桐沢たえの「トクサツの話がしたい」第3回 第1話が神回の話 『超力戦隊オーレンジャー』編
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桐沢たえの「トクサツの話がしたい」第3回 第1話が神回の話 『超力戦隊オーレンジャー』編

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※この連載は私、桐沢たえがスーパー戦隊や仮面ライダーやウルトラマンなど特撮ヒーロー作品について「話したい」ことを好き勝手に話す偏愛なコラムです。

第1回~第3回は、スーパー戦隊シリーズでの「個人的に1話が神回だと思う戦隊」について話していきます!(連載を始めるまでの経緯はコチラ

今月は…

『超力戦隊オーレンジャー』第1話「襲来!! 1999」

君はピンチになったことがあるだろうか?仕事でミスをしたり、忘れ物をしたり、思わぬ怪我をしたり……人生にはいろいろなピンチがあると思うが、そんな人の一生分のピンチを集めても足りないのが『超力戦隊オーレンジャー』第1話だ。

超力戦隊オーレンジャー
©東映

時は西暦1999年、月面から突如襲来したマシン帝国バラノイアにより、地球は人工の半数の奴隷化と資源の没収を言い渡され、応じない場合は毎日正午に主要都市を攻撃するという宣戦布告を受ける。既にパリとニューヨークは壊滅させられ、ついに東京にもバラノイアの機界生命体によるの破壊手が伸びて……と、もうしょっぱなから大ピンチだ。これに対抗すべく、国際空軍(U.A)の各部隊の精鋭たちによって防衛部隊U.A.O.H. 通称「オーレンジャー」が結成。バラノイアに立ち向かっていくのだが、このバラノイア軍の強さがマジでハンパない。人類サイドが持つ戦力は全く通じず、オーレンジャーの昌平、裕司、樹里、桃の乗ってきた戦闘機サンダーウイングは早々に撃墜され、そこからかなり長い尺を使って、オーレンジャー4人が大自然の中、必死でバラノイア軍から逃げ惑う様子が描かれる。かなり長い尺というか、もう第1話の9割はこれだ。岩山を転がり、雨に打たれ、泥に塗れ、川に流され、滝壺に落ちと、「外ロケ過酷ビンゴ」の穴が一発で全部空くくらい、とにかくとんでもない災難に見舞われまくる4人。第1話から文字通り体当たりの芝居をしている隊員役の正岡邦夫さん、合田雅吏さん、麻生あゆみさん、さとう珠緒さんのご苦労が忍ばれる。また、特に危険なシーンは4人の変身後を担当するスーツアクターの皆さんが吹き替えを担当しているが、彼らも真冬の滝壺で溺れかけ、九死に一生を得る体験をしたというのを何度か耳にしたことがある。まさに変身前も変身後の俳優さんも、どちらも本気の命懸けの撮影だ。

超力戦隊オーレンジャー_01
『超力戦隊オーレンジャー』 ©東映

逃げても逃げても追ってくる、疲れ知らずのマシンの兵隊に懸命に応戦するも歯が立たず、巨大マシン獣バラドリルにも追い詰められ、よもや万事休すか……!というその時に、バイクに乗って颯爽と現れるのが、オーレンジャーのリーダー、オーレッドに変身する星野吾郎その人なのだが、この隊長が出てきてから番組が終了するまでの約5分間に流れる、これまでのピンチを全て挽回する「オーレッド無双」とも呼ぶべき映像がとにかくスゴすぎる。

両腕に巻いた二つのブレスを十字に重ね、「超力変身!」と叫び、真っ赤なマスクに星形のゴーグルが特徴的なオーレッドへと変身する隊長。これまで人の手では一体倒すのもやっとというバーロ兵を素手でブン殴り蹴り上げ、次から次へと倒していく。本来主題歌として使われる予定だった楽曲『虹色クリスタルスカイ』のインストゥルメンタルバージョンがここで力強く流れるのもイイ。敵軍のバーロ兵たちが短槍を使えば、オーレッドも細長い棍棒状の武器「バトルスティック」で応戦。その攻撃でバーロ兵5体が一度に炎上。ならばとビームを放ってきた兵士には「キングブラスター」の銃撃を撃ち込み木っ端微塵にする。バラドリルに背後の山を壊され、崩れてきた岩々に生き埋めにされても「とうァァアアア~~~~ッ!!」と叫んで立ち上がり、最後はオーレッドの専用武器、スターライザーを顔面の星型のバイサーに手を翳して取り出して空高く飛び上がって回転すると、頭から地上のバラトリルに突っ込むオーレッド。そのままバラドリルの脳天にスターライザーがぶっ刺さり、大爆発。燃え盛る炎と煙の中から、無傷のオーレッドがスローモーションでこちらにゆっくり歩いてくる。オーレッド、強すぎる。強すぎてもはや爆笑だ。第1話で「レッドがたくさん活躍する」というのはスーパー戦隊の始まり方としてはもちろん王道なのだが、ここまで完膚無きまでに敵をギッタギタにして終わるのは『オーレンジャー』を置いて他にはなかろう。オーレッドのスーツアクター、横山一敏さんは同じく東映特撮のメタルヒーローシリーズで長らく主役キャラクターを多く演じていた方で、レッド役にご登板されたのはこの『オーレンジャー』が初なのだが、手足が長く高身長、そして360度どこから見ても頼り甲斐しかないマッシヴな体型が、オーレッドの「無双」ぶりに更に説得力を持たせてくれる。横さん、カッコよすぎる。(なお、先述したバラドリルの頭上に突っ込むシーンのオーレッドは竹内康博さんが演じている。参考文献:『スーツアクターの矜持』鈴木美潮 集英社インターナショナル 2023年)

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『超力戦隊オーレンジャー』 ©東映

初っ端からここまで敵が強く、人類に勝ち目はあるのか!?というハードな展開で始まる『オーレンジャー』だが、中盤はオーレンジャーロボがエアロビをしたり、水着回でなぜかサバゲー的展開なったりと、スーパー戦隊らしいトンチキもちゃんとあるのでそこも安心してほしい。その一方、マシンの身体で生まれ、愛を知らないはずのバラノイア側に奇せずして人間らしい感情が宿り始める終盤などはかなり泣かされる。オーレンジャーは「隊長」の星野を中心とした職業軍人のチームだがファミリー感も強く、メンバー一人一人もとても魅力的で見終わる頃にはオーレンジャー全員が大好きになっていること請け合いだ。ターコイズブルーを基調とした隊服もオシャレで、個人的にはシリーズの中でも一番好きな隊服だ。いまだに観ると欲しくなってしまう。

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『超力戦隊オーレンジャー』 ©東映
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『超力戦隊オーレンジャー』 ©東映

もちろん、私たち一般人の現実の暮らしのピンチにオーレッドは現れない。(っていうか現れたらちょっと困る)けれど、4人が遭遇するとんでもないピンチぶりを観ていると、自分に降りかかっている危機的状況なんて彼らに比べたら全然大したことないと思えてくるし、その後に自分たちを苦しめてきた奴らを物凄い勢いで一掃してくれるオーレッドを観ていると、「俺たちも戦うぞ!」とボロボロのまま生身で戦いに加わった4人のように、「自分ももうちょっとだけ頑張ろう」と元気になれるから不思議だ。先述した挿入歌『虹色クリスタルスカイ』に「闇を貫く 勇気掲げたら 怖いものはなにもないさ」という歌詞があるが、「今、まさにピンチです」という方は、是非『オーレンジャー』の1話を観て、怖いものしらずの気持ちを取り戻そう。超力変身!オーレ!!

※スーツアクター情報は本人調べ

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