スタジアム改修の目的は「都市との一体化」——トップ10入りを果たしたマジョルカが、次に見据える目標とは
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スタジアム改修の目的は「都市との一体化」——トップ10入りを果たしたマジョルカが、次に見据える目標とは

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2023年7月14日、スペイン1部ラ・リーガのRCDマジョルカと日本の株式会社タイカが、グローバルメインスポンサー契約を2年間延長することを発表しました。

マジョルカはタイカだけでなく、Jリーグの清水エスパルスとも育成を中心とした提携を結んでいます。加えて、かつて大久保嘉人や家長昭博、久保建英が所属するなど、日本にゆかりのあるクラブとしても知られています。

そのマジョルカで会長を務めるのが、かつてプロのテニスプレーヤーとして活躍し、現在はNBAのフェニックス・サンズの共同オーナーでもあるアンディ・コールバーグさんです。

タイカとの契約発表会見に合わせて来日した同氏に、トップ10入りを果たした昨季を経て次に掲げる目標、現在進んでいるホームスタジアム改修の目的、経営者として大切にし続ける考え方などについて、お話を伺いました。

悪夢の3部降格。そこから6年で果たしたトップ10入り

──まずは2016年にRCDマジョルカへの投資を決めた理由について教えてください。NBAチームの共同オーナーを務めてきたコールバーグさんが、サッカークラブに関心を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

コールバーグ:NBAのチームが持つ可能性と、同じものをヨーロッパのサッカークラブにも感じたからです。

まずはバスケットボールとサッカー、それぞれスポーツとして共通する点がいくつもあります。たとえば、どちらも男女ともに世界中でプレーされており、プロのリーグも数多く存在している。また若い世代を中心に、幅広い年齢層の人々にプレーされている点も特徴です。

ビジネスの観点からも、NBAと同じくヨーロッパサッカーは大きなポテンシャルを秘めています。私が投資をはじめた当時は、グローバルに市場を拡大し続ける最中にありました。放映権をはじめ、上げられる収益もより大きなものになっていくだろうと確信していました。

──実際に、マジョルカは年々着実にステップアップされている印象です。何より、昨季はクラブ史上最高の9位でフィニッシュしました。

コールバーグ:おっしゃる通り、少しずつですが確かに成長できていると感じます。

私がクラブに携わるようになった時から、競技とビジネス、双方の面でラ・リーガのトップ10に入りたいと目標を掲げてきました。昨シーズンはそのうち、競技においてのトップ10入りを果たすことができた。ただ正直なところ、こんなにも早く実現するとは思ってもいませんでした。

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──ご自身にとっても想定以上のペースで、チームは力をつけてきていると感じますか?

コールバーグ:はい。2017年には3部にまで降格してしまったこともあるチームです。あのシーズンは、私にとっても最も苦労したシーズンでした。

ただそこから立ち直り、2019年に1部昇格が決まった時の喜びはひとしおでしたね。経営者として、私の人生の中で最も誇りを感じた瞬間の一つです。

──今後は安定してトップ10以上の成績を収めることが、クラブにとっての目標の一つになるでしょうか。

コールバーグ:そうですね。毎シーズン安定的に勝ち点を50〜55を積み上げられるようになれば、一貫してトップ10に顔を並べられるようになるでしょう。その実現は、マジョルカがラ・リーガを代表するクラブの一つに発展することを意味するはずです。

観戦だけでない、1年中楽しめる都市型スタジアムを目指す

──次なる目標を達成するために、会長として直近特に注力したいことはありますか?

コールバーグ:まずはより多くの素晴らしい選手たちに、仲間になってもらうこと。自分だけではなくチームの勝利のために戦える選手、チームに貢献するという強い思いを持った選手が必要になります。

また、選手だけでなく監督やコーチが果たす役割も非常に重要です。スポーツディレクターや経営陣とも足並みを揃えて、同じ視座を持って取り組めるスタッフたちと活動を共にしたいと考えています。

もちろん、ビジネス面での成長を目指した投資や提携にも、さらに積極的に取り組んでいきます。直近では、2024年のオープンを目標にホームスタジアム(エスタディ・デ・ソン・モイシュ)の改修を進めています。この改修により、スタジアムはより都市と一体化した場所へと生まれ変わる予定です。

──都市と一体化したスタジアムとは、具体的にどのようなものを想定しているのでしょうか?

コールバーグ:サッカー観戦以外のさまざまな用途で、サッカーファンに限らず利用できる場所へと生まれ変わる予定です。

ソン・モイシュに限らずほとんどのサッカースタジアムにおいて、ホームゲームが行われるのは年間20試合程度。私たちは都市のさまざまなステークホルダーと連携して、試合がない日も含めた365日、街の人々に有効活用してもらえる場所をつくりたいと考えています。

企業のオフィスを内部に構えられるようにしたり、レストランで食事を楽しめるようにしたり、スポーツバーで交流ができるようにしたり。スタジアムを訪れれば、サッカーに限らず、常に何かしらのアクティビティと巡り会える状態をつくりたいです。

世界での成功のため、まずは日本で時間をかける

──マジョルカが次の目標達成へ進む上で、日本のマーケットはどのような存在になりうるでしょうか?

コールバーグ:私たちにとって、数あるマーケットの中でも最も大切な存在の一つと位置付けています。だからこそ、今日もこうして来日することに迷いはありませんでした。

今回、タイカとのパートナーシップを延長できたこともとても嬉しいです。歴史ある、日本を代表するグローバル企業の一つですし、これまで数年間にわたり、タイカとは素晴らしい関係性をつくり上げてきたと感じるからです。

また、日本国内に向けたソーシャルメディアでの発信や、ファンエンゲージメント獲得にも力を注いできました。たとえば、「スポーツナビ」におけるオリジナルコンテンツへのアクセス数も増え続けています。今後も引き続き、日本に向けたオリジナルの発信を積極的に行っていく予定です。

──マジョルカに限らず、今やヨーロッパの多くのクラブが世界進出を図っている時代です。グローバルで愛されるクラブになるために、重視していることはありますか?

コールバーグ:焦ることなく、まずは一つの国や地域へしっかりと投資を行うことが大切だと考えています。

おっしゃる通り、スペインだけでなく、ヨーロッパのさまざまなクラブがグローバル規模で存在感を高め、たしかなブランドを築いていきたいと意気込んでいます。一方で、その考えを実現するための時間や投資が不十分なクラブもまた、あるのではないかと思っています。

だからこそ、私たちはまず日本で成功を収めるために、じっくりと時間をかけながら、色々なかたちでの関係づくりを継続してきました。タイカや清水エスパルスとのパートナーシップもその一部。世界中でいきなり存在感を発揮するのは難しいからこそ、一つひとつの機会に十分注力していきたいと考えています。

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──コールバーグさんはこれまで、高齢者向けヘルスケア事業の経営にも長く携わってきました。また、経営者になる以前はプロのテニス選手として活躍した経歴をお持ちです。それらの経験は、いまマジョルカの経営を担う上で活かされていると感じますか?

コールバーグ:もちろんです。さまざまなことが活かされていますし、本質的に大切なことはどんな活動をするにせよ、共通していると感じます。

私は経営において大切なことは、何よりもまず良い人材を雇用して、組織として適切なビジョンと目標を設定して、働く人々にそれを信じてもらうこと、そのために一人ひとりに必要な力を与えることだと考えています。高齢者向け事業でも、バスケットボールチームでも、サッカークラブでも、どんな事業や組織を率いるにしても、常に肝心なことはいま挙げたことだと信じているんです。

また、テニスプレーヤーとして学んだことも、経営者としてのキャリアに大きな影響をもたらしています。たとえば、試合前に入念に準備することの重要性や、対戦相手をよく知ることなど・・・。これらはビジネスにおいて、重要な交渉の前には準備を怠らないこと、競合についてしっかり分析することなどに置き換えられるものです。

──そうした経験も活かしながら、来季は特に何に注力していきたいと考えていますか?どのようなシーズンにしたいかと合わせて、聞かせてください。

コールバーグ:繰り返しになりますが、会長としての私の役割は素晴らしい人材を仲間にし、選手やスタッフ、スポーツディレクター、経営陣の足並みと目線が揃った状態をつくることです。ビジネスを含めた目標、その先にある目的を常に示し、全員が同じ方向へ向かっていけるように、あらゆる面で力を尽くしたいです。

そうすれば、昨シーズンのように自ずと結果はついてくるものだと思います。野心は十分にあるからこそ、サポーターも含めた全員で一緒に力を合わせて進んでいきたいです。

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