『まどか26歳、研修医やってます!』自分の人生とも逃げずに向き合う大切さを教えてくれた最終回。芳根京子×鈴木伸之の幸福な結末に続編を望む声も
第10話(最終回)では、まどかが自分の人生も患者の人生も大切にするための選択を下す。菅野との恋の結末も多幸感に溢れ、視聴者からは続編を望む声が多数上がった。
芳根京子さんが主演を務めるTBS火曜ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』が3月18日、ついに最終回を迎えます。
原作は、作家の水谷緑さんが手がけた3冊のコミックエッセイ(『まどか26歳、研修医やってます!』『あたふた研修医やってます。』『離島で研修医やってきました。』KADOKAWA刊)。
芳根さん演じるイマドキ研修医のまどかが働き方改革で変わりゆく令和の医療現場に戸惑いながらも、ベテラン医師たちの試練に立ち向かい、同期の仲間たちと励まし合って、医師として女子として、人生と向き合う濃厚な2年間を描いた成長物語です。
そんな本作を手がけた塩村香里プロデューサーにインタビュー。主演の芳根さんや、まどかが初期研修で最初に配属された消化器外科の指導医・菅野を演じる鈴木伸之さんの印象、2人の気になる今後の恋愛模様などについてお話を伺いました。
ーー物語も終盤に差しかかっていますが、塩村プロデューサーが現場で見ていた芳根さんの印象を教えてください。
塩村香里(以下、塩村):芳根さんはまどかのように、いつも私たちスタッフやキャストの皆さんを明るい気持ちにさせてくれる存在です。周りを気遣いながらも、髙橋ひかるさんや大西流星さんをはじめとした同年代の俳優さんはもちろん、溝端淳平さんや森カンナさんの世代、それよりも少し上の木村多江さん、奥田瑛二さんの世代の方々ともすぐに親しくなれるんですよね。
印象に残ったのは、第1話でまどかが患者さんに心臓マッサージをするシーンの撮影です。芳根さんが本当に全力で演じられていて、そのひたむきさがまどかのキャラクターを作る上でヒントになりました。まどか自身はマイペースで楽観的なところもあるんですが、実は芯が強くて、内には熱いものを秘めているキャラクターとして描いています。まさにそれが垣間見えたシーンであり、芳根さんを見ていて、作ってる側としてもまどかの成長が楽しみだなと思えたので、以降のシーンを作る時も自分の中で原風景的に残ってました。
芳根さんの涙のお芝居も印象的です。涙って、感情によって出方が違うじゃないですか。芳根さんは一つひとつの涙を丁寧に表現されていて、ちゃんとその時の気持ちに応じた涙を出してくださるので、観ている側にも迫ってくるものがあります。ある方が芳根さんのことを「七色の涙を持っている役者さんだね」とおっしゃっていたのですが、まさにその通りだなと思いました。
ーー本作では鈴木さん演じる菅野が、まどかの仕事とプライベートの両面で大きな影響を与えていきますが、キャラクターを描く上で大切にしたことや、キャスティングの決め手は何ですか?
塩村:個人的に鈴木さんにはストイックで硬派なイメージを持っていて、当初から考えていた菅野先生のキャラクターにぴったりだなと思ったのがキャスティングの決め手です。でも鈴木さんが演じてくださったことにより、菅野から自然体な柔らかさや少し抜けた感じが出てきて、すごく親近感が湧いたんですよね。
なので、もしこれがラブコメだったら、もっとツンデレに振り切ったキャラクターになったかもしれませんが、今回はそこまでメリハリをつけなくてもいいのかなって思ったんです。例えば、一見厳しいけど、患者さんには優しい顔を見せたり、溝端さん演じる同期の本郷の前ではちょっと子供っぽいところもあったり…。そういう風に鈴木さんに菅野を演じていただいてから、どんどんイメージが膨らんでいった結果、当初より温かみのあるキャラクターになったように思います。
ーーまどかが同期の中でも特に仲が良い千冬を演じる高橋ひかるさん(※高の正式表記ははしご高)、五十嵐を演じる大西流星さんのキャスティング秘話についてもお聞かせください。
塩村:高橋さんは、もう一人のプロデューサーである松本桂子や、チーフディレクターの井村太一がお仕事をさせていただいたことがあって。すごくアグレッシブに色んな役柄に挑戦されている方だなという印象がありました。そんな中で、千冬は高橋さんがこれまで演じてきた役柄とは少し違うキャラクターになっているかと思います。まどかや吉村界人さん演じる桃木にもズケズケ意見できるサバサバとした千冬を、以前お仕事させていただいた時から少し大人になった高橋さんに演じてもらったら面白いんじゃないかなと思い、オファーした形です。監督のオーダーにも貪欲に食らいついてくださって、より千冬というキャラクターに深みが出たように思います。
大西さんとは私も松本も過去に2回、お仕事させていただいて、キャラクターとして多彩な方だなと思っていました。アイドルとしてのかっこよさはもちろん、一歩引いて、周りのことを見守ってくれる温かさもあって、すごく魅力的なんですよね。
本作にはまどかが千冬や五十嵐と3人でお喋りするシーンが多々ありますが、今までの火曜ドラマだったら多分、女性3人になるんです。でも、今回はそれを変えたいなと思って。ただ、そこに普通の青年が入ってきても違和感が出てしまう。やっぱり人生の話や恋バナをするシチュエーションもたくさんあるので、そこに入っても自然と馴染むオリジナルの男性キャラを作りたいなと思った時に、大西さんを思い出したんです。
大西さんだったらそこに違和感なく溶け込んで、なおかつツッコむ時はツッコむし、見守る時は見守るという、当初からイメージしていた五十嵐のキャラクターに合うだろうなと。ただ、まどかが患者さんとの向き合い方で悩んでいる時に、五十嵐が刺繍をしながら話を聞くシーンを見て、ドタバタした同期たちをそっと見守るお母さん的な役割が彼にはあるなと思い、当初想定していたよりも優しさが垣間見えるシーンを増やしました。そんな風にみんなを見守ってきた彼が人生の選択でどういう答えを出すのか、というところにもぜひ注目してほしいなと思います。
ーー本作の脚本は複数人の作家さんが手がけていますが、チーム制にした理由や具体的な台本の作り方について教えてください。
塩村:チーム制にした理由は色々ありますが、一つはまどかがスーパーローテーションで各科を回り、色んな世代の人たちと出会い、色んな価値観や生き様に触れて、自分の人生と向き合っていくお話なので、幅広い視点があった方がいいんじゃないかと思ったからです。なので、今回はヒューマンドラマが得意な人、ラブコメが得意な人、ミステリーが得意な人、コメディーが得意な人など、それぞれ得意分野や個性を持った作家さんたちに集まっていただきました。そんなカラフルな作家さんたちをチーフライターの前川洋一さんがまとめ上げてくださった結果、一見ライトになりがちな火曜ドラマが、しっかり地に足のついた人間ドラマになったなと思います。
台本の作り方としては、まず全員で打ち合わせをし、全体のプロットを組みました。そこから担当回を割り振る形にしたんですが、担当以外の回には関わらないということではなく、それぞれの作家さんから上がってきた台本をもとに全員で話し合っています。あとは担当回だけではなく、まどか担当、菅野担当といったようにメインで見ていくキャラクターを各作家さんに割り振りました。そのおかげで本作は登場人物が多いんですけれども、どのキャラクターも最後までブレることなく一貫性を持って描くことができたように思います。
ーー色んな方の視点が入っているからだと思いますが、若者と年長者を単純な対立構造に落とし込んでいないところが魅力に感じました。世代間ギャップを描く上で、心がけたことはありますか?
塩村:極端な話、昭和のダメ親父と言われる人たちも、自分が昭和のダメ親父とは思っていないと思うんです。私自身もそうなんですが、どうしても自分の価値観が主流だと思ってしまうじゃないですか。だけど、時代とともに価値観は変わっていく。この作品を作る上で若い世代の方にリサーチしたのですが、最初は同じ目線に立って話を聞いているつもりで、共感する部分も沢山あるのも、ふとダメ親父側の目線になることもあるんです。イマドキの若い子ってそうなんだ、私の時代はこうだったのに…って、気づけば「俺たちの時代は」トークをしている自分がいて。それが新たな発見でしたね。
赤堀雅秋さん演じる「俺たちの時代は」が口癖な西山先生とまどかが対峙する第2話は「イマドキ研修医vs化石オヤジ」とキャッチーな見出しで作りましたが、実際はそういう風に線を引けるものではなく、価値観ってグラデーションになっているんだなと思いました。お互いに理解できることもあれば、できないこともある。
なので、どうしても主人公が若者の場合、その目線で昭和のダメ親父を滑稽に描いてしまいがちなんですが、それで終わっちゃいけないなって。昭和のダメ親父たちも別に、自分たちの価値観を若者に押しつけたいと思っているわけじゃない。働き方改革も、令和世代と接するのも、初めてだから戸惑っているだけなんですよね。大人だからって万能なわけじゃない。若い世代からすると結構な大人だと思う人たちも悩みながら今という時代に向き合っているということをちゃんと描きたいねって話に作家さんたちとなりました。例えば、第2話で奥田さん演じる角田先生と西山先生がテラスで語り合うところなんかは、そういうシーンになっているんじゃないかなと思います。
ーーまどかは横浜DeNAベイスターズのファンで試合シーンも多々出てきますし、部屋にもグッズが置かれていたり、ディテールの部分までしっかり作り込まれていて、実際のファンの間でも話題となっています。ここまでベイスターズファンという設定を押し出しているのはなぜでしょうか。
塩村:最初は原作発信で、水谷先生が描きたかったお医者さんの人間らしさみたいなもの描くには、まどかに趣味や好きなことがあって、お医者さんとして忙しく働きながらも、それを諦めないキャラクターにしたいと思ったのがきっかけです。そこで、まどかが野球好きという原作の設定を使わせてもらいました。
実はまどかのモデルになった先生も野球がお好きで、お会いした時に好きな球団の服を着ていたり、部屋の一角には野球コーナーがあるという風にお話しされていたりしたので、まどかの部屋づくりでそういうところも意識しましたし、作家さんチームの中にも猛烈な野球ファンの方がいたので、「こういう時、ファンはこんな行動はとりません」みたいなアドバイスをいただきながら、設定を作り込んでいきました。
球場でのシーンではベイスターズのファンクラブの方々にお力添えいただいたんですが、空き時間に芳根さんに応援の仕方を教えてくださったり、皆さんで応援歌を披露してくださったり、本当に温かくて。そこまでしてもらったのに、まどかがベイスターズファンという設定を掴みだけで使ったら、皆さんに顔向けできないなという気持ちがあり、最後までしっかり描こうと心に決めました。
一方で時系列の問題があって、第7話が2025年春の設定で以降は未来の話になるんですね。なので、2024年の日本シリーズでベイスターズが優勝するところまではシーンとして盛り込んだんですが、以降の試合は描けない。では、代わりにファン同士の交流を描こうと思い、まどかが担当する金田明夫さん演じる患者の吉岡もベイスターズファンという設定にしました。最後の最後で大きな隠し球も用意してあるので、ぜひベイスターズファンの方は楽しみにしていてください。
ーー医療用語を説明する際に、まどかが大好きなドクターKとQ太の人形劇が必ず入ってきますが、この人形劇を入れたきっかけについて教えてください。
塩村:まず前提として、まどかがお医者さんになったきっかけを「親もお医者さんだから」とかではなく、視聴者の方も身近に感じられるような本当に何気ないものにしたいという思いがありました。そんな中で、実際のお医者さんたちに話を聞くと、手塚治虫さんの『ブラックジャック』を読んだことがきっかけとおっしゃる方がとても多かったんですね。
なので、まどかもアニメや漫画に影響を受けた設定にしようかなと思っていた時に、プロデューサーの松本がとある人形劇に出会って。漫画やアニメもいいけれど、多くの人が子供の頃に触れたことのある人形劇にした方が間口も広がるし、若い世代の人にとっては少しとっつきにくい医療ドラマも人形劇という要素が入ることによって、スッと入ってこれるのではないかと思ったんです。
結果的に作った人形がものすごく可愛かったのと、声優の大塚明夫さんと大谷育江さんに命を吹き込まれたドクターKとQ太が本当に魅力的で、まどかの思い出の中だけで終わらせてしまうのはもったいないと思ったので、難しい医療用語の解説に使わせてもらいました。
ーー第9話では、菅野が研修医時代にお世話になった離島の診療所に行くため、病院を離れました。まどかとも離れ離れになりますが、2人の恋の行方はどうなるのでしょうか。
塩村:恋のムードが高まりかけた時に、第8話のラストで菅野先生から「この病院を離れようと思う」と告げられ、まどかは急に梯子を外されたような状態となってしまいます。第9話は距離が離れたことにより、お互いの大切さを実感するわけですが、あくまでもこの物語の主軸はまどかがどんな人生を選び取っていくかであり、ラブストーリーではないんですよね。もちろん、2人の恋の行方も引き続き丁寧に描いてはいきますが、まどかは菅野先生が気になる一方で、目の前にある人生の選択と向き合わなくてはなりません。
ただ、恋も人生の一部ではあって、まどかの中で菅野先生はすでになくてはならない大切な存在になっているので、これからの人生を考えれば考えるほど、菅野先生への思いも高まっていくと思います。単純に恋の行方だけではなく、まどかと菅野先生がどんな人生を選び、その中でお互いをどう必要としていくのかを見守っていただけると嬉しいです。
ーーまた、第9話のラストでは角田先生が倒れてしまいます。このことが今後のストーリーにどう作用していくのかを教えてください。
塩村:角田先生のキャラクターは特に大切に描きたいと思い、奥田さんとも何度も話し合いを重ねてきました。ネタバレになるので現時点ではまだお話しできないことも多々ありますが、患者さんからも人望が厚く、他のお医者さんたちを見守ってきた、病院の核となる存在の角田先生が倒れてしまった時にみんながどう動くかも大きな見どころとなっています。手塚先生や城崎先生は角田先生からバトンを渡されたと認識して、自分はこの病院のため、医療のために何ができるかを考える。そんな先輩たちの姿を見て、研修医たちも考えるというような形になっていくので、ぜひ注目してみてください。
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第10話(最終回)では、まどかが自分の人生も患者の人生も大切にするための選択を下す。菅野との恋の結末も多幸感に溢れ、視聴者からは続編を望む声が多数上がった。
第9話では、それぞれが進路の選択と向き合う中、ベテラン患者の橋口が腎臓がんで再び入院してくる。そんな橋口を元気づけようと、ある実行したサプライズを実行したつぼみ隊に視聴者から「かわいすぎる」「愛おしい」という声が上がった。
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第8話のテーマは“選択”だ。人生の大きな選択を目前に控えたまどかに、人生の先輩たちがさまざまな生き方を示してくれる。なかでも、医師であり2児の母でもある内田の奮闘ぶりには、特に女性視聴者から共感と称賛の声が上がった。
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