ぼんやりとだが、その輪郭が見えてきた。
隣徳学院の裏側で何が行われているのか、文科省とのつながり、「隣徳学院高校元教諭・冴島悠子は 官僚殺人事件の犯人・真山弓弦の母親」と書かれた告発文をマスコミに送った人物……。徐々に謎が明かされている日曜劇場『御上先生』。
もちろん、上述したシーンも印象的だったのだが、第8話まで見てきたからこそ感じたこと、改めて胸に響いたことがあるのも忘れたくない。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
3年2組で「御上先生が文科省に戻る」という情報が駆け巡った。御上はもし文科省に戻らないのであれば、担任をおろされるかもしれない、とほのめかされたと明かす。じつは、3年2組の成績が下がっており、保護者から問題視する声があがったらしい。
御上は成績が下がったのは、生徒たちに「考える力」がついているからだ、という。考える教育が浸透しないのは、いま、暗記力に頼った詰め込み式の教育を変えようとすると、一時的にテストの点数が下がるから。「ゆとり教育」から「脱ゆとり」がいい例だ。
御上を担任として残すためにも、3年2組は次の試験で結果を出すしかないが、生徒たちは、たとえ御上のためであっても、誰かのために成績を上げる気にはなれない、と語る。
「ここからの3か月を君たちの人生にとって意味のあるものにしてほしい。それだけが僕の願いだ」
そんな御上の想いを叶えるべく、和久井翔(夏生大湖)を中心に、勉強法をシェアする取り組みを始めた。これをすることで、結果的に御上を助けることにもつながる。
ここから御上は、ほとんどアドバイスを送ることはなかった。生徒たちが自ら動いて、自ら考えて勉強法を確立させていったのだ。
ここにきて、生徒たちが自主的に動く場面が増えてきたように思う。「考える力」が備わってきた生徒たちは、教えなくても自ら考えて動くことができる。御上は「『考える』大事さを伝える教育」をベースにしつつも、生徒たちの成長を実感したことで「見つめる教育」も加えて教壇に立っているのかもしれない(もちろんフォローはするが)。
また、津吹隼人(櫻井海音)に「高3ってさ、大人でもなくて子どもでもなくて、なんか気持ち悪い生き物なんだよね。生命力が強いのに、すごく繊細で、変化する速度がプランクトン並みにはやくて、いっときも目が離せない」と話したシーンにもつながるが、第1話とくらべると、御上の表情が変わってきたように思う。生徒たちと接するときや見つめているときなど、明らかに柔和な表情を見せる場面が増えてきた。彼の人間味が感じられてとても嬉しく尊いのだが、少し寂しさもある。あのピリッとした御上先生も大好きだから。
そしてもうひとつ触れたい場面がある。それは、今回、高橋恭平演じる謎の青年が、隣徳学院の卒業生で、冴島悠子(常盤貴子)の元教え子・戸倉樹であることが明らかとなった場面だ。ラストには、神崎拓斗(奥平大兼)が「冴島先生、戸倉さんをかばってたんですよね?」と言っていたが……。
なぜ、高橋がこの役にキャスティングされたのか。本当のところは分からない。だが、彼のどこか憂いを帯びた表情、吸い込まれそうな色気、謎がまとえばまとうほどもっと知りたくなる空気感など、しばらく正体が明かされない戸倉役にぴったりだと感じる。「この役は高橋でないといけない、高橋でないといけなかった」。第8話で、そう思ったのだ。
台詞ではないところで人の感情をこれだけ動かすのだから、多くの台詞があるであろう次回以降の彼を見たら、我々はどうなってしまうのか……。拘置所前のシーンもあったが、「いえ、違います」のひと言のみだったし、今回も冴島に挨拶をしたのみ。戸倉が今後何を発するのか、高橋がどんな演技を見せてくれるのか、非常に楽しみである。
第8話はこちらから
第9話予告編はこちらから
公式サイトはこちらから
TBS日曜劇場『御上先生』。官僚兼、教師という役どころを演じる主演・松坂桃李が受けた変化、その心境を語る
広瀬すず主演のクライムサスペンス『クジャクのダンス、誰が見た?』第8話をレビュー
紆余曲折の末、やっと別居解消となった真尋と直人。そんな中、真尋は父を見舞いに行った病院で、20年ぶりに母・如月春奈(黒木瞳)とついに再会することに。実の娘になんと非難されようと自分の生き方を貫く春奈の言葉に、真尋は心を動かされ…。
第9話では、それぞれが進路の選択と向き合う中、ベテラン患者の橋口が腎臓がんで再び入院してくる。そんな橋口を元気づけようと、ある実行したサプライズを実行したつぼみ隊に視聴者から「かわいすぎる」「愛おしい」という声が上がった。