「固唾をのんで見守る」とはこのことか、と思った日曜劇場『御上先生』(TBS系)第4話。
これまでは心をえぐる台詞や、ふと自分の人生を振り返るやりとりが多かった本作だが、今回に限ってはそれに加えて違ったアプローチもあり、目が離せない回だった。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
隣徳学院3年2組の担任・御上孝(松坂桃李)の教えは当初から一貫している。彼は、テストや入試に必要な「答え」だけを提示しない。その答えを導き出すために必要な道のり、たとえ答えがなくても思考する大切さを説いている。
「考えて」。御上の言葉を聞くと、これまでボヤけていた視界が広がって、新たな境地に行けた感覚になる──。
東雲温(上坂樹里)は、近日行われる隣徳祭で、クラスメイトに自主企画をやることを提案。教科書検定について展示がしたいと想いを述べた。
それを知った御上は、帰国子女の倉吉由芽(影山優佳)に、アメリカでは原爆投下のことをどう教わったのか問うた。そこで語られたのは、日本とはまったく違う見解だった。当時、彼女は自分の答えを言えなかったが、今なら「どっちも間違いだった」と答えると言い、これからの授業でもそう伝えてほしい、と思いを語った。
御上は、人や国の数だけ正義があること、自分の正義だけが通ると信じていたら誰とも話はできないことを伝える。「じゃあどうしろって言うんですか?」と質問する東雲に「僕に指示を出されたい?嫌だよね」と投げかけた。
また、展示に参加する生徒と、しない生徒でクラスが分裂しそうになったときには、ディベートを提案。あえてこれまで苦言を呈してきた櫻井未知留(永瀬莉子)に賛成派、東雲に反対派に立ってもらい、ディベートを行った。そこでは、櫻井が個人的に教科書検定について調べていたことが明らかに(御上は気づいていたようだが)。2人のディベートの結果、やるべきことが見えた。
自分と反対意見の立場になると、相手の想いや言いたいことに触れられる。そして、自分の意見にプラスして客観的なアイデアを得ることができる。御上は、ここでも生徒たちに「考える」機会を与えたのだ。そして視聴者にも……。私たちのなかにある「普通」は本当に「普通」なのだろうか?子どもの頃に「相手の立場になって考えよう」とよく言われたものだが、私たちは今、それができているのだろうか?
その後、学年主任の溝端完(迫田孝也)のチェックをくぐり抜け、当日、視察に来た文科省の副大臣に、教科書検定の展示を見せることができた一同。当初は参加に後ろ向きだった神崎拓斗(奥平大兼)も報道部として、副大臣に取材を敢行した。この一連の流れは「学生版の日曜劇場」のように感じ(カテゴライズするのもどうかと思ったが、日曜劇場だからこそやる意味があった回だったと思う)、ワクワクする展開だった。これまでの『御上先生』ではならなかった感情となり、新たな世界に導いてくれた。
もちろん失敗しても得られるものはあるが、生徒たちが未知の世界に挑戦し、成功を収めたことが嬉しい。彼らが展示に取り組む姿は青春そのもので胸が熱くなる展開だった。
また、これまでスーツが印象的な御上のクラスTシャツ姿が見られたのも貴重だった。彼が槙野恭介(岡田将生)に放った「何をしてもいい。でも生徒に手を出したら許さない」という言葉にも、教師としての覚悟を感じた。
授業や隣徳祭を経て、御上と一部の生徒たちとの壁はなくなったように感じる。これまでの教師ドラマは、一人ひとりと情熱的に向き合い、信頼を勝ち取っていく展開が多かったが、こうしたアプローチで生徒との距離が近づくのは、とても新鮮だった。
『御上先生』第4話は救いと希望のある回だ。東雲をはじめとした生徒たちの想いが実を結び、花開いた。御上がいたことで実現したことも多く、勉学だけでは得られないものも手にできた。このことは絶対に将来に役立つ……。これからも生徒たちにとって、御上先生が救いのような存在であり続けることを祈る。
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