韓国の恋愛ドラマにおいて、ライバルの配役はかなり重要である。あまりに憎らしければ視聴者を苛立たせ、逆にかわいげがありすぎると主役が霞んでしまうこともあるからだ。その点において絶妙な演じ手だと思うのは、『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』や『ロマンスは別冊付録』などの女性俳優、チョン・ユジンである。
ユジンは16歳の頃にモデルとして芸能界入りし、徐々にテレビCMやミュージックビデオなどへの出演で活躍の場を広げていった。(余談だが、今回調べる過程で、ブレイク中の『ソンジェ背負って走れ』主演俳優ビョン・ウソクとミュージックビデオで恋人役を演じていたのには驚いた!)そして2015年、『風の便りに聞きましたけど!?』で俳優デビュー。
その才能はすぐに芽が出ることとなり、イ・ジョンソクとハン・ヒョジュのW主演作『W -君と僕の世界-』で男性主人公に恋する“二番手”役の演技が評価され、2016年の「MBC演技大賞 新人女優賞」にノミネートされている。
2018年の『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』や、2019年の『ロマンスは別冊付録』でも、女性主人公のライバル役としてキャスティングされ、各作品において刺激的な存在に。そして、ここまで“ピリ辛”止まりだったユジンが、“激辛”モードへと切り替わったのが、2022年の『再婚ゲーム』。主人公の夫を寝とって横領の罪を着せる&性犯罪者扱いする、というとんでもない役を見事に演じ切っていた。
170cm超えの高身長で、大きな一重の目元が東洋の美を感じさせる、洗練されたルックスのユジン。2022年の『カーテンコール』では主人公の正体を知る客室乗務員、そして2023年の『セレブリティ』では主人公を有名人へと押し上げるモデル兼インフルエンサーと、彼女の持つ雰囲気だからこそ嫌味なく務まるキャラクターをこなし、短時間での出演でも印象を残していた。
最新作は、8月半ばより始まった『DNAラバー』。男性主人公の元恋人役だが、ライバルではなくサブカップルのポジション。そろそろ、恋愛成就に至る役柄を見たかったので嬉しいところだ。今回は、そんな注目俳優のひとり、チョン・ユジンが出演している5作品を紹介していきたいと思う。
家では親から結婚を急かされ、職場ではセクハラに悩み、恋人とは破局するなど、息苦しい日々を過ごしていたジナ。そんな頃、親友の弟ジュニが海外赴任から帰ってくる。職場のビルが同じで頻繁にご飯を食べるようになり、いつしか恋人同士になった2人。しかし、“血の繋がっていない姉弟”のようだった彼らの交際に、お互いの家族は猛反対する。
主人公ジナの勤め先は、フランチャイズコーヒー店の運営会社。温和な性格のジナは、気難しいフランチャイズオーナーたちとは上手に関係性を築けてはいるものの、本社上司たちによるパワハラやセクハラには上手く対処できないでいた。本作では、ジュニとの恋愛を通して自分を大切にすることの重要さに気づいたジナが、自分軸を確立。今まで我慢してきた不快な出来事にノーを突きつける、戦いの物語にもなっている。
ユジンが演じているのは、ジナの同期セヨン。偶然ジュニのことを知って興味を抱いたセヨンは、ジュニのことを落とす気まんまんでアプローチを仕掛ける。しかし、早々にジナとジュニがくっついてしまい、ひとりだけそのことを知らずに空回りしてしまう、少し気の毒な人物だ。また、社内問題で女性たちが連携を強める中、出世をチラつかされて上司のスパイと化す。その、決して悪人ではないが世渡り上手なキャラクターが、妙にリアルだった。
元人気コピーライターのダニは離婚後、崖っぷちに立っていた。家もお金もコネもなく、結婚後のブランクのせいで再就職は絶望的。そこで、頼れる弟分ウノの屋根裏部屋にこっそり住み始め、さらにはウノの職場の求人に応募することに。経歴をあえて低く詐称したことで、晴れて出版社の雑用係として採用されたダニ。人生の再スタートを切り、ウノとの関係も徐々に変わっていく。
本作は、「仕事ができなくて辛い」のではなく、「仕事ができるから辛い」という珍しいパターンのお仕事ドラマ。出版のプロとして誇りを持っている人たちが、ぽっと出の雑用係に美味しい仕事を取られてしまったら、まぁ面白くはない。最初はやっかみを受ける主人公だが、様々な困難を共に乗り越えるうち、癖も強く本への愛も強い面々に馴染んでいく。経歴詐称がバレて大問題へ発展する流れは心痛むが、ラストは温かな余韻に浸れる。
ユジンが演じるのは、編集3年目にして異例のスピード昇進した実力派の代理ヘリン。自他共に厳しい性格ゆえ“氷の魔女”として恐れられているが、恋愛はめっぽう苦手。先輩である編集長ウノにずっと想いを寄せており、酔ったフリをしてウノの自宅の本棚に恋文を忍ばせるという超奥手なアプローチを長らく続けている。普段はテキパキと仕事をこなすユジンが、ウノからのコミュニケーションに密かに喜ぶ姿がいじらしい。
1987年、民主化運動で揺れる韓国・ソウル。突如、女子大寮に血まみれの男スホが逃げ込んできた。少し前、スホと合コンで出会って良い雰囲気だった寮生ヨンロは、友人たちの手も借りて、彼の身を匿うことを決意する。だが、国家安全企画部(以下、安企部)の捜査により、彼の正体が北朝鮮のスパイであることが発覚。寮生及び寮の職員たちは、スホの人質となってしまう。
ヨンロ役はBLACKPINKのジスで、スホ役は『D.P. -脱走兵追跡官-』などのチョン・へイン、そこに序盤のロマンチックな演出に加わり、ヘインのかっこよさにぼーっと見惚れているとうっかり火傷するのがこちら。北朝鮮スパイの立てこもりが始まってからは緊迫したシーンが続き、現場にいる犯人・人質・捜査員の度重なる攻防、事件を担当する安企部内での出世競争、北朝鮮と韓国のお偉い方たちによる駆け引きなどが描かれていく。ラブストーリーの殻に包まれたヘビーな政治ドラマだが、かなり見応えがあって面白い。
ユジンが演じているのは、安企部捜査チーム長ガンムの元婚約者である安企部捜査要員ハンナ。自分のもとを去ったガンムのことを根に持っていたが、生死を目前に2人の絆は強くなっていく。銃撃戦の末に寮内に留まる羽目になったガンムをどうにか救いたいという気持ちを原動に、寮外での戦いに命懸けで挑んでいくハンナの姿が、かっこいい。
江南に住む中流階級の教師ヘスンの幸せな人生は、一瞬にして崩壊した。弁護士の夫が愛人ユヒに騙され、横領罪と性犯罪に問われ、追い詰められて自殺したのだ。無気力状態に陥ったヘスンだが、ことの元凶であるユヒが上流階級向けの結婚相談所「レックス」を利用していることを知り、復讐に燃え始める。
ユヒの目標は、「レックス」内で最もハイスペックな会員ヒョンジュと結婚すること。そのことに気づいたヘスンはヒョンジュに近づこうとするが、ヒョンジュを狙う女性はユヒだけではない。また、継母から父の財産を取り戻すことを目的に、ヘスンの元恋人ソクジンも「レックス」に入会。……と、それぞれの思惑が入り混じるドロドロ系の作品だが、全8話なので、ちょうど胃もたれを起こす前にサクッと完走することができる。
『明日』などのキム・ヒソンがヘスンを、ユヒをユジンが演じているのだが、この作品のMVPは間違いなくユジン。弁護士ゆえに悪知恵が働き、美も富も持ち合わせているユヒは、手段と方法を選ばない。不倫相手の死について罪悪感を見せることもなく、彼女の真の顔を明かそうと画策するヘスンを社会的に不利な立場へと追いやっていく。度を越した裏工作も増えていき、物語に進むにつれ、憎たらしさが倍増。それゆえ、終盤のスカッと感はたまらない。
幾多の恋愛に失敗してきた結果、一生のパートナーを遺伝子レベルで探すことに執着するようになった遺伝子研究員、ソジン。一方、運命論には否定的で、相手が自分に執着心を抱いた瞬間にサヨナラを告げる無慈悲な産婦人科医ヨヌ。ある日2人が偶然出会ったことで、ヨヌの信念は崩れていくことになる……。
本作は、遺伝子を通じた恋愛を題材としたラブコメディ。『私の恋したテリウス〜A LOVE MISSION〜』などのチョン・インソンがオタク気質のソジンをチャーミングに演じ、ロジカル思考のモテ男ヨヌをSUPER JUNIORのチェ・シウォンがクールに演じている。
サブカップルとして展開していきそうなのは、約束を必ず守る消防士ガンフンと、ヨヌの元恋人で恋愛コラムストのミウン。ガンフンを演じるイ・テファン(『キム秘書はいったい、なぜ?』など)と、ミウンを演じるユジンは、『W-君と僕の世界-』から8年ぶりの共演を果たしている。
まだ6話までの配信のためこれから面白くなりそうなのだが、特に気になっているのが、ガンフンとミウンがどのように折り合いを付けるのか、というところ。ガンフンは「ただひとりに生涯を捧げるべき!」という考えの持ち主だが、ミウンは複数人と恋愛関係を築くポリアモリーを実践している。ミウンに至っては、「ひとりだけを愛するから失敗する」と声高に世間に訴え、いかに傷つかずに恋愛するかのノウハウを発表するほどなので、考えを変えるのはなかなか難しそうである。今後の展開に期待したい。
2024年8月17日(土)より韓国ドラマ『DNAラバー』が"U-NEXTオリジナル"として日本初・独占見放題配信される。
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