『桐沢たえの トクサツの話がしたい』第4回・第1話が神回の話 ~仮面ライダー編~
note「ニチアサの話がしたい。」の桐沢たえさんによる愛情たっぷりの特撮コラム。第4回では『仮面ライダーゼロワン』を紹介します。
※この連載は私、桐沢たえがスーパー戦隊や仮面ライダーやウルトラマンなど特撮ヒーロー作品について「話したい」ことを好き勝手に話す偏愛なコラムです。
第1回~第3回は、スーパー戦隊シリーズでの「個人的に1話が神回だと思う戦隊」について話していきます!(連載を始めるまでの経緯はコチラ)
記念すべき連載第1回目ということで、何について語ろうか色々考えたのだが、「第1回」つながりということで今回は「個人的・第1話が神回の話~スーパー戦隊編~」をお送りしようと思う。最近はアニメや連ドラでも「とにかく1話まずは観てほしい!」と初回をめちゃくちゃ気合いを入れて作るし、それはご他聞に漏れずスーパー戦隊もそうだと思うが、ここでは私個人が色んな意味で「なんだこれ!?」と衝撃を受けた3作品をご紹介したい。
今月は……
人生で何回観たか分からない『五星戦隊ダイレンジャー』第1話「転身だァァッ」。もうサブタイの声のデカさぶりからして「なにごと??」という感じなのだが、中身もかなり「なにごと??」だ。
まず番組が始まって最初に出てくるのはカッコいいヒーロー!……ではなく、瓶底メガネを掛けた学ランの少年。その少年が横浜の赤レンガ倉庫の前でヨーヨーをしながら長渕剛の「巡恋歌」を口ずさんでいるというシーンから『五星戦隊ダイレンジャー』は始まるのである。ウソじゃない。ホントである。のちにダイレンジャーのレッド、リュウレンジャーとなる亮は中華料理屋でコックの見習いをしながら平凡に暮らしていたが、ある日顔見知りの小学生・由美が謎の怪物に襲われるのを目撃。助けようと必死で追いかける亮だが、由美はランドセルと運動靴を残して巣穴に吸い込まれ、亮自身も怪物に追い回されるはめに。間一髪のところで突如現れた巨大な龍に助けられ(というか連れ去られ?)目を覚ますとそこはなんと東京駅地下に存在する秘密基地。そこで亮は謎の男に唐突に「気力の戦士」に任命され……という、何というか全体的に「体調が悪い時に見る、ものすごい疲れる悪夢」っぽいテイストの展開がノンストップで続いていく。また、5人目のダイレンジャーであるリンは中国からの留学生という設定だが、来日して即、敵組織であるゴーマの戦闘員コットポトロが乗るチャリンコ集団に追い回されるというアンラッキーさがすごい。「你好!はるばる中国からようこそ!」「你好!あなたたち、道士・嘉挧の!」「そのとおり!」「命令でお迎えにあがりました」「歓迎するぜ!」「歓迎します!」「私リン!素敵な歓迎、謝謝!」リンのピンチに駆けつけた亮たちとの、猛ダッシュをしながらめっちゃ早口で挨拶し合う出会いのシーンは特に印象的だ。わずか8秒足らずであっという間に世界を救う戦士が集結してしまう、この激烈なスピード感がたまらない。
1-2話のメガホンを取ったのが、「宇宙刑事」シリーズなどでも摩訶不思議な映像で特撮ファンを魅了した巨匠・小林義明監督ということもあり、初回は特にシュールな雰囲気が漂っているのだが、この唯一無二な世界観を更に盛り上げるのが、デザイナーの篠原保さんによる怪人や悪の幹部たちのデザインだ。先述したチャリンコでリンを追いかけてきたコットポトロは、唇だけの白塗りの仮面にタキシード風の衣裳という一見して戦闘員らしからぬ出で立ちだし、由美を攫った怪物・紐男爵も(怪人なのに男爵という妙に高貴な名前なのがまた良い)一度見たら忘れられない奇怪な姿で、不気味さとユーモラスさを兼ね備えた造型が本当に魅力的だ。ちなみに先述したヨーヨーをする瓶底メガネの少年が「巡恋歌」を歌っているのは、彼の正体が「ヒモ」男爵であることの伏線らしい。(そんなん子どもに分かるか!)また、後に登場する3人の敵幹部、シャダム中佐、ガラ中佐、ザイドス少佐はまさかの全身ボンテージファッションというエキセントリックさで、幼い頃『ダイレンジャー』を観ていたという友人は、この3幹部が最も記憶に残っていると話していた。(これは『ダイレン』履修者の皆さまにしか分からない話であるが、それは「後の散り際の壮絶さも含めて」だそうだ……)こうして悪サイドの雰囲気がアングラでサイケであればあるほど、古代中国の霊獣をモチーフにしたダイレンジャーの正統なヒロイックさが際立つという寸法なのかもしれないが、もはや対比が激しすぎてメリハリを超えてハレーションを起こし気味なのも、何かと気合が入りすぎな『ダイレンジャー』らしい。
しかし、ただキテレツなだけが『ダイレンジャー』の魅力ではない。私が本作の第1話を「神回」に選ばせてもらったのは他でもなく、『ダイレンジャー』はアクションがめちゃくちゃにカッコいいからである!!紐男爵に追い詰められた亮たちは、変身ブレス オーラチェンジャーで気力の戦士、ダイレンジャーに転身する。幕張メッセ中央エントランスの大階段に横イチで並び、「リュウレンジャー!”天火星" 亮!」「シシレンジャー、"天幻星" 大五!」「テンマレンジャー、"天重星" 将児!」「キリンレンジャー、"天時星" 知!」「ホウオウレンジャー、"天風星" リン!」と、変身者の名前と変身後のヒーロー名の両方を入れた珍しい名乗り上げを中国拳法を取り入れたキレッキレの動きと共に行うシーンは、例えこれを読んでいるあなたが戦隊ファンでなくても一度は観て頂きたい見事さだ。最後には「天に輝く五つ星!」と大きく広げた手の平を空に翳し、マスクに当たってしまうのではと思うほど高く右足を振り上げた後、「五星戦隊、ダイレンジャー!」でキメる。シリーズ屈指の難易度と呼び名も高いこの名乗りだが、カッコ良さで言ってもスーパー戦隊史随一と言って過言ではなかろう。スーツアクトを担当するリュウレンジャー役大藤直樹さん、シシレンジャー役喜多川務(現:喜多川 2tom)さん、テンマレンジャー役蜂須賀昭二さん、キリンレンジャー役石垣広文さん、ホウオウレンジャー役村上利恵さんの抜群のスタイルと驚異の身体能力によって生み出される美麗なポージングはもういつ何度観ても「カッッッッッコよすぎか!!!」と目と耳から同時に鼻血が吹き出しそうになる。引き始めの風邪くらいだったらダイレンジャーの名乗りを5回くらい観れば治るんじゃないかと本気で思う。
紐男爵とのバトルは気力だけでなく棍術、剣術なども駆使して戦うダイレンジャー優勢で進み、追い詰められた紐男爵は巨大化。対抗するためダイレンジャーたちは気伝獣・龍星王を召喚するのだが、それにリュウレンジャーが乗り込み、さぁ今から巨大戦だ!というところで急に「5人の戦士ダイレンジャーは勝つことができるか!?」とナレーションが入り、なんとそこで第1話は終わってしまう。思わず「え!?」と声が出てしまいそうになるが、この次回を観ずにはいられない衝撃の構成も『ダイレン』1話の魅力のひとつだろう。
仕事でイヤなことがあった時、モヤモヤを抱えたまま帰宅してしまった時、是非『ダイレンジャー』の1話を観てほしい。奇想天外な展開とバッキバキにカッコいいアクションの応酬に、観終わった頃にはきっと明日を生きる “気力” が、あなたの中にみなぎっているはずだ。
次回は『侍戦隊シンケンジャー』をご紹介します。ぜひご期待ください。
※スーツアクター情報は本人調べ
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