報われる保証のない戦いの中で「心の支え」になるものとは… 張本智和、アジア覇者が強行日程でTリーグに出場し続ける理由
アジア卓球選手権で、日本勢としては50年ぶりとなる優勝を果たした日本卓球界のエース、張本智和。悲願の五輪金メダルに向け、国際試合を転戦して腕を磨き続ける一方で、Tリーグへの出場も可能な限り続けている。その理由とは
アジアの実力あるMMA選手がUFCの契約権をかけてトーナメントを争う「ROAD TO UFC」。3回目となる『ROAD TO UFC Season3』では、日本人8選手を含む総勢32名の総合格闘家が、男子フェザー級、男子バンタム級、男子フライ級、女子ストロー級の4つの階級で頂点を目指します。
PANCRASE8位にランクし、7月にチャンピオンの伊藤盛一郎選手に挑戦するムハンマド・サロハイディノフ選手とも3Rを戦いぬいた若き実力者が、群雄割拠の日本人フライ級ファイターでは唯一、今年のRTUに選出。その期待を背負い上海での1回戦へ出発する前の松井選手が、意気込みを語ってくれました。
──RTU参戦が決まった瞬間の感想を教えてください。
松井:正直、自分が出ていいのかって思ったんですけど……、今はだんだんは気持ちが上がっていい練習ができています。
──「自分が出ていいのか?」という気持ちになった理由をもう少し詳しく教えていただけますか?
松井:キャリアを見渡して、ベルトを携えてRTUに参戦する選手が多いなか、自分はまだベルトも獲っていないし、前戦で負けているので。
──気持ちが上がってきたなかで、どんなことを考えていますか?
松井:フライ級は(日本の)選手層が厚い中で、選ばれたのが自分だけなのでしっかり一生懸命がんばろうと思いました。
──1回戦で対戦するルエル・パニャレス選手の印象は?
松井:フィリピン人でストライカーですが、意外と綺麗な打撃をやる印象ですが、僕は打ち合いでは負けないですし、パンチは問題ないと思っています。
──どんな試合にしたいですか?
松井:自分の得意なところは打撃なので、そこは絶対引かないようにして、MMAの試合なのでいろいろ試しながら、色々出しながらやっていきたいです。
──色々試していくという課題はありながらも実際はどんな展開になっていくことが予想されますか。
松井:結局、打撃の戦いになるかなって思っています。
──対戦相手がルエル・パニャレス選手に決まってからは、対策練習もやりこんできたのですか?
松井:基本的にはいつも通りなのですが、打撃のスパーリングを1日やるようにしていました。相手がサウスポーなのでサウスポーの選手とやったりしてきましたね。
──オーソドックス対サウスポーということになりますが、過去の試合を見ると、相手の左のハイキックが強力な武器のように思えるのですが、松井選手としてはどこに注意をしていますか?
松井:はい、そうですね。一番しっかりと警戒しているのはハイキックです。
──打撃の印象が強いですが、一本勝利も挙げている選手のようですね?
松井:どちらかというとテイクダウンして極めるというよりはパウンドで仕留めている印象です。
──ご自身としての理想のフィニッシュは?
松井:左フックでKOしたい!とは思うのですが、たぶん力んでうまくいかないので(苦笑)、とにかく気持ちを見せて判定でも、絶対に勝ちたいと思います。
──もう力んでしまうことも想定なのですね。
松井:いつもそうなんです。多分……、RTUで舞い上がると思うので、硬くなりそうです。大舞台になればなるほど力みが出てしまいます。もちろん、デビュー戦の頃などと比べれば、だんだんほぐれてきて、良くなっているとは感じています。
──そういう戦いの場に入場するとき、どんなことを考えているのですか?
松井:できるだけ「無」でいるようにしています。
──フライ級トーナメント出場選手で、ほかに注目している選手や戦ってみたい選手はいますか?
松井:去年準優勝した、中国のジー・ニウシュイエ選手と、その対戦相手である韓国のチェ・ドンフン選手が強いのではないかと思っています。ただ本当に、次の試合しか考えられないので、まずはそこを勝ちたいと思います。
──ジー・ニウシュイエ選手は、同門の先輩であり昨年のRTU優勝者でUFC契約を果たした鶴屋怜選手が決勝で倒した相手だから、ということも意識しているのですか?
松井:特にそういう意識はありません。
──UFCにつながる舞台に出場するにあたって、どんな選手として、世界の人にあるいはUFCに対して、この試合に注目してもらいたいですか?
松井:自分は打撃の選手なので、静かな試合というよりは、派手な試合を見せられれば一番いいです。
──その派手さというのは、たとえば「バンバンKOするところを見せていきたい!」ですとか、そういうイメージでしょうか?
松井:それが理想ですね(笑)。若い分、勢いで行きたいとは思っています。
──海外で試合をすることについては、どんな心境ですか?
松井:中国の選手と対戦する可能性があったのですがフィリピン選手になってよかったなとは思っています。中国で行う試合で中国人というのは嫌だなとは思いました。
──今後も中国の選手で向こうのホームという可能性は残っていますが、ブーイングなどを受ける覚悟もできていますか?
松井:全然、そこは楽しみですけど……、経験がないのでなんとも言えないのですよね(苦笑)
──この試合に向けての練習環境を教えてください。
松井:ほとんどは所属するBLACK BELT JAPANの道場でやっていて、週1回、岡田(遼)さんのジムでのパーソナルで、見てもらっています。
──同じ階級の鶴屋怜選手とのスパーリングはいかがですか?
松井:UFCの契約を決めていて、何回やってもやられますし、食らいつくことでいい練習ができています。
──そんな鶴屋選手のスパーリングパートナーとして、たとえば鶴屋選手の相手がストライカーだった場合など、ご自身が打撃面で貢献していると思うこともありますか?
松井:もしそう思っていてくれている部分があればいいのですが、自分がそういう実感を持つことはないですね。
──練習パートナーは他にどんな選手がいますか?
松井:1回の練習で5Rスパーリングをやるのですが、毎回違う相手ですが、太田(忍)さんだったり、征矢(貴)さんとやらせてもらったりもしています。
──組みを課題にする中でオリンピアンの太田忍選手との練習はいかがですか?
松井:組まれたらヤバいですね、筋肉がめちゃくちゃあるというわけではないけれど力が強くて首が折れそうになるくらいなんです。
──前戦は、今年の7月に伊藤盛一郎選手が持つキング・オブ・パンクラスの座に挑戦する、ムハンマド・サロハイディノフ選手との対戦でした(23年12月)。これから海外で外国人選手と戦うにあたって、タジキスタンの選手とのフルラウンドの対戦経験はいかがでしたか?
松井:初めて外国の選手と戦って、まず向き合ったときに目の色も違って。オーラというか、威圧感もあって、スタミナもすごく強かったです。やっぱり練習でどれだけやっていても試合の方が疲れるし、3Rやって、とてもいい経験になりました。
──フィニッシュにつながる動きまではさせなかったことについては、敗北はしたものの、組みの面で自信になりましたか?またどういったことを課題だと捉えていますか?
松井:はい、自信になりました!課題は、守ることはできたけれど守ってばかりになってしまって、そこから体を入れ替えたり離して打撃をやったり、そういう部分ができていませんでした。
──そして、今年2月に予定されていた秋葉太樹戦ですが、この試合は松井選手が大幅な体重超過をし(6.8kg)中止となりました。この件の経緯を教えていただけませんか?
松井:いつも通り水抜きをやっていたのですが、倒れてしまい、救急車で運ばれ、そこから点滴を打ったり、水分も摂って回復して、それから計量会場に行きました。その時点でもう試合が中止になることは決まっていたこともあり、回復するために水やかるい食事を摂取していたので、そのうえで計量したら、あの数字になってしまった……というところです。
──水抜きではどれくらい落としているのでしょうか?
松井:いつも3kgくらいなのですが、前回は4kgくらいでした。
──これまで問題なかったのだとしたら今回起きたことの原因を究明し、改善に努めてきたということですよね。
松井:先輩方に相談しました。ムハンマド選手の試合から2ヶ月ないくらいで次の試合だったので、体が体重を落とさないように維持していて、体重も落ちにくくなっていました。ご飯は正直全然食べれていなかったので、それで体調も悪くなってきたのかなという感じです。
──鶴屋浩代表もですが、ジムの先輩たちや周りの方からはどんな言葉や、アドバイスをもらったのでしょうか?
松井:みんなから、自分がこのまま落ちちゃうんじゃないかって心配されていたみたいなのですが、そういうなかで「チャンピオンになって取り返すぞ!」って言ってくれて。自分は正直もう辞めたいと思いましたけど、そういう言葉をもらって、がんばろうと思いました。
──問題なく減量できて、試合ではしっかり本来の力を出せそうですか?
松井:はい!試合では出せます。扇久保(博正)さんからは、練習の技術もそうなのですけど、今回も減量のことも聞いていて、全部、教えてくれていました。
──思いきりトーナメントで力を発揮してくれることを楽しみにしています。それでは、U-NEXTのライブ配信を通して応援するみなさんに、メッセージをお願いします。
松井:一生懸命戦って、必ず、勝ちます!
エピソード1:5月18日(土)日本時間19時開始
【男子フェザー級(65.8kg以下)1回戦】ズー・カンジエ(中国) vs. 安藤達也(日本)
【男子フェザー級(65.8kg以下 )1回戦】原口伸(日本) vs. ホン・ジュニョン(韓国)
【女子ストロー級(52.2kg以下)1回戦】フォン・シャオツァン(中国) vs. キラン・シン(インド)
【女子ストロー級(52.2kg以下)1回戦】ホアン・フェイル(中国) vs. 本野美樹(日本)
【ウェルター級(非トーナメント)1回戦】バテボラティ・バハテボラ(中国) vs. キム・ハンスル(韓国)
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