『MIU404』を読み解く4つの数字。2→3→1→0の法則とは?
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『MIU404』を読み解く4つの数字。2→3→1→0の法則とは?

2024.08.18 16:00

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綾野剛と星野源がバディを組んで人気を呼んだ、2020年の刑事ドラマ『MIU404』。ドラマ『アンナチュラル』と並び、今夏公開の映画『ラストマイル』と世界線がつながる、監督・塚原あゆ子×脚本家・野木亜紀子コンビによるシェアード・ユニバース作品として再び注目を集めている。

物語の舞台は、警視庁の働き方改革によって刑事部機動捜査隊に新しく誕生した第4機動捜査隊、通称・4機捜。そこに配属された、野生の勘を頼りにルール無視で暴走する刑事・伊吹藍(綾野剛)と、「規則は必要だから」と冷静に彼を諭す、抜かりのない元捜査一課の敏腕刑事・志摩一未(星野源)がバディを組み、さまざまな事件の犯人を追いかける!

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©TBSスパークル/TBS

現実に起きている社会問題を巧みに織り込んだスリリングな展開と、ディテールにこだわる巧妙な脚本と演出が見事に噛み合った本作。そこに伊吹と志摩の絶妙なバディ関係や俳優陣の役へのハマり具合も相まって、「何度でも観たい!」と多くのリピーターを生んでいる。ここでは、ドラマを紐解くキーポイントになる数字が、実はストーリーを追うごとに変化していることに着目してレビュー。2→3→1→0の法則を知れば、よりドラマの緻密さに気づき、そのヤバさにおののくこと間違いなし!

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©TBSスパークル/TBS

逃げる犯人と追う警察。当たり前だが、これは刑事モノの定型である。

『MIU404』は、舞台こそ定型の捜査一課ではなく、初動捜査を行う「機捜」ではあるのだが、毎回、伊吹と志摩によるコードネーム“404”のコンビが、逃げる犯人を追いかけるというスタイルはほかの刑事ドラマと変わらない。いや、それどころか「機捜」が舞台だからこそ、「逃げる者を追う」という行為が特化されて描かれている。

その視点でこのドラマをよくよく見返してみると、「追いかけっこ」あるいは「徒競走」のモチーフが、各話におそらくは恣意的に散りばめられていることに気づくはず。それは「逃げる犯人を追う」という行為に限らずだ。

それが一番あからさまになっているのは、第3話。これは元陸上部の高校生たちが警察を翻弄するために「追いかけっこ」のゲームを仕掛けるという、そのまんまな展開になっている。ちなみに、この回から登場する元陸上部の成川岳(鈴鹿央士)は、物語後半の軸となる菅田将暉扮する極悪反社キャラ・久住との攻防劇のキーマンともなる人物。

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©TBSスパークル/TBS

また、脚本のからくりが感涙モノなのは、第4話だ。

4機捜の隊長・桔梗ゆづる(麻生久美子)がかつて追っていた闇カジノ事件の関係者で、さらにこの回の殺人未遂事件の被害者にして、会社から大金を持ち逃げして逃げた犯人でもある女性・青池透子(美村里江)の逃走劇。彼女が趣味の手芸で作ったぬいぐるみは「うさぎ」だった。それは彼女の“つぶったー”(この世界線での架空のSNS)でのアイコンにもなっている。そして、チラッとしか映らないのだが、その横には「カメ」のぬいぐるみもいた。

モチーフはもちろん「うさぎとカメ」。第4話のストーリーは、うさぎが逃げる話だ。うさぎ=青池だとしたら、最後にうさぎを追い抜いていった「かめ」がなんだったのか。

それに気づいた瞬間に、涙がぶわー!である。彼女はかけっこには負けたのかもしれないが、人生の最後の賭けには勝ったのだ。切なすぎる…。

さらに大きな目線でドラマを見つめると、第7話までのテーマは「逃げる志摩と追う伊吹」という構図も浮かび上がる。バディを組んで早々、志摩は「俺は自分も、他人も信用しない」と言い放つ。伊吹は、そんな志摩に自分を信じてもらおうと、やっきになって彼の過去を「追いかける」ことになるのだ。

ここでも「うさぎとカメ」のモチーフがぼんやり浮かび上がってはこないだろうか。俊足の伊吹がうさぎなら、殻に閉じこもって出てこない志摩はカメ…。追う側の伊吹が俊足という設定は、このテーマを描くために必然的にそうなったと言ってもいいような気もする。

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©TBSスパークル/TBS

そして、第8話では、その伊吹の恩師・ガマさんこと蒲郡慈生(小日向文世)に絡む過去も明かされ、どうして伊吹が「逃げる」志摩を追いかけてまで自分を信じてもらいたかったのかが明らかになる…。ちなみに、ガマさんと伊吹は追いかけっこではなくキャッチボールをしているのもどこか示唆的。


さてここからが本題だ。2→3→1→0の法則。

このドラマは刑事モノではこれまた定型のバディもの。バディといったら、その示す数字は「2」である。

この「2」が前半から中盤のキーとなる数字。これまたよくよく見返してみると、第7話までの事件でキーポイントになる人物が、ことごとく2人一組になっているではないか。

第1話は、2人のあおり運転犯。さらに祖母と孫の2人組も出てくる。第2話は、親を恨む犯人と亡き息子を思い続ける父母という組み合わせ。第3話は、対称的な道を進むことになる元陸上部の男子・成川と勝俣奏太(前田旺志郎)。第4話は、同じ違法カジノ摘発事件に絡んでいながら、違う道に進んだ青池とハムちゃんこと羽野麦(黒川智花)…。

見事に「2」という数字が物語の中に巧妙に散りばめられている。第7話では、ちょい役のベビメタファンの女子すら2人1組で登場するというディテールへのこだわりにも脱帽である。

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©TBSスパークル/TBS

しかし、様相が変わってくるのが第8話だ。ここでキーとなる遺体は、2体ではなく3体。しかも、ご丁寧に指が「3」本切断されているという設定だ。

そして、伊吹もまた、ガマさん、ハムちゃん、そして自分の「3人で暮らそう」と言い出したりする。

振り返ってみると、これまでも2人一組に+1人の構図があるところで何かが起こる…という展開ではなかったか?

勝俣+成川の「2」に、勝俣の彼女で元陸上部マネージャー・真木カホリ(山田杏奈)を加えた「3」。

伊吹+志摩の「2」に、志摩の元相棒・香坂(村上虹郎)を加えた「3」。

桔梗+桔梗の息子・ゆたかの「2」に、ハムちゃんを加えた「3」。

こうして見ると「3」の数字でクローズアップされるのは、物語を不穏にする要素。実は、「3」が不吉な数字ということは、第5話にベトナムのビール「333」が出てきたくだりで、劇中ですでに説明されていた。それにあとから気づいた瞬間、おののいてしまった…。


そして、第9話から描かれる、物語最大の「追いかけっこ」への布石ともいうべき「3」の構図は…、桔梗+ハムちゃんの「2」にハムちゃんを執拗に追う謎多き悪人・エトリを加えた「3」!

実は、ここにはあえて書かないが、この展開になってから劇中にちらっと出てくる数字はやけに「3」が多い。ディテールにこだわる野木×塚原コンビ、それがわざとじゃないわけがない!

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©TBSスパークル/TBS

そして、追いかける対象がエトリから久住へと移り変わる展開の中、凸凹ながらも次第に信頼を寄せ合うバディになっていた伊吹と志摩の「2」の関係性にも変化が訪れる。

ここから出てくる数字は「1」(あるいは「11」。これは「1対1」の暗喩かも)。

そもそも最大の敵・久住という存在が一匹狼。(とはいえ、成川との関係は『ファウスト』のメフィストフェレスとファウストの関係性で「2」でもあったが)。

さらに、ある選択ミスによって伊吹と志摩の「2」の関係性はバラバラになり、互いを信じなくなった彼らは、単独で行動し始める。

この展開になってからちらっと出てくる数字にも着目せよ。筆者は、それを発見して「おお!」と声が出てしまった。

人生の「ピタゴラ装置」の上で追って追われて、ついに寄り添って走るようになった伊吹と志摩だが、ここで分岐点を迎えてしまうのか?

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©TBSスパークル/TBS

最後の数字は「0」。久住との追いかけっこにすべての決着が付く最終話のタイトルは「ゼロ」なのだ。

“404”は、その数字のダブルミーニングでもある「Not Found」の存在になってしまうのか?それはぜひ、ドラマを見て確認してほしい。

映画『ラストマイル』のシェアード・ユニバース作品『アンナチュラル』のレビューはこちら

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