衝撃的展開の連続で目が離せない!話題の韓国時代劇『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』
序盤の数話だけでも目まぐるしい展開を見せ、先が全く読めないのも本作の魅力。1話80分というボリュームにもかかわらず、1話があっという間と感じるほど!
ドラマ『ソンジェ背負って走れ』など、本国との同時配信によって韓国での盛り上がりをリアルタイムに体験できる作品がある一方、そうでないパターンもある。日本未配信でもどかしく思っていた作品が、ちょうど1年前に韓国のストリーミングサービスCoupang Playでオリジナルシリーズとして配信されていた『少年時代-恋と涙と青春と-』だ。
主演は、ドラマ『ミセン~未生~』、映画『ボストン1947』などのイム・シワン。筆者のSNSはシワンの情報が頻繁に表示される仕組みになっているため、配信開始時に『少年時代-恋と涙と青春と-』のキャッチーな場面を切り取った映像を高確率で目にし、「この数秒だけでも面白いのだから本編フルは相当なものだろう」と何度も悔しさに涙を流しそうだった(実際には流していない)。
韓国における『少年時代-恋と涙と青春と-』の熱狂ぶりは凄く、初公開以降3週連続でCoupang Playのランキング1位を獲得、7・8話公開後にはCoupang Playをサーバーダウンさせて接続障害をもたらし、ラスト9・10話の公開時には初週と比較して視聴量が2,914%上昇というとんでもない数字を叩き出すほどだった。(参照:entertain.naver.com、KOREA WAVE)
賞レースでも存在感を示し、アジア作品を対象に行なわれる『アジアコンテンツアワード&グローバルOTTアワード』では「ベストOTTオリジナル賞」を受賞し、韓国のゴールデングローブ賞と称される『百想芸術大賞』ではイ・ミョンウ監督が「演出賞」にノミネート。
シワンは、韓国で最も権威ある映画授賞式のスピンオフ『青龍シリーズアワード』で「主演男優賞」、マリ・クレール誌主催の『アジア·スターアワード』で「ビヨンドシネマ賞」、韓国最大のドラマの祭典『コリアドラマアワード』で「最優秀演技賞(男性)」を受賞した。『青龍シリーズアワード』に至っては、『ムービング』のリュ・スンリョンを抑えての受賞とあり、「あの熱演をも凌ぐシワンの演技とはいかほど!?」と、観たい気持ちは日に日に募っていくばかりだった。
きっと韓国ドラマのファン……特にスワン(※シワンのファンの総称)の皆さま方も同じような想いを抱えていたのではなかろうか?その無念が果たされる日が遂に訪れた。12月24日、U-NEXTで配信開始されたのである……!!!
『少年時代-恋と涙と青春と-』の舞台は、1980年代後期の忠清南道。高校2年生のチャン・ビョンテは、父の運営する違法ダンス教室が原因で再び夜逃げすることになり、涙を流す。なぜなら、学内で誰に目を付けられたらヤバいのか、ようやっとわかった直後だったからだ。
気の弱いビョンテの目標は、「殴られずに生きていくこと」。新天地ではどうにかしたいと嘆く彼に、父は「初日で強者のように振る舞えば良い」と入れ知恵をする。ビョンテはその教えを実行に移すが、異様なほど効果てきめん。学内ピラミッド頂点の連中が自ら手下になりたいと申し出てきたのだ。だが、彼らの言動の節々に違和感を感じていたビョンテは、自身の歓迎会で気づく。不良たちはビョンテのことを、同時期に転校予定だった喧嘩の強い“白虎”ことチョン・ギョンテと勘違いしているとー。
本作は、血気盛んな男子高校生たちの勢力争いを描いた青春アクションコメディドラマ。見るからに虚弱体質なビョンテが喧嘩番長のフリをし続けるのには無理があり、「流石にもうバレる!」とハラハラするところでミラクルな出来事が発生する、そのめくるめく展開が爆笑モノの作品となっている。
ビョンテの手下となる不良たちも、酒・煙草・喧嘩と悪ぶっているが、本分は農業高校の学生。通学を欠かさず、酪農動物の生態や農産物の栽培といった授業を真面目に受け、牛の鳴き声に包まれる中で他校生を懲らしめるための作戦会議をしており、その「不良」と「農業」というミスマッチ感も作品におかしみをもたらしている。
もちろん、青春劇に欠かせぬ恋愛や友情のシーンも満載。ビョンテが意中の相手とデートすることになり、気合いを入れすぎた髪型で現れたり様々な面で背伸びしすぎてしまったりと、思春期ならではの“やらかし”シーンは何ともこそばゆい。
また、不良たちや好きな人の前ではカッコつけているビョンテだが、彼のことを本気で心配する居候先の幼馴染や、彼の本質を見抜いて良き相棒となる同級生の前では、優しくお調子者な素(す)の自分をさらけだしていく。その軽快なやり取りにクスリとさせられ、そして彼らとの絆に目頭を熱くさせられる。
さて、これまで日陰の存在だったビョンテは、祭り上げられてお山の大将化していくのだが、所詮は「虎の威を借る狐」だ。本物の白虎が現れると学校の雰囲気は一変。辛酸をなめる日々を過ごすようになり、ビョンテの“目標”も変わっていく。こうして後半はビョンテの成長物語へと転じていくのだが、その最終地点には最高のカタルシスが待っている。時代背景も異なる尻の青い若者たちの話だが、現代社会にも突き刺さる普遍的なテーマを扱っており、最後、ビョンテが絞り出すように本心を述べるシーンには感情を激しく揺さぶられる。
幾多もの「主演男優賞」受賞が物語るように、本作は主人公ビョンテ役イム・シワンの演技がお見事。王子様のように気品溢れるビジュアルのシワンが、ちんちくりんなマッシュルームヘアスタイル姿で癖の強い忠清道の方言を連発する、愛嬌ある負け犬キャラに。目も鼻もまん丸にした挑発的な表情でライバル校の不良を煽ったり、あらゆる顔面の部位を八の字にして涙で顔をぐしゃぐしゃにしたりと、かなり振り切った演技を見せている。
後半には、ドラマ『他人は地獄だ』や映画『スマホを落としただけなのに』のサイコパス役に通じる表情も見え隠れし、その表現力の豊かさに脱帽。また、愉快痛快なダンスシーンも、さすがアイドル出身(※シワンはボーイズグループZE:Aに所属している)の力量といったところだ。
そして作品を大いに盛り上げていたのが、宿敵ギョンテを演じたイ・シウ。ギョンテは拳の強さで周囲を支配し、半端ではない量の酒と煙草を煽り、街一番の美人を携えてバイクを乗り回す、絵に描いたような不良だ。決め台詞は「血の付いたタバコが一番うまい」と厨二病感が漂うものだが、ニッと歯を見せた表情が狂気じみていて笑えない。
シウは最近、ラブコメドラマ『愛は一本橋で』で爽やかな教育実習生役を演じているのだが、その彼と同一人物の俳優とは思えないほどの悪人っぷり。「最高のヒールが、ベイビーフェイスを最も輝かせる」。これは筆者が最近プロレスの生試合を観た時に感じたことなのだが、本作のシウにもぴたりと当てはまると思う。
ビョンテの幼馴染ジヨン役を演じたイ・ソンビン(『酒飲みな都会の女たち』シリーズなど)の活躍も、忘れてはならない。ジヨンは女番長“毒クモ”として名を馳せているのだが、ソンビンの身体能力の高さがその設定に説得力を与えている。しなやか且つ力強いアクションシーンが抜群にカッコいいのである。時々見せる乙女な表情とのギャップも良い。
また、口達者なジヨンがおとぼけビョンテに鋭くツッコむ場面も多いのだが、シワンとソンビンの息の合った演技が面白さに拍車をかけている。2人の相性がいかに良かったのかは、昨年のクリスマスシーズンに放送された音楽番組のデュエットパフォーマンスからも伝わってくるはずだ。
監督を務めたのは、ドラマ『熱血司祭』や『ある日~真実のベール』などのイ・ミョンウ監督で、脚本を担当したのは、映画『ブーメランファミリー』や『世界一周』などで共同脚本を務めてきたキム・ジェファン作家。原作なしの完全オリジナル作品なのだが、「1980年代後期の片田舎」を舞台にしたのが大成功。スマホもインターネットもなく娯楽も限られている環境にしたことで、高校生たちが喧嘩に明け暮れる日々について、集中的に掘り下げることができている。
また、レコード、ディスコ、カセットテーププレイヤー、ウィンナーコーヒーといった当時流行した文化や、昭和時代のヤンキーを思わせるダサいあだ名(「牙山の白虎」、「三角定規」など)、漫画『北斗の拳』風のポスター、映画『ロッキー』へのオマージュなど、郷愁の念を抱かせる要素が散りばめられており、そのレトロポップな世界観も楽しい。
どこか懐かしく聴こえるOST(オリジナルサウンドトラック)も魅力的で、コブシの効いた歌い回しや合いの手が毎度テンションを爆上げしてくれるNORAZOの「이판사판」、60〜70年代のアメリカンフォークを彷彿とさせるMunanの「When I was young」、80年代歌謡曲の雰囲気をまとったMoreの「깊은 밤에 우리」など、ミョンウ監督自らが歌詞を書き下ろしたというから驚きだ。
ちなみに各エピソードのタイトルは有名な映画やドラマから引用されており、それを踏まえて再視聴してみると、監督のちょっとした遊び心を感じられる。なお、U-NEXT配信中の日本語タイトルは一部意訳などがされているため、下記にまとめてみた。ご興味ある方はこれらも参考に、2周目、3周目と作品を楽しんでみてはいかがだろうか。(※最大限調べておりますが、誤りを発見されましたらぜひご連絡を!)
ep1.【原題】와호장룡:전설의 시작 → 映画『ソード・オブ・デスティニー』(オリジナルの中国タイトル『臥虎藏龍』)(2016年)
ep2.【原題】님아, 그 강을 건너지 마오 → ドキュメンタリー映画『あなた、その川を渡らないで』(2014年)
ep3.【原題】웬만해선 그들을 막을 수 없다 → シットコムドラマ『並たいていのことでは彼らは防げない』(2000年〜2002年)
ep4.【原題】봄날은 간다 → 映画『春の日は過ぎゆく』(2001年)
ep5.【原題】사랑과 전쟁 → 再現型ドラマ『夫婦クリニック 愛と戦争』(1999年〜2009年/2011年〜2014年)
ep6.【原題】모든 것, 모든 곳, 한꺼번에 → 映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)
ep7.【原題】미워도 다시 한번 → 映画『憎くても もう一度』(1968年)
ep8.【原題】복수혈전 → 映画『復讐血戦』(1992年)
ep9.【原題】반칙왕 → 映画『反則王』(1999年)
ep10.【原題】육룡이 나르샤 → ドラマ『六龍が飛ぶ』(2015年〜2016年)
2024年は筆者にとって散々な年だった。風邪 → 咳喘息 → コロナ → いぼ痔 → 風邪 → 咳喘息 → 咳のしすぎで肋骨にヒビ、その合間に定期的に訪れる生理痛、と体調不良が続き、調子の良い日の方が圧倒的に少なかった。自転車、椅子、リュック、スーツケース大・小、ボイスレコーダーなど、ないと困るけれど少々お高めな持ち物がことごとく壊れ、想定外の出費も多数。詳細は省くが、おかしな“人災”にも幾度か遭遇した。途中で本厄の真っ只中だと気づいて厄払いを実施。あらゆる方面に注意を払いながら過ごし、もう私に降りかかる災難もネタ切れだろうと思っていた12月半ば。友人たちとの楽しい忘年会で鼻血(しかもなかなか止まらないやつ)を出す。さらに、まだ1年も経っていない自転車がパンクする。
そうして完全に自暴自棄になっていた時、「『少年時代-恋と涙と青春と-』、24日に配信決定です」との知らせを受けた。あの、待ち続けていたシワン主演の「少年時代」がくる。担当者に配信されないのかと何度も尋ねた「少年時代」がくる。SNSで何度も目にした例のダンスシーンの文脈が理解できる。クサクサしていた気持ちが飛んでいった。
筆者には様々な推し俳優がいるが、シワンは特別だ。2023年に開催されたファンミーティングに参加し、実際に彼が喋り、踊り、歌う姿などを見て、私の親友と中身がそっくりであることに気づいた。そして、私と同世代の1988年生まれ。彼のビジュアルや演技も言うまでもなく大好きだが、“別の分野で頑張る同志”、のような思いを抱くようになったのである。だから、シワンの活躍を見ると、「自分も頑張ろう」と活力が出てくる。そんな彼が高い評価を受けた作品をようやっと観られるのなら、来年から気持ち新たに前進していけるような気がした。
だから、心から感謝の気持ちを伝えたい。配信交渉に関わった全ての人々、「少年時代」の制作チーム、そして1988年の同志イム・シワン、私の2024年を救ってくれて、チョンマル カムサハムニダ……!! そして、「前向きに検討」と報じられているシーズン2、首を長くして待っているよ!
『少年時代-恋と涙と青春と-』視聴はこちらから
『少年時代-恋と涙と青春と-』キャストが出演する、その他の作品はこちらから
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