『アンチヒーロー』最終回。「共に、地獄に堕ちましょう」稀に見る傑作、その結末は?
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ“な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』最終回をレビュー
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ”な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』第9話。明墨が、桃瀬からの想いを繋いで新たな真実に近づくが、やっと見えてきた光明を前に、明墨法律事務所にまさかの裏切りが突きつけられる──!
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
伊達原(野村萬斎)に先を越され、最後の頼みの綱だった“志水(緒形直人)のアリバイを示す証拠動画”を失ってしまった明墨(長谷川博己)。志水を訪れ謝罪する明墨に、志水は落胆するどころか、明墨のおかげで再び紗耶に会えた感謝を口にした。
だが明墨は、これ以上の幸せを受けるべきだと語気を強め「私はあなたを無罪にすると約束しました。どうかあと少し!時間をください」と訴えかける。
明墨は、もう一度志水の冤罪を晴らす糸口を見つけようと、糸井一家殺人事件の資料を開いた。
12年前、糸井一家は嘔吐や下痢を訴えたのちに死亡。検死により高濃度のタリウムが検出されたため毒殺事件と断定された。事件前夜に糸井家で食事会が開催されていたとの目撃証言があり、その客人が犯人だとして捜査が進んだが、毛髪や皮脂など犯人を特定する証拠は何も出なかった。そこで、糸井家と親交があり、西千葉建設の横領事件にも関与があった志水が容疑者として浮上し、逮捕されたのだ。
対して志水は、事件前夜は娘・紗耶(近藤華)がなくしたぬいぐるみを探していたと供述し無罪を主張したが、志水の狂言として警察には聞き入れられなかった。
赤峰(北村匠海)は、もう一度事件を洗いなおそうと、5年前まで事件を追っていた元検事・桃瀬礼子(吹石一恵)の実家を訪れた。調査結果をまとめたファイルは桃瀬が直接明墨に託していたが、少しの資料と、桃瀬の日記が残されていた。
その日記には、糸井一家殺人事件を調べる様子が克明に書かれていた。
桃瀬は、上司・伊達原が糸井一家殺人事件の証拠を隠滅して志水を起訴し、その後出世したという噂を聞き、事件を追い始めた。その噂の発信元だという千葉県警の刑事から、志水のアリバイを示す動画の存在を聞き、志水の冤罪を確信したのだ。
桃瀬は紗耶のいる保護犬施設に出向き交流を図り、志水の再審を目指したが、そんな折に地方への異動を命じられる。あり得ないタイミングでの異動辞令に、自分が真実に近づいているからこそ排除されようとしていると察し、一層調査に力を入れようと動いたが、そんな矢先に病に倒れてしまった。
死を覚悟した桃瀬は明墨を呼び、「志水さんの冤罪は間違いない。明墨君には、志水さんを自白させた責任がある。一度でいいから、目を通して」と、調査結果をまとめたファイルを託した。
そこには、桃瀬が明墨に宛てた手紙が差し込まれていた。
「志水さんを救って。こうなってみてわかる。命は有限で、尊い。私も、もっと生きたかった。でも、まだ救える命がある。誰ひとり、無実の罪で命を奪われることがないように、その命を奪うのが、司法権力の傲慢であってはならないと、ひとりの検事として強く思います。どうか、私たちが司法の信頼と誇りを取り戻せますように」。
病に震える文字には、明墨にも勝る、桃瀬の正義の意志が溢れていた。
現在の明墨法律事務所。
明墨は、赤峰が持ち帰った日記を読んでいた。そして、いつも引き出しの一番上にしまっている桃瀬からの手紙を手に取った。
日記の最後のページには、手紙の続きが書かれていた。
「その未来を、私もこの目で見たかった。明墨君と一緒に」。にじんだ“一緒に”の文字。桃瀬の涙でにじんだその文字の横に、明墨の涙が落ちる。
明墨は「私もだ。桃瀬」とつぶやき涙に暮れた。
明墨は、桃瀬の意志を継ぎ、志水に背負わせてしまった冤罪の責任を背負い、もう一度戦いに挑もうと動き始める。
明墨は瀬古判事(神野三鈴)の元を訪れ、裁判ですべてを話すよう願い出るが、瀬古は「ムダよ。私は何も知らない。伊達原はね、自分のルールから外れた人間を絶対に容赦しない。あなたももうすぐ潰される」と取り合わない。
そして後日。瀬古の予言が当たるかのように、週刊誌で一斉に明墨をたたく記事が掲載された。「緋山(岩田剛典)の犯罪の証拠を違法に隠滅し、犯罪を揉み消した」「志水死刑囚の娘・紗耶と交流を持ち、個人的な感情で冤罪を主張している」など、伊達原がメディアを使って印象操作を始めたようだ。
明墨がメディアで叩かれ動けない中、赤峰は志水に面会し、逮捕されてから留置所で志水が書き溜めた被疑者ノートを入手した。連日10時間を超える取り調べが行われたことや、食事も与えられず疲弊していく様子が書かれ、妻の事故死や紗耶が児童養護施設に入ったことが知らされると、志水は「紗耶に会いたい」と繰り返し書いた。
赤峰が「言葉が出ないですよね」と痛々しい記述に胸を痛める一方で、紫ノ宮(堀田真由)がある記述に着目する。取り調べを担当した刑事が、志水に話した糸井一家の死亡時の様子として、“眼瞼下垂に弛緩性麻痺”と語ったとあるが、糸井一家から検出された毒物・タリウムにはそのような反応が見られないはずだと言うのだ。そして、警察側の調書にもそのような表記はない。
赤峰は、明墨がいつか言った「世の中の発見や発明はすべて、推測や仮説の上に成り立っている」という言葉を反芻すると、ひとつの仮説にたどり着いた。
死亡時の糸井家の遺体には、タリウムからは起きない反応が見られたが、千葉県警の科捜研の薬毒物鑑定の結果、毒物はタリウムだったとされた。タリウムは、志水が会社で入手し得る毒物だったため、「誰かが意図して毒物の鑑定結果を書き換え」、志水の犯行であるように見せるための証拠を捏造したのではないかという仮説だ。
明墨はこの仮説を聞くと、伊達原が科捜研の担当者に指示を出して鑑定結果を書き換えさせたと推測を付け足した。
桃瀬の残したメモのヒントにも助けられ、明墨たちは実際に使われた毒物は、タリウムに似た症状を引き起こすボツリヌストキシンだと確信する。これを証明できれば、志水の無罪を証明できるかもしれない──。
明墨は、紫ノ宮とともに倉田(藤木直人)に会いに留置所に向かった。
紫ノ宮が何回面会を求めても会わなかった倉田だったが、明墨も同行すると面会を引き受けた。倉田は会うなり明墨に、「娘をこれ以上巻き込むな!」と怒鳴りつける。一方で糸井一家殺人事件については話す気はないという倉田に、明墨は「伊達原もタチが悪い。娘(紫ノ宮)を人質に取るなんて」と切り出す。
倉田は、志水のアリバイを示す動画の存在を知ったとき、伊達原に公表すべきと意見した。しかし伊達原は、志水の無罪を明かせば、伊達原や倉田が辞任して責任を取るだけでは済まず、志水の家族を崩壊させた責任をマスコミが騒ぎ立て、その追及は家族にも及ぶと示唆した。倉田は、紫ノ宮の将来を思い、伊達原と隠蔽の共犯になることを決めたのだという。
娘を想う父の愛情を吐露する倉田だったが、娘である紫ノ宮はこれに、「ふざけないで!私の将来が何?志水さんは冤罪で、いつ死刑になるか分からない状態にいるんだよ。人の命より大事な将来って、何なの?」と怒りを爆発させた。
倉田は、自分の娘を想い、結果、志水が娘を想う気持ちを踏みにじっていた現実と向き合い、「志水さんには、本当に申し訳ないと思っている」と言うものの、だがもう取り返しがつかないと続ける。
すると明墨が、「人殺し!」と叫び、「そう言われたくないがために、あなたは人を見殺しにしようとしているんですね?」と倉田に問いかける。「おっしゃる通り、今さら後悔したところで、二度と過去は戻ってこない。だが未来は別です。志水さんの命を救うことは、今からでもできる」。明墨の言葉に、倉田は愕然とする──。
倉田は、毒物鑑定の書き換えの可能性に同意を示し、当時の鑑定の担当者を明墨に伝えた。
しかし、その担当者・平塚は3年前に亡くなっていて、再び見えかけた糸口を掴もうと、明墨は当時平塚の助手を務めた人間を探し始める。
その時。明墨法律事務所に警察がやってくる。
「羽木精工社長殺人事件における証拠隠滅罪で、あなたに逮捕状が出ています」。
明墨は逮捕されてしまった──。
明墨逮捕の報を受けて、「かわいそうにねえ」とほくそ笑む伊達原。
「そうですか?当然の報いだと思いますけど」と答えたのは、なんと、明墨法律事務所のパラリーガル・白木(大島優子)だった。白木は、明墨法律事務所に保管してあった緋山の制服を伊達原の元に届けていたのだ。
伊達原は、明墨の裁判は自分が担当すると不敵に笑い、明墨は、赤峰に「あとは任せる」と告げると、逮捕されてしまった……!
決定的な証拠を失っても諦めず、新たな事実を見つけ出した明墨、赤峰、紫ノ宮。だが、再び伊達原が立ちはだかった。そして一枚岩と思っていた明墨法律事務所の白木がまさかの裏切り──?
白木が度々匂わせていた明墨との過去の因縁とは?緋山の殺人の証拠を隠蔽したという確固たる証拠を突きつけられた明墨は、このまま逮捕され、糸井一家殺人事件を戦い抜くことはできないのか?
幾度となく危機を乗り越えてきた明墨も、今度こそ万事休すなのか?逆転の目を見出せない圧倒的な危機とともに迎える最終話に、明墨の勝利を期待したい。志水親子の幸せを見たい。赤峰と紫ノ宮の活躍を祈りたい。白木の裏切りも巧妙な仕掛けだと言ってほしい。そして、沈黙を守り伊達原の横にいる緑川(木村佳乃)に……どうか助けてほしい!
第9話はこちらから
最終回予告編はこちらから
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