“パーフェクトレコード”村田昴、タイトル初挑戦!「WHO'S NEXT Vol.24」対戦カード発表!
10月5日開催のボクシング「第24回WHO'S NEXT」。村田昴ほか、全5試合の注目ポイントをレポートする
11月3日、C級ライセンスボクサーによる「東日本新人王トーナメント」決勝戦が行われ、各階級の優勝者が決定した。これは、プロボクサーがボクシング人生で初めて手にする“タイトル”。ゆえに、どの試合も手に汗握る熱い攻防ばかりで、後楽園ホールのボルテージは最高潮に!本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!
赤井英五郎は、“浪速のロッキー”赤井英和を父に持つボクサーファイター。準決勝では、“俳優”伊吹吾郎の孫、伊吹遼平を撃破し決勝に進んだ。対するマッチョパパ一基は、ボディビルの一種フィジークから、30歳でボクシングに転向した異色のオールドルーキー。
実は、この両者の対戦は昨年7月以来の再戦。その時はマッチョパパのデビュー戦で、赤井が2回TKO勝利している。1年4ヵ月の時を経て、東日本新人王決勝の舞台で、両者の実力がどう変化したのか気になるところ。
試合は、赤井がガードを高く上げプレッシャーをかける静かな立ち上がり。マッチョパパの右ストレートもしっかりブロック。これまでは、初回から被弾覚悟で、打ちつ打たれつの展開が多かった赤井が、ディフェンス重視の戦法で進化を感じさせる。これだけガードを固めて冷静に攻められると、マッチョパパも攻撃の糸口を見つけにくい。
2回以降、攻撃のギアを上げた赤井は、巧みに上下を打ち分け、時に強烈なボディを捻じり込み、マッチョパパのスタミナを削る。マッチョパパは下がりながら力を溜め、起死回生の右の一発を狙うが、やや単発。最終回は両者、死力を尽くしての打ち合いとなったが、赤井が手数、有効打ともに上回り判定勝利、東日本新人王を獲得した!
赤井選手、KOこそ逃したが、攻撃力はもとより、ディフェンス技術の向上もアピールできたナイスファイトだった!何より会場の大歓声が、人気と期待を表している!全日本新人王戦が今から楽しみだ!
敗れたマッチョパパ選手も、苦しく厳しい状況の中、最後までリングに立ち続けたガッツは素晴らしかった!
長身から放たれる左リードジャブで突き放し、リズムに乗ると打ち下ろしの右ストレート、カウンターのボディが冴えまくる加藤大河。スタイリッシュなボクシングで決勝まで上り詰めた。そして、須賀大地はアゴ髭とメガネがトレードマークで、30歳を過ぎてからのプロデビュー。ボクシングスタイルはトリッキー、だが強打を持っているファイター。そんな、正統派VS変則型の興味深い組み合わせが実現した。
注目の一戦は、加藤が美しいフォームからジャブ、ワンツーで突き放そうとすると、須賀は、ガードを外から回り込むようなフックをボディに放つ。ややオープンブロー気味ではあるが、リングサイドにいるとドスン、ドスンと重たい音が響いてくる。どうやら見た目以上に強いパンチのよう。加藤は長いリードジャブで立て直そうとするも、独特の軌道で飛んでくる須賀のパンチに手こずり、徐々にスタミナを削られる。須賀のフックは、決してスピードがあるわけではないが、絶妙なタイミングと軌道で、加藤のガードの隙間に突き刺さる。加藤はクリーンヒットを奪えぬまま試合終了。決定的な場面はなかったが、有効打が上回り、須賀が僅差の判定勝利を呼び込んだ!
須賀選手のビクトル・ラバナレスのようなスタイルは、教えられて出来るボクシングではない。その、型にはまらないスタイルで、どこまで勝ち続けるのか見守りたい!
加藤選手、この試合は惜敗したが資質、能力に偽りはない!
国体準優勝の実績が裏付けるテクニックで、安定感抜群なボクシングが持ち味の川村英吉。準決勝では1回KO勝利を収め、倒すパワーもあることを証明したアマチュアエリート。まだプロ2戦のキャリアながら、その落ち着きは貫禄十分。
対する大場翔は、スピーディなジャブと粘り強くしぶとい試合運びで無敗をキープする実戦型。テクニックだけではなく、駆け引きなら勝負はわからない。
試合は、川村の強いジャブが冴えわたる。大場は長いジャブとコンビネーションでリズムを作るが、固いブロックに阻まれる。逆に川村は、左ボディを突き刺し、連打を交えて左フックを打ち込む!まるでカネロ・アルバレスのような攻撃!一瞬、大場は棒立ちになる。その大場も体幹の強さを活かした角度のあるアッパーやフックを放つが、固いガードは崩せない。最終回、大場は川村のジャブに右ストレートのカウンターを狙うがヒットせず、プレッシャーをかけ続けた川村が判定勝利した。
川村選手の盤石な試合運びが印象に残った一戦。ほぼフルマークの完勝。パンチの強さも感じられたなか、最後まで食い下がった大場選手の健闘を称えたい!
重量感のある右ストレート、右フックが最大の武器で、早いラウンドでの一撃KOで試合を決めてきた西畑直哉。対戦する菊池音央は、アイドル“菊池風磨”の弟ということで話題先行。しかし、恵まれた体格と運動神経でポテンシャルは未知数。ぐんぐん成長している過程での一戦となった。これは勝手な憶測だが、共に決勝まで駒を進めた者同士とはいえ、菊池へのひと際大きな歓声を聞いた時、西畑は絶対負けたくない、という意地と覚悟が生まれたのではないかと想像する。
そして試合は、西畑が積極的に攻撃する。コーナーに詰めてワンツー、接近してボディなどボクシングスキルの違いを見せつけるように攻め続ける。体格差をものともせず攻撃してくる西畑に対し、菊池は防戦一方でクリンチで逃れるのがやっと。ボディを集中打されたときは、腰がくの字に折れ曲がる。しかし、試合が進むにつれて菊池が盛り返し始める。西畑のストレートの返り際にカウンターを合わせる。まるで、ラウンドごとに成長しているかのよう。とはいえ、試合を通して主導権を握り続けていたのは西畑。手数で押し切り、大差の判定勝利で決着した。
西畑選手、ちょっと力が入りすぎていたかもしれないが、自分のボクシングを貫けたのではないだろうか。菊池選手にとっては、敗れたが大きな自信になる一戦だったのでは。
下村佳輝は、フィジカルの強さを活かした先制攻撃で1つの引分けを除き、4勝全てKO勝利という生粋の倒し屋。甘いマスクとは裏腹に、その攻撃スタイルは凶暴そのもの!
一方、山内雄輔は、総合格闘技のキャリアもある無敗のファイター。頑丈で屈強な体格だが、しなやかな身のこなしで相手の攻撃を無効化する試合巧者。ファイター同士の対決の行方はいかに!
試合はゴングと同時にバチバチの打ち合いに!下村の固いパンチに対して山内のスナップの効いたパンチの交換。お互いにスタミナ配分関係なしの連打の応酬で、否が応でも会場は湧き上がる!途中、下村の右ストレートに山内が吹っ飛ばされ、スタンディングダウンを取られるが、逆に反撃するメンタルの強さを見せる。ここで判定決着はないなと確信した。
そして2回、さっきよりも激しい打ち合いの中で、再び下村の右ストレートがヒットし、山内が前のめりにダウン!その場でレフェリーが試合を止めた。格闘技では、前のめりにダウンするときは脳へのダメージが大きいとされている。なので、まだ2度目のダウンだったがレフェリーストップは素晴らしい判定だった。
どっちが倒れてもおかしくない乱打戦を紙一重で制した下村選手の破壊力は圧巻だった!しかし、山内選手という強敵がいてこそ導かれた結果だった!
これまで100ラウンド以上、井上尚弥選手のスパーリングパートナーを務め、その完成されたボクシングスタイルから、今大会最も注目されている選手が山川健太!強引に攻め込むわけではなく、相手の動きを読み、コントロールし動かし、最終的には必殺の右ストレートでフィニッシュする老獪なテクニックは、4回戦レベルを超えている。
一方、牧田健之介は粗削りでワイルドなファイター。力いっぱい振り切るパンチは、自身のルーツでもあるフィリピンの名ボクサー、パッキャオやカシメロを彷彿とさせる。
この全勝同士の対戦は、意外な結末を迎える!
初回、恐ろしく静かな立ち上がりで、両者ほとんど手を出さず様子を見る。ただ、細かな駆け引きが感じられ、ヒリヒリとした緊張感に包まれた3分間。お互いに相手の能力をインプットするのに費やしたのか。そして2回、山川が上下にリードパンチを散らしはじめ、距離が詰まった瞬間、牧田のワンツースリーがヒット!特に3発目の左フックは、ドンピシャのタイミングで顎を打ち抜き、山川はばったりと大の字に倒れ、レフェリーはカウントも取らず即座に試合終了!山川の良さが出る前に、牧田が一瞬のワンチャンスをものにした。
正直、山川選手の敗戦は全く想定していなかったので、現実を受け入れることに少し時間がかかった。しかし、そんな評価の高い山川選手を打倒した、牧田選手を発見できた収穫はとても大きい!かつての名チャンピオン、パッキャオやドネアもビッグアップセットを繰り返し、トップ選手に上り詰めた歴史がある。
これで牧田健之介選手が、ボクシングファン注目の“超重要”選手の一人に躍り出たことに間違いはない!
準々決勝、準決勝と2戦続けてサウスポー相手にKO勝利し、勢いに乗る鳥井士恩。対する須藤大和は、パワーに頼らずパンチのタイミング、的中率でダメージを与える全勝のサウスポー。この試合は、サウスポーキラー対全勝サウスポーであり、オーソドックス対サウスポー、ファイター対テクニシャンと見どころ満載の今大会屈指の好カード!
試合は、フィジカルの強さを活かしボディを打ちながら接近する鳥居に対し、須藤も引かずに踏みとどまりカウンターを狙う。序盤は、鳥居のパワーにやや押されていた須藤だが、徐々にタイミングが合いだし、ガードの間にパンチが入り始める。迎えた3回、コーナーに詰められた須藤は、鳥居の連打に左ショートフックをカウンターを合わせ、膝をつかせるダウン!立ち上がった鳥居に、絶対倒し切りたい須藤は猛攻をしかけ今度は右フック一閃、2度目のダウンを奪う!ここで勝負あったかと思ったが、鳥居は勇敢にも立ち上がる!ここに絶対に試合を諦めない、鳥居の気持ちの強さが伝わってくる。しかし、再び連打を浴びレフェリーストップ!
鳥居選手の目を見張る攻撃力と、それを攻略した須藤選手のテクニックを堪能できた、密度の濃い3ラウンドだった!
ともに優勝候補に上がっていた選手を打破し、混戦のバンタム級トーナメント決勝に進出した三浦良斗と榊原祐弥。三浦は準決勝で見せたシャープな右ストレートでダウンを奪った印象が強く残る。榊原はトーナメントを通して一試合ごとに力を付けてきた様子。どちらが、勝ってもビッグサプライズな一戦は、1回で決着する!
三浦は試合開始早々、サウスポーの榊原に対し臆することなく、得意の右ストレートを打ち込む。この挨拶代わりの右がストンとクリーンヒット。これに手応えを感じた三浦は、右ストレートをリードパンチにし、榊原に揺さぶりをかける。その流れを変えようと榊原が出した無防備な右フックと、三浦の踏み込んだ右ストレートが交錯!榊原は膝から崩れ落ちテンカウント。あまりに唐突なKO劇に、喜びを爆発させる三浦をポカンと眺めていた。一瞬、バッティングで倒れたのかなと思い言葉が出なかったが、VTRを見返すと、三浦の右ストレートがガツンとヒットしていた。
あっけらかんと大仕事をやり遂げた三浦選手、今回は敗れた榊原選手、両者の伸びしろを感じさせる試合だった!
まだあどけなさが残る19歳、佐藤祐は手数とスタミナのあるボクサー。対する吉成亮人は、ワイルドな左フックで快進撃を繰り広げてきたファイター。あまりに対照的な両者の対決は、一進一退の痺れるような互角の攻防に!
接近して強打を打ち込みたい吉成は、ガードを固めながらボディから攻め込むも、佐藤はジャブと豊富な手数で距離をキープし、インターバルで笑顔をみせるなどリラックスしている様子。吉成も迫力のある左フックとコンビネーションで徐々に距離を詰め、得意の接近戦に持ち込む。最終5回、両者足を止めての打ち合いに後楽園ホールの歓声もヒートアップ!佐藤の手数がわずかに上回り、1ポイントという僅差の判定で勝敗が決した。
敗れた吉成選手もアグレッシブな試合運びで評価を下げる内容ではなかった!佐藤選手と良きライバルとして高めあって欲しい!
これまで6戦で1勝の山田龍斗と、7戦6勝の高熊龍之介が対決する異例の決勝戦。山田の1勝は、このトーナメントの準決勝で上げた初勝利。2連勝で優勝を掴みたい。そして高熊は、昨年のトーナメントでは優勝候補と目されながら準決勝で敗退、今年こそはと燃える。
試合は、長身の高熊がプレッシャーをかけて山田を追う展開。山田は下がりながらもフットワークを活かしシャープなジャブで応戦するが、高熊の強烈なボディ攻撃と鼻血でスタミナを削られ、ダウン寸前まで追い込まれる。しかし、驚異のタフネスで最後までリングに立ち続けた。
高熊選手の放つ左ボディは、全日本でも大きな武器になりそう。判定は大差がついたが、見応えのある好ファイトだった!
中間距離から飛び込むように強打を打ち込む超攻撃型のファイター、磯金龍と、高校ボクシングの名門、武相高校出身で基本に忠実なボクシングが信条の早坂峻との対戦。
磯金のヒラヒラしたトランクスは、かつての名ボクサー、ヘクター・カマチョやナジーム・ハメドを彷彿とさせる。彼らは大胆な動きとスピードでド派手なボクシングを展開し、観客を魅了していたが、磯金も豪快なパンチで会場を沸かせた。特にサウスポーから繰り出されるアッパーは、とんでもない角度で飛んでいた!
一方、早坂も相手の大きな動きに惑わされることなく、必至にくらいつき手数を止めることはなかったが、最後まで捉えることが出来なかった。
磯金選手のスタミナ度外視で強打を打ち込むボクシングは、華があり釘付けになる!
北野武郎は、元日本ランカーの父から指導を受けるサラブレッド。センスあふれるテクニカルなボクシングで優勝候補筆頭のサウスポー。一方、杉浦義はプレッシャーをかけて変則的な右ストレートで勝ち上がったダークホース。
このボクサー対ファイターの対決は、いつもオーソドックス構えの杉浦が、サウスポーにスイッチを繰り返す作戦で北野のペースを乱す。結果的に杉浦は、フットワークとジャブでアウトボクシングしたい北野を、接近戦での打ち合いに巻き込む事に成功した。
しかし、北野は打ち合っても強かった!持ち前の当て勘の良さでクリーンヒットで上回り、判定勝利をもぎ取った。
試合中でもプラン変更できる引き出しを持っていた北野選手に、杉浦選手は一歩及ばなかった。
全試合を終えて、12名の東日本新人王が誕生した。苦しいトレーニングを乗り越え、まずは己に勝ち、そして試合に勝った新王者たち。勢揃いした彼らの清々しい笑顔を見て、なんとも誇らしい気持ちになった!
そんな彼らの健闘を称え、敢闘賞、技能賞、最優秀選手賞が発表された。
【敢闘賞】赤井英五郎(帝拳)
【技能賞】須藤大和(伴流)
【最優秀選手賞】牧田健之介(RK蒲田)
次は全日本新人王!そして、未来の世界チャンピオンを目指せ!
U-NEXTでは、今回レポートした『東日本新人王決勝戦 WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE BOXING 特別編』を2023年12月1日まで配信中!
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