【洋画】カルチャー大国の「今」に繋がる現代史。韓国の民主化運動の時代を描いた映画5選
シェア

【洋画】カルチャー大国の「今」に繋がる現代史。韓国の民主化運動の時代を描いた映画5選

2023.05.16 10:00

この記事に関する写真(5枚)

  • タクシー運転手 ~約束は海を越えて~
  • 1987、ある闘いの真実
  • 偽りの隣人 ある諜報員の告白
  • 弁護人
  • ペパーミント・キャンディー

Edited by

近年、アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督(『パラサイト半地下の家族』)らがけん引する映画界でも、話題性の高い作品を量産しているドラマシリーズ界でも、K-POPグループが世界的に活躍する音楽界でも、エンターテイメント産出国として最先端に躍り出た韓国。

その韓国では43年前の5月、人々が民主化を求める大規模なデモを行い、軍による弾圧で多くの民間人が犠牲となった「光州事件」がありました。その後に民主化が実現されたことが礎となり、現在の韓国エンターテイメントの躍進があるといえるでしょう。

ここ数年の韓国の映画界は、光州事件をはじめ近現代に起きた様々な出来事を背景として多くの素晴らしい映画を生み出しています。それはまるで、その出来事を“映画”という媒体を使いエンターテイメントに昇華することで「現在」に接続させ、後世に伝えていこうとしているかのよう。

映画作品としての熱量やその時代を描く覚悟がもたらす質量に圧倒されるのはもちろんのこと、これらの映画を観て当時の人々の人生に触れ身近に感じることで、最新の韓国カルチャーの背景をより深く理解しリスペクトしながら楽しむための手引きにもなるかもしれません。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』(2017)

タクシー運転手 ~約束は海を越えて~
©2017 SHOWBOX AND THE LAMP. ALL RIGHTS RESERVED.

光州事件を世界に伝えたドイツ人記者を現場まで乗せたタクシー運転手が主人公。軍による激しい弾圧に圧倒される様子や、暴力に倒れた若者に対し“犠牲者のひとり”ではなく“ひとりの人間”として丁寧に向き合おうとする姿など、特に政治的でもない、ごく普通の父親でもある気のいい運転手の視点で観ることでさらに私たちの胸に深く刺さります。本国でも大ヒットし、第90回アカデミー賞外国語映画賞韓国代表にもなった実話ベースの作品です。

<ストーリー>
幼い娘を持つタクシー運転手・マンソプは「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられ、ドイツ人記者・ピーターを乗せて光州を目指す。しかしその頃、光州では激しい民主化デモが発生し、軍が民衆を制圧する危険地帯となっていた。

『1987、ある闘いの真実』(2018)

1987、ある闘いの真実
©2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM ALL RIGHTS RESERVED

学生運動家の拷問致死事件を隠ぺいしようとする軍事政権と、真実を明らかにしようとする新聞記者、刑務所看守、そして仲間の大学生らの闘い。この後に起きる「6月民主抗争」に直接繋がる大きな出来事です。巧みな展開でサスペンスとしても人間ドラマとしても傑作なのですが、観終わったあと、この実話ベースの物語がじつはさほど昔の話ではないこと(日本はちょうどバブル後期)や、劇中のキャラクターのほとんどが実在する人物であることに、改めて衝撃を受ける作品でもあります。

<ストーリー>
1987年、警察に連行されたソウル大学の学生が、取り調べ中に命を落とす。心臓麻痺で死亡したという警察の発表に、検事のチェは疑念を抱く。拷問による死だとにらんだチェ検事は、圧力をかけられながらも調査を続け、本当の死因を突き止めるのだが…。

『偽りの隣人 ある諜報員の告白』(2020)

偽りの隣人 ある諜報員の告白
© 2020 LittleBig Pictures All Rights Reserved.

真面目で正義感の強い諜報員と、軍事政権に強制的に自宅軟禁されているひとりの政治家。隙あらば共産主義者に仕立て上げ弾圧する/されるという関係性が次第に変化していく中で、「正義」という概念の曖昧さや危うさに気付かされます。シリアスな中でもふっと心が緩むようなユーモアと人間味あふれる描写、気付くと涙があふれているような展開は、『7番房の奇跡』のイ・ファンギョン監督だからこそ。

<ストーリー>
1985年、軍事政権下の韓国。愛国心の強いデグォンは、自宅軟禁された政治家・ウィシクの家に盗聴器を仕掛け、24時間態勢で監視することに。だが、家族を愛し、国民の平和と平等を願うウィシクの声を聞き続けるうちに、デグォンは上層部に疑問を持ち始める。

『弁護人』(2013)

弁護人
©2013 Next Entertainment World Inc. & Withus Film Co. Ltd. All Rights Reserved.

光州事件の翌年、釜山市で大学生や社会活動家たちが拘留・拷問されて無実の罪を自白させられた「釜林事件」が、のちに大統領となる盧武鉉をモデルとした弁護士の目線で描かれた作品です。当時の国家による圧力の厳しさが心に重くのしかかり、必ずしもカタルシスがあるわけではない法廷劇ですが、その分、鑑賞後に残るものが大きいのも事実。主演のソン・ガンホの熱演が印象的です。

<ストーリー>
1980年代初めの韓国・釜山。売れっ子弁護士のソン・ウソクは、かつて世話になった食堂の店主から息子・ジヌを助けてほしいと頼まれた。ある事件に巻き込まれて拘留されているという。面会に出向いたウソクは、そこで信じがたい光景を目にする。

配信開始前、または配信終了しています。

『ペパーミント・キャンディー』(1999)

ペパーミント・キャンディー
EAST FILM&NHK

『バーニング 劇場版』でカンヌ映画祭やアカデミー賞での受賞に肉薄し、韓国映画の国際的評価に弾みをつけた名匠イ・チャンドン監督の長編2作目。ひとりの男が人生を終えようとする哀しく絶望的なシーンから始まり、時代を遡りながら彼の人生を回想していく構成が切ない映画。彼の人生の歯車を明確に狂わせてしまったのは、兵役中に招集された市街戦。劇中では明示されていませんが、1980年5月というテロップが、それが光州事件であることを暗示しています。


<ストーリー>
ピクニックに場違いな格好で現れたキム・ヨンホ。全てを失い人生に絶望した彼は、向かってくる列車の前に立ちはだかった。すると彼の記憶が巻き戻り、結婚生活や切ない初恋、兵士として遭遇した光州事件、そしてもっとも美しかった20年前へとたどり着く。


いかがでしたか?

U-NEXTではこの時代以外にも、韓国の現代史を映画化した作品をたくさん配信しています。ぜひご覧ください。

この記事をシェア

この記事に関する写真(5枚)

  • タクシー運転手 ~約束は海を越えて~
  • 1987、ある闘いの真実
  • 偽りの隣人 ある諜報員の告白
  • 弁護人
  • ペパーミント・キャンディー

Edited by

同じ連載の記事一覧

もっと見る

映画 特集の記事一覧

もっと見る