文科省のエリート官僚が高校3年の担任教師となり、生徒に独自に考えさせながら、権力に侵された日本教育を破壊する、大逆転教育再生ストーリー『御上先生』。日曜劇場初主演の松坂桃李が、“官僚”兼“教師”という役どころに挑戦し、大注目を浴びている。ドラマは終盤に差し掛かり、“真実”が明らかになっていく第9話の放送を前に、松坂がインタビューに応じてくれた。
──これまでの撮影を振り返ってみて、今どのような思いでしょうか?
松坂:そうですね、脚本の詩森(ろば)さんが伝えたいことや、飯田(和孝)プロデューサーが込めたメッセージ、そして各話を担当する監督たちが見せたいものなど、まだまだたくさん残っているので、本当に最後まで気が抜けないという思いでいっぱいです。
──特に印象的だった撮影シーンはありますか?
松坂:第6話の御上の独白のシーンは、生徒それぞれの表情を撮るということで、鮮度を保ちたいという監督の思いもあって、生徒のブロックごとに撮ったので、その数だけお芝居をしたんですけど、その時は久しぶりに疲れました(笑)。生徒の前で授業や、思いを語るのは、結構カロリーを使いました。教壇に立った人にしか分からないと思うのですが、生徒を前にすると、ものすごい視線が一気に集中するんです。教師役でしか得られない緊張感みたいなものを経験しました。
──撮影が進むにつれて、生徒役のキャストたちとの距離は縮まりましたか?
松坂:縮まりました。物語が進むにつれて、御上先生と生徒たちの距離感が縮まるのと同時に、キャスト同士の結束力みたいなものも強くなっている感じがします。生徒のみんなは中だるみすることもなく、常に集中力を持続させていて、本当にすごいことだなと純粋に思いますし、とても尊敬します。お芝居に関しては、みなさん本当に素敵で、セリフがそれぞれの生徒本人の言葉として出てくるようで。毎回、お芝居をするたびに心を動かされて、こちらも負けまいという気持ちになります。
──『御上先生』は、これまでの学園ドラマでは取り上げてこなかった、さまざまな複雑なテーマが描かれています。松坂さんが特に印象に残っているテーマは何でしょうか?
松坂:全部印象に残っていますが、アクティブリコールの話や、ビジネスコンテスト、文化祭の催し物についてのディベートなどは興味深かったです。ディベートでは、賛成派と反対派の人たちに分かれて、賛成の人が反対意見を、反対派の人が賛成の意見を言ったりするんですが、それらを生徒自身に考えさせて、みんなで共有していくというのが本当に印象的でした。御上は何度も「考えて」と言うんですが、このたった3文字のセリフが、場面によって自分の中でニュアンスが変わっていきました。生徒たちの空気や、生徒のみんなのお芝居を見て変わっていくというのは、僕自身初めての経験でした。
──松坂さんが本作から影響を受けたことはありますか?
松坂:あります。これほどまでに、やる意義のあるドラマは初めてです。メッセージ性が強く、ともすれば「考え方は偏りすぎではないか」といったクレームが来る可能性のある内容かもしれないですが、やる意味というものを改めて実感しました。僕の仕事は、エンターテイメントを伝える仕事でもあり、その時代の世の中に何かを投げかけるような、メッセージを込めた作品をお届けすることでもあると思います。
『御上先生』は、見てくださる人たちが、投げかけたメッセージについて考えることができる、思いを馳せることができる、または次の憂鬱な月曜日に重い腰を上げられるような、動き出すきっかけになるような作品だと思いますし、僕自身も改めて実感できた作品です。本作から大きな影響を受け、これから役者人生を歩む者として、ものづくりというものを、しっかりと続けていきたいと思わせてくれました。
──以前、松坂さんにインタビューした時に、『新聞記者』や『離婚しようよ』といった作品に出演してきた中で、伝えるべきメッセージを持つ作品を地上波でやりたいとおっしゃっていました。今回それが実現して、しかも多くの人がご覧になる日曜劇場という大きな枠で放送されて大変うれしく思います!
松坂:ありがとうございます。僕、確かにそう言いましたね!地上波のドラマで成し遂げることができたという実績は、自分の中では大きなことだと思います。ただ、これがゴールだとは思っていません。今後も、メッセージ性とエンタメ性を融合させた作品を、しっかりと視聴者の方にお届けできるように、がんばって続けていきたいと思っています。
──『御上先生』の脚本は『新聞記者』と同じく詩森さんなので、本当にメッセージ性とエンタメ性のバランスがいいですよね。できれば、TBSの伝説の学園ドラマのように、シーズン2以降も作られてほしいです。
松坂:もしもシーズン2を作るとしたら、同じ世界線ではなく、御上ではない人を主人公にした方がいいと思います。御上は文科省と学校のことで問題提起をしましたが、シーズン2では、例えば神崎(奥平大兼)が大学生になって、行動を起こして問題提起をするといった、何か違う現場を舞台にした方が面白いのかなと思います。
──なるほど、面白そうですね。その場合も、ぜひどこかに松坂さんにも登場してほしいです。
松坂:そうですか!ありがとうございます(笑)。
──御上の文科省の同期の槙野役を、普段から松坂さんと親しい岡田将生さんが演じています。今回、岡田さんと共演していかがですか?
松坂:岡田には信頼しかないです。というのも、本作には3つの軸があります。御上の学校での教育の軸と、神崎と冴島先生(常盤貴子)の関係の軸、もう1つが槙野の官僚の軸です。この3つの軸が最終的に混ざり合って、9話辺りから1つになっていくんですが、そこに行くまでの官僚パートの空気作りみたいなものは、すべて岡田が担っています。
槙野の真意が明かされるまで、岡田がいろいろな表情を見せてくれていますが、岡田なりの引き算や逆算の演技で視聴者のみなさんを翻弄しているなと思っています。
──今からワクワクしています!でも、ドラマも終盤かと思うと、ちょっとさみしいです。先ほど、御上は「考えて」と生徒に何度も言うというお話をされていましたが、本作は一貫して自分で「考える」ということを伝えていますよね。このテーマに触れ、松坂さんご自身の生活の中で意識するようになったり、物の見方に変化があったりしましたか?
松坂:そうですね、自分自身、子どもに対する接し方が少し変わったかもしれません。もちろん、御上先生みたいな接し方ではないですし、まだそんなに言葉も分からない年齢ですけど、「一緒に考えてみよう」と言い続けようと心に決めました。親が、自分が歩んできた人生経験を経て答えを出すというのは、それほど難しいことではないと思います。子どもと一緒に成長しながら考えることの大事さを、改めてこの作品で学ばせてもらったので、この作品で得たものはしっかりと自分の人生において持ち続けなきゃいけないと思っています。
──素敵なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございます!では最後に、『御上先生』の終盤に向けて、番組を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。
松坂:いよいよ、第1話から布石を打ってきたものが、第9話のタイミングで明かされます。「ヤマトタケル」という人物が一体誰なのか。そして、第9話は先ほどお話しした3つの軸が1つになるような回になります。3つの軸が1つになることによって、最終的にどこに向かって、どういう終着点を迎えるのか。ぜひ、みなさんに見届けてほしいと思いますし、なぜ御上先生のクラスが29人という数字なのかというのも踏まえて、考えて見ていただけたらと思っています。
■番組概要
第9話 3月16日(日)よる9:00~9:54放送
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