筋肉縮小で腰痛を発症と、断酒せざるを得ない状況に……。
アメリカのアニメ『パワーパフガールズ』を彷彿とさせる個性豊かな3人組が魅力的で、それに例えると、仕事に情熱を注ぐパワフルなソヒはリーダーのブロッサム、底抜けに明るくポシティブなジヨンは無邪気なバブルス、独自の世界観があり喧嘩の強いジグはタフなバターカップといったところ。性格や好みがバラバラだからこそ、同調するだけでなく、時には手厳しい意見も飛び出すテンポ良き会話劇が見どころとなっている。
ソヒ役はイ・ソンビン(ドラマ『少年時代』など)、ジヨン役はハン・ソナ(ドラマ『遊んでくれる彼女』など)、ジグ役はチョン・ウンジ(ドラマ『Missナイト & Missデイ』など)。俳優の持つ雰囲気とキャラのマッチ度が高い、絶妙なキャスティングである。
また、お酒を飲む前のウキウキ気分、酔っ払いピーク時のくだらないやり取り、酩酊して披露する醜態、翌朝襲いかかってくる後悔の嵐など、酒飲みのトホホな生態をコミカルに描いており、人によっては非常に共感できる作品に仕上がっている。
なお、シーズン2では、とある理由から3人で山ごもりし、本格的な禁酒生活を送ることに。あまりに密接な時間を過ごしたことで、それぞれ次のライフステージへ踏み出そうとした際、関係にヒビが入る展開が生々しい。でも、「友と酒を酌み交わせない人生なら、どこに生きる意味があるのか」(byソヒ)。酒飲みな女たちの友情の尊さがホロリと沁みる。
1992年、田舎町クムジェ。甲斐性なしな夫のせいで生活苦に喘ぐジョンスクは、新聞で見かけた訪問販売職の説明会に参加する。取り扱う商品がセクシーなランジェリーや性生活を潤すアイテムだと知って戸惑うが、生きていくために覚悟を決めたのだった。そして、子どもが同じ学校に通っていることで知り合ったヨンボク、ジョンスクが家政婦として勤めていた薬屋の奥様クムヒ、美容院を営むシングルマザーのジュリとチームを組み、新進気鋭のビジネスを展開していくことに。
アダルトグッズの訪問販売の仕事を通して、女性が様々な面で解放されていく様子を描いたお仕事ドラマ。男尊女卑が根強く残り、性がタブー視される時代のため、主人公たちは「破廉恥」「道徳心のカケラもない」と町の人々に煙たがられ、陰湿な嫌がらせにも遭う。だが、その度に突破口を切り開いて邁進し続ける姿が眩しく、勇気づけられる。
また、公私共に問題を抱える彼女たち。それぞれの家庭問題など公に抗議できない場合もあるが、「解決はできないけれど一緒に悪口は言える」と支え合うようになり、かけがえのない友情を築いていくところにも胸を熱くさせられる。
控えめな性格のジョンスクを演じているのは、ドラマ『ペントハウス』のヒステリックな悪人ソジン役で有名なキム・ソヨン。ソジンとは180度異なる幸薄な主婦が自信をつけてあらゆる殻を打ち破っていく様を生き生きと演じている。ヨンボク役は、登場するだけで作品への安心感&期待感をもたらす名バイプレイヤー、ドラマ『イルタ・スキャンダル〜恋は特訓コースで〜』などのキム・ソニョン(そしてその感覚は正解だった!)。実は先進的な考えの持ち主である名家出身の奥様クムヒはキム・ソンリョン(ドラマ『こうなった以上、青瓦台に行く』など)が、美容院を営む爆イケ未婚母ジュリはイ・セヒ(ドラマ『紳士とお嬢さん』など)が演じている。
短大出身のため職場で軽視されている経理事務の長女インジュ、アルコール中毒を患っている報道記者の次女インギョン、奨学金で全国一の芸術学校に通っている三女イナの3姉妹は、自己中心的な両親のせいで貧困に苦しみ続けてきた。そんな中、インジュの慕っていた先輩ファヨンが、会社の裏金を横領して自死。インジュはその裏金や帳簿探しを命じられる。一方インギョンは報道記者としての勘が働き、市長選出馬の噂のあるエリート弁護士について調査を始める。奇しくもその弁護士は、イナと親しい同級生の父親だったー。
映画『お嬢さん』や『別れの決心』などの脚本家チョン・ソギョンが手がけた、細やかな伏線が謎解き心を刺激するミステリードラマ。
上質なハイヒールに青い花といった品性を感じられる美術に、計算し尽くされたカメラワーク、そして3姉妹=インジュ役キム・ゴウン(映画『破墓/パミョ』など)、インギョン役ナム・ジヒョン(ドラマ『グッド・パートナー~離婚のお悩み解決します』など)、イネ役パク・ジフ(ドラマ『今、私たちの学校は…』など)3者3様の魅力が詰まっており、どこを切り取っても惚れ惚れする極上の映像作品だ。3姉妹それぞれが得意分野を活かして事件を共に解明していく構成がお見事。
姉妹愛も描かれ、後半に明かされる末っ子イナの本音はハイライトでもあるが、シスターフッドの括りで言うと、インジュとその先輩ファヨン(演:ドラマ『ナルコの神』などのチュ・ジャヒョン)の関係にも注目したい。常に妹たちの面倒を見てきた長女インジュが、唯一その役割から解放され甘えられる相手がファヨンである。ファヨンは同じ貧困家庭出身のインジュにシンパシーを感じ、仕事だけでなく人生で必要となるような知識や振る舞いなども手ほどき。ファヨン亡き後、それらが役立つ場面になるたび、またファヨンの死を解明するため食い下がるインジュの姿が描かれるたび、2人の強い結びつきに心打たれる。
1956年の木浦。ジョンニョンは、好きな歌で客を呼び込みながら海鮮物を売り捌く、平凡な生活を送っていた。だがある日、「梅蘭国劇団」で一番人気の男役オッキョンが彼女の才能に惚れ込んだことで世界が一変。オッキョンの誘いで劇団公演を鑑賞したジョンニョンは、煌びやかな世界にすっかり魅了されてしまう。芸能界入りを反対する母のいる家を飛び出し、劇団研修生補欠となったジョンニョン。しかし、荒削りだが特異な才能を持っていることや、オッキョンの後ろ盾があることから、他の団員からやっかみを受けてしまう。さらに、幼少期から英才教育を受けてきたエリート研究生ヨンソがライバルとして立ちはだかる。
ジョンニョン役キム・テリのスター性が存分に発揮されているのが本作。テリと言えば、ドラマ『二十五、二十一』でフェンシング界の神童を演じ、ボナ(宇宙少女)演じる努力家の国家代表選手と熱い戦いを繰り広げていたことが思い浮かぶ。そう、専門的な道における天真爛漫な天才役があまりにも似合うのである。
今回のライバル=ヨンソ役を演じたのは、ドラマ『コッソンビ熱愛史』や『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』など、善人・悪人どちらの顔も巧みに演じ分けるシン・イェウンで、テリとイェウンの演技合戦がこの作品の物語と重なり合っているかのようだ。ジョンニョンとヨンソはそれぞれ才能あれど、人としても役者としても半人前で、様々な失敗や挫折を経験する。そんな時、自分でもうっすら理解している落ち度などをズバリ指摘してくれるのが互いの存在だ。初めは激しく言い争っていた2人だが、次第に最高の好敵手だと認め合い切磋琢磨していく姿は、高め合える相手がいることの素晴らしさを教えてくれる。
彼女たちを筆頭に、俳優ひとりひとりのエネルギーを感じられるのが、圧巻の舞台シーンだ。作品内舞台という枠組みを超え、ひとつひとつの舞台をフルで観たいと思わせられるほど完成度が高く、極上の時間が流れている。また、オッキョン役チョン・ウンチェ(ドラマ『アンナ』など)のカリスマ王子っぷり、ヘラン役キム・ユネ(ドラマ『流れ星』など)のワガママ姫も印象的で、この2人や、ジョンニョンと友人ジュランの間にほのかに香る、美しく切ない関係性も見どころ。
さまざまな作品で活躍する韓国俳優たちが、それぞれに個性あふれる素顔を見せるその姿は必見です!
血気盛んな男子高校生たちの勢力争いを描いた青春アクションコメディドラマ。見るからに虚弱体質なビョンテが喧嘩番長のフリをし続けるのには無理があり、「流石にもうバレる!」とハラハラするところでミラクルな出来事が発生する、そのめくるめく展開が爆笑モノの作品となっている。