「まだ卒業したくない」と思っていた。まだまだいっぱい学びたかった。新しい視点をいただいて、人間としてアップデートしたかった。何より御上孝(松坂桃李)や隣徳学院3年2組の生徒たちと会えなくなるのがイヤだった。
だが、日曜劇場『御上先生』最終話を終えた今はなんだかスッキリしている。前向きになっている自分がいる。それは御上が生徒に伝えた「祝辞」があまりにも……。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
第9話(前回)のラストは、まさかの展開だった。ずっとライバル関係にあり、敵対していたと思われていた御上と槙野恭介(岡田将生)の“共闘関係”が明らかとなったからだ。
最終話の冒頭では、ふたりが手をとりあうことになる過去が描かれた。そのシーンのあと、富永蒼(蒔田彩珠)と槙野が「弱っている人間に斜め上からの正論攻撃。オカミの必殺技です」、「御上がいなかったら今ここにいない」と話をしていたが、それぞれ御上への愛が溢れていてすごく幸せな気分になった。
私は御上と槙野の“並んでいる姿”がたまらなく好きだ。槙野がチクチク言いながらも御上を信用しているところ、そんな彼の言葉を軽く受け止めて御上が笑みをこぼすところ、ふたりが「教育のシステムを変える」目的を持ってまい進しているところ、すべてが好きだ。お酒を一緒に飲みながらベランダで語るシーンも良かったな。まっすぐ生徒を「かわいいんだよ」という御上に「やっぱムカつくわ」と槙野。心を許している姿が印象的だった。
その後、御上は不正入学の被害者でもある千木良遥(髙石あかり)と向き合うための特別授業を行う。「戦争」の話(このときの御上には第1話で感じた鋭さのようなものがあった)をもとに「『答えの出ない質問』がこの世にはたくさんある」、「考える力っていうのは、答えを出すためだけのものじゃない。考えても考えても答えが出ないことを投げ出さず考え続ける力のことだ」と語りかけた。この授業をきっかけに事態が大きく動く。永田町、霞ヶ関、隣徳の癒着が明るみとなったのだ。
最終話の予告が出たとき、「(外的要因で)千木良が卒業できないのでは」と心配の声があった。今回、確かに千木良は隣徳を卒業しなかったが、これは彼女自身が決めたことである。千木良の話を聞いてみると、彼女の選択は決して間違っていなかったし、彼女の想いを尊重したい、と思えた。
卒業の日を迎えた3年2組。生徒たちは御上の最後の言葉を待っていた。そこには、学校を辞めた千木良の姿もあった。
御上は諦めかけた瞬間があったこと、解決策を出してくれた生徒たちに背中を押してもらったことを明かす。そして「結果としての解決は素晴らしい。でももっと素晴らしいのは君たちのなかに今、人生をかけて考えるべき『答えの出ない質問』が数えきれないほどあるということだ」、「君たちの頭の中の『答えの出ない質問』は未来そのものなんだ。そして君たちが苦しみのなか選びとる答えはきっと弱者に寄り添うものになる。君たちならできるよ。僕はそれを信じてる。卒業おめでとう」と語りかけ、御上は生徒と別れた。
そうだ。そうだった。御上先生は生徒だけでなく、私たちの人生にも影響を与えるきっかけをいつもくれていた。希望の言葉と「考える」時間をいつもくれていた。今回もたくさん考えた。
私たちがいる現実世界にもみんなで考えなければならない「答えの出ない質問」がたくさんある。もちろん、半径5メートルの世界にもいくつもある。そのたび考えて壁にぶつかるが、正直、これまでは避けることもあった。逃げ出したこともあった。思い返せば、白旗をあげて考えることをやめていた。そんななか、御上先生は「考えること」の大切さと素晴らしさを粘り強く教え続けてくれた。
いよいよお別れのときだ。きっとこれからも「答えの出ない質問」にぶつかることがあるだろう。だが、私の心には御上先生の教えが刻まれているから大丈夫だと思える。御上先生がそばにいるから寂しくないと思える。これからは「考えること」を投げ出さず、考え続けていきたいと思う。それが大切だと思うから。そうですよね。御上先生。
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