『桐沢たえのトクサツの話がしたい』 第5回・第1話が神回の話 ~仮面ライダー編~
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『桐沢たえのトクサツの話がしたい』 第5回・第1話が神回の話 ~仮面ライダー編~

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※この連載は私、桐沢たえがスーパー戦隊や仮面ライダーやウルトラマンなど特撮ヒーロー作品について「話したい」ことを好き勝手に話す偏愛なコラムです。

第4回~第6回は、仮面ライダーシリーズでの「個人的に1話が神回だと思うライダー」について話していきます!(連載を始めるまでの経緯はコチラ

今月は……

『仮面ライダーストロンガー』第1話「おれは電気人間ストロンガー!!」

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©石森プロ・東映

 「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!」

今でこそ「熱血ヒーローの口上」の定番として数多のTV番組でパロディ的に使われることが多いこの台詞だが、その元ネタが実は『仮面ライダーストロンガー』であるということは案外知られていないのではなかろうか。

スーパー戦隊とは違い、仮面ライダーはあまり名乗り口上を本編中でしないイメージもあるのか、「え!?仮面ライダーがこんな長い決め台詞を言うの!?」と思う読者もいるかもしれないが、言うのである。しかも何なら前述した台詞はまだ前半で、ここからさらに「聞け悪人ども!俺は正義の戦士!仮面ライダーストロンガー!!」と続いてストロンガーの名乗りは完成だ(「聞け悪人ども!」はあったりなかったりする)。

シリーズの中でも珍しい、こんなにも長尺の口上をなぜストロンガーは敵に向かって宣するのか?と訊かれたら、それはもう「仮面ライダーストロンガー 城茂はそういう“いなせ”な男だから」としか言いようがないのだが、この城茂の心意気こそ『ストロンガー』の最たる魅力と言って過言ではないだろう。

対ライダー用に開発された毒ガス攻撃がなぜか彼に全く効かず、その理由を敵に問われるも「そんなこと俺が知るか!」と敵も視聴者もビックリの返答を放つ、バラエティ番組などでもよく取り上げられる有名な第9話のシーンでもよく分かるとおり、城茂はとにかく豪胆で痛快、それでいてワイルドでセクシー、でもその心根は優しく正義感の強い熱血漢。昭和、平成、令和を通じて見ても城茂に似た性格の主人公は1人もいない唯一無二の個性にズキュンと「惚れた」ファンは男女問わず大勢いるはずだ。

かくいう筆者もその1人で、2025年最初の連載のテーマを『ストロンガー』の1話に選んだのは他でもなく、今年めでたく放送から50周年を迎えるこの『仮面ライダーストロンガー』という作品が激面白いことを少しでも世に喧伝したいという気持ちがエレクトロファイヤーしているためである。

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©石森プロ・東映

そんな『ストロンガー』は第1話から超展開だ。

まず本編に入る前、OP主題歌のラストに入る「仮面ライダーストロンガー、城茂は自ら進んで改造手術を受けて電気人間となり、日本の平和と正義を守るため、世界征服を狙う悪の組織ブラックサタンを倒すべく敢然と立ち上がった!」というナレーションからして衝撃だ。

いや、『仮面ライダーV3』だって主人公の風見志郎は仮面ライダー1号と2号に改造を志願したし、奇しくも現在放送中の『仮面ライダーガヴ』に登場する辛木田絆斗も研究者である酸賀の提案を最終的には受け入れて仮面ライダーになる手術を受けたし、自ら進んで改造手術を受けること自体は珍しくないのだが、驚きなのはこの「城茂が自ら進んで改造手術を受けることになるまでのいきさつ」を第1話で全く説明しないことだ。

また、ストロンガーの相棒であり、電波人間タックルに変身する岬ユリ子も初回から登場するが、彼女のこともここでは詳しく語られない。今となってはライダーと共に戦う女性戦士もたくさんいるが、昭和ライダー作品にもタックルという魅力的な女性戦士がいるんです!というのは筆者としても是非声を大にして言いたいところだが、そんな彼女の詳細も含め「どうしてこの男は仮面ライダーになれるのか?タックルとはどんな関係なのか?」など、視聴者の頭の上に浮かんでいる無数の「?」を吹っ飛ばすような勢いで、卑劣なブラックサタンの悪事をくじくストロンガーとタックルの大活劇がひたすら描かれるのが『ストロンガー』の第1話なのだ。

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©石森プロ・東映

1、2話は愛知県渥美半島の伊良湖ビューホテル(現在の伊良湖オーシャンリゾート)とタイアップしており、放送当時蒲郡~鳥羽間を運航していたホバークラフトがブラックサタンよってシージャックされる大掛かりなシーンから始まり、のちに宿敵となるブラックサタンの幹部タイタンと茂がシックなホテルロビーですれ違うハードボイルドな邂逅シーン、ホテルの花を毒の植物とすり替えようとする怪しい花屋の男をユリ子が追うパートはサスペンス風に展開されるなど、その映像の質感の多彩さや完成度の高さはもはや劇場版並みだ。

ヒーロードラマとしては、ブラックサタンの奇械人・ガンガルと戦闘員を追ってやってきた海岸で、茂が初めて仮面ライダーストロンガーとしての姿を見せる、その初登場の仕方がとにかくカッコいい。「あの若造め、また出たのか!」幾度も自分たちの計画を邪魔する茂を忌々しがるブラックサタン一味の足元に、茂愛用の薔薇の刺繍のジャケットがバサリと落ちる。と同時に周囲に響き渡る流暢な口笛の音。「あの口笛は……!出てこい!城茂!」ガンガルがそう叫ぶと、カメラは辺りを取り囲むようにして切り立つ断崖絶壁をなめ、その先端でポーズを決める仮面ライダーストロンガーの姿を捉える。

昭和ライダーといえばやたら高い場所から登場することでお馴染みだが、この時のストロンガーも今これを読んでいる読者の想像のおそらく2倍くらいは高い場所にいるので是非映像で確認してビックリしてほしい。

そこで言い放つのが、最初に紹介したあの口上だ。「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!俺は正義の戦士!」と、言うやいなや崖からジャンプすると戦闘員たちを次々と薙ぎ倒し、「俺の名は、仮面ライダーストロンガー‼︎」と決める。額から伸びるカブトムシの角にパキッとした黄緑色の大きな複眼。そしてフットボーラーのごとき真っ赤なプロテクターという、どこかアメコミキャラクターを思わせるカラフルでキャッチーな見た目とは裏腹に、ストロンガーのスーツアクターを務める中屋敷哲也さんの抜群のスタイルの良さと驚異的な身体能力から繰り出される迫力満点のアクションにはリアリティーがあり、思わず観ているこちらの拳にも力が入る。

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©石森プロ・東映

この時代、まだ今のようなCGエフェクトや合成技術はないけれど、それでもストロンガーがべらぼうに強いことがはっきりと伝わってくるのは、シンとカラミが一体となってライダーから溢れ出す華々しさを作り上げた大野剣友会の皆さんの努力と熱意の賜物と言えるのではないだろうか。地上戦ではストロンガーに手も足も出ないと分かると、タイタンは無線でブラックオートバイ部隊の出動を要請。黒いバイクに乗った新たな戦闘員らがストロンガーの元へやってくるが、それならばとストロンガーも愛機カブトローに乗り込み、華麗なハンドル捌きで彼らを一掃。転倒スタントや爆破などのド派手な演出も見もので、道路交通法等の法改正等で昨今はなかなか観る機会も減ってしまったバイクアクションを堪能することができるのも昭和ライダー作品の醍醐味と言えるだろう。

さらにこの後、敵に攫われたユリ子(なんと演者の岡田京子さんご本人がドーム状の鉄骨の上から宙吊りにされるという体当たりな撮影に挑戦しているのが凄い)を救うため、茂はもう一度ストロンガーになるのだが、その際に敵の前で黒手袋を脱ぎ、両手のコイルスプリングを交差させて「変身!ストロンガー!」と叫ぶ変身シーンが初披露となる。ちなみにこの時にも 「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶ!」の口上があり、1話の内で何回言うんじゃ!とツッコまれてしまうかもしれないが、カッコいい口上は何回聴いてもいいものだ。

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©石森プロ・東映

戦いの末、見事ガンガルの野望を打ち破った茂とユリ子は「茂~!待ってよぉ!」「勝手についてこい!」と兄妹のように軽口を交わし合いながら海岸沿いをバイクを軽やかに走らせる。そこに流れる「突然、悪の巣に挑戦し、その陰謀を砕いた仮面ライダーストロンガーと電波人間タックル。一体この2人は何の目的で、またどうやって出現したのであろうか、その秘密は何であろうか?」というナレーションのとおり、1話で語られなかった謎たちはその後の物語できちんと明かされていくので、ここまで観た方は是非第2話「ストロンガーとタックルの秘密!」も続けて観てほしい。期待値の高い初回に冗長になりがちな人物や状況の説明を一切せず、とにかく「ストロンガーは強い!カッコい‼︎」ということを全面に押し出した1話は、西部劇をイメージしたという明快でエネルギッシュな作風の『ストロンガー』ならではと言えるのではないだろうか。

『仮面ライダーストロンガー』は全39話とシリーズの中でも比較的コンパクトな話数で、先述したタックルとストロンガーのコンビにも後半衝撃的な展開が待っていたり、敵もタイタンだけでなくジェネラルシャドウやデルザー軍団といった個性豊かな怪人たちが多数登場し、敵サイドの中で確執や裏切りといったドラマがあるのも魅力的で、平成、令和ライダーしか観たことがないという方や「昭和のライダーって単調で退屈そう」と何となく思っている方にこそ「昭和ライダー初め」として是非観てほしいスリリングでドラマチックな一作だ。

今年はスーパー戦隊が50周年ということで大いに盛り上がっているが、「50周年は戦隊だけじゃない!『ストロンガー』もだッ‼︎」と、筆者はこの一年声をデカめにしてお伝えしていきたい所存である。何かと暗いニュースも多い昨今、城茂の持つ大胆不敵な突破力はきっと明日を生きる勇気になってくれるに違いない。理不尽を電キックで蹴飛ばし、ビリビリ痺れる2025年をストロンガーと始めよう!

※スーツアクター情報は本人調べ

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