第70回全日本新人王決定戦!2023年度、新人ボクサーの頂点が決まる!
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第70回全日本新人王決定戦!2023年度、新人ボクサーの頂点が決まる!

2023.12.28 17:00

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超満員の“聖地”後楽園ホールで開催された第70回全日本新人王決定戦。東日本新人王トーナメントを制した東軍代表と、西日本・中日本・西部日本新人王トーナメントを制した西軍代表が、日本一をかけて激突する!

本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!

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第12試合:全日本新人王決勝/ミドル級5R

11-10
©NAOKI FUKUDA

×赤井英五郎(帝拳)vs 〇冨永一希(仲里)3回TKO

東日本新人王、敢闘賞の赤井英五郎は、“浪速のロッキー”赤井英和を父に持つ攻撃的なボクサーファイター。前へ前へとプレッシャーをかけ接近戦に持ち込み、強い左ボディからアッパー、フックと上下に打ち分ける。西日本新人王の冨永一希は、長いリーチを活かしたアウトボクシングで、強打のファイターを攻略してきた長身サウスポー。得意の打ち下ろしの左ストレートで現在4連勝中。全日本新人王決定戦、最後の試合はダウン応酬の激闘となった!

1回、富永はサウスポーの右リードジャブで距離をキープしながら、ステップインしての左ストレートを真っ直ぐ打ち込むと、赤井の顎を揺らしダウンを奪う!開始から60秒で冨永は持ち味を発揮し、流れを引き寄せる。ダウンした赤井は直ぐに立ち上がり、ダメージのないことをアピールし反撃を試みるが、冨永のアウトボクシングに攻めあぐねる。2回、流れを変えたい赤井は、マイク・タイソンのようなピーカーブースタイルとウィービングでペースアップ。頭を振りながら右フックを叩き込みダウンを奪い返す!このスタイルチェンジに、サウスポーが相手でも接近してしまえばパワーでねじ伏せられる、という赤井の決意が感じられた。しかし、立ち上がった冨永は再びジャブで距離を作り、接近戦には持ち込ませない。そして3回、接近したい赤井は、前には出るが直線的で頭の振りも少なく、冨永の右ジャブ、右フックをまともに受ける。充分な距離が取れた冨永は、これまでよりも力のこもった左ストレートを打ち落としダメージを与えると、強い左ストレートを連打、赤井が防戦一方になったところでレフェリーが試合を止めた。

赤井英五郎選手への期待が大きかっただけに、ストップのタイミングが早かったように感じたが、後の赤井選手本人の談話で、無事にリングを下りることが出来た、レフェリーに感謝したい、と語っていた。2回にペースアップしダウンを奪ったが勝ちきれず、その後反撃された時に勝負あったのかもしれない。

勝った冨永一希選手は、長身、サウスポー、テクニックに加えて、強打も証明した試合だった。なかなか手強い存在になりそうだ。


第11試合:全日本新人王決勝/ウェルター級4R

10-1
©NAOKI FUKUDA

〇須賀大地(オークラ)vs ×松岡蓮(浜松堀内)判定2-1

東日本新人王の須賀大地は、アマチュア出身とは思えない変則的な軌道、タイミングで放つ左右フックで全勝をキープする、“髭眼鏡ボクサー”。そのパンチは重量感抜群。中日本新人王の松岡蓮は、リスクを恐れず、打ちつ打たれつの打撃戦で、勝っても負けてもKOを狙う好戦的なファイター。相手にダメージを与えてからのラッシングパワーは見事。

試合は1回、須賀が変則的なボクシングで優位に進める。出どころのわからない左右フックを、文字通り叩き込む印象。ズドンズドンと重たい音が響く。しかし2回、松岡は外から回り込むパンチに対し、コンパクトで真っ直ぐの右ショート2発をヒットさせダウンを奪う。さすが中日本新人王の対応力。ここで持ち前のラッシングパワーで攻め切りたい松岡だったが、須賀の反撃で詰め切れず。ダウンのダメージを感じさせない須賀の回復力は目を見張る。3回は、須賀の逆襲が目立ったラウンド。須賀は、重たい右フックをヒットさせ、松岡の動きを止めると連打で押し込んだ。ここまで、松岡がダウンを1つ奪ってはいるものの、採点ではイーブンが濃厚。最終4回で勝敗が決する!両者同時にジャブを放ち、打ち合いが始まる。須賀は小刻みなステップと手数で、ダウンのダメージを感じさせない。一方で松岡は疲労の色が見て取れるが、力を振り絞ってパンチを返している印象。松岡がシャープな右ストレートで顔を弾くと、2倍3倍のパンチが返ってくる。両者、パンチを出し続けたまま試合終了のゴング!果たして判定の行方は。

判定は2-1で須賀選手の勝利!最終回、2名のジャッジが須賀を支持、1名が松岡を支持した結果で、もしこの1ポイントが反対に付いたのなら、真逆の結果になる大接戦だった!ボクシングはKOが醍醐味ではあるが、こういったポイントゲームも意識してみると面白い。

残念ながら敗れた松岡蓮選手、変則タイプの対策をしようにも、似たような練習相手がいないのも事実。実戦の中でアジャストしていったが一歩及ばず。

須賀大地選手のボクシングは、須賀選手にしか出来ないボクシング。今後も勝ち続けて、ウェルター級戦線で異彩を放つ存在になって欲しい!


第10試合:全日本新人王決勝/スーパーライト級4R

09
©NAOKI FUKUDA

川村英吉(角海老宝石)vs 宮川竜成(尼崎亀谷)

※宮川竜成棄権のため試合中止 川村英吉 優勝

東日本新人王の川村英吉は、国体準優勝の実績が裏付けるテクニックで、安定感抜群なボクシングが持ち味。西日本新人王の宮川竜成は、ハンドスピードとフットワークのあるアグレッシブな技巧派サウスポーだっただけに、ハイレベルな決勝戦が期待されたが、宮川選手の負傷により試合は中止となった。近い将来、このカードが実現されることを期待する。


第9試合:全日本新人王決勝/ライト級4R

07-4-2
©NAOKI FUKUDA

〇西畑直哉(T&H)vs ×児島弘斗(黒崎KANAO)2回TKO

東日本新人王の西畑直哉は、固いガードからのジャブ、重量感のある右ストレート、左フックで押し込む基本に忠実なボクサー。早いラウンドでの一撃KOで試合を決めてきた。西部日本新人王の児島弘斗は、上体を柔らかく使い、鋭いアングルからスピードあるパンチを放つ、まるで中南米の選手のようなボクシングが持ち味。特に打ち合いの中で織り交ぜる右アッパーは器用さをうかがわせる。

1回、児島は大胆なステップで飛び込み、大きな軌道から放たれるパンチで揺さぶりをかけるが、西畑は冷静に反応し、右ストレートで迎え撃つ。2回、児島は、まるで野球のスローイングのような大振りを繰り返すが、西畑はヘッドスリップ、ウィービングで空転させる。あれだけ大きくスウィングしたパンチは、クリーンヒットせずとも体のどこかには当てたいところ。空振りはスタミナを大きくロスするし、カウンターの標的になりかねない。そんな状況の中で、西畑は児島の打ち終わりに右ストレートの打ち下ろしを巧打。児島とは対照的なコンパクトなパンチで、ダメージを蓄積させる。最後も右ショートストレートが決まり、児島は崩れ落ちるようにダウン。一発のパンチが効いたというよりは、ダメージの蓄積によるダウン。回復は見込めないとして、その場でレフェリーは試合を止めた。

今回は、西畑直哉選手の総合力の高さが発揮された試合。ガードもパンチも強いが、何よりメンタルが強かった!

敗れた児島弘斗選手は、運動神経、身体能力の高い選手であることは間違いない。豪快なパンチに磨きをかけて、復活して欲しい!


第8試合:全日本新人王決勝/スーパーフェザー級5R

08-1
©NAOKI FUKUDA

〇下村佳輝(三迫)vs ×小松直人(森岡)4回TKO

東日本新人王の下村佳輝は、ゴングが鳴ると同時に襲いかかり、怒涛の先制攻撃でKOの山を築いてきた生粋の倒し屋。西日本新人王の小松直人は、サウスポーの利点を生かし、半身に懐深く構え、左ストレートをストンと打ち込みポイントを積み重ねる技巧派。これは、右のファイターと左のテクニシャンが対戦する、スタイル的には天敵同士の組み合わせ。

目が離せない1回、下村は強いプレッシャーで接近しボディから顔面へと強打を叩き込み、小松を自分の土俵に引きずり込む。このままでは押し切られると、小松も打ち合いに応じ激しい打撃戦となる。2回、下村が放った右ボディからの左フックで小松がダウン!すぐさま立ち上がった小松だがダメージは濃厚。下村は、試合を終わらせようと追撃するが、打ち疲れからかパンチが流れ空振りが目立つ。そこに小松の右フックがカウンターでヒット!逆に下村をグラつかせ、ピンチをチャンスに変える。3回、下村は強振を止め、ショートパンチを確実にヒットさせ攻撃態勢を整えると、強い左アッパー、右ストレートで打撃戦を優位に進める。迎えた4回、お互いに一歩も引かない打ち合いはさらに激しくなり、疲労、ダメージでフラフラになりながら、大歓声の中で繰り広げられる!小松が捨て身の反撃で左右フックを振るうも、この日一番シャープで固い下村の右ストレートが炸裂!小松がゆっくりと倒れ込むと同時に、タオルが投げ込まれた。

下村佳輝選手は、前評判通りの豪快なKO勝利で、大応援団の大声援に見事に応えた。プロボクサーにとって、KOできるパンチ力は最大の魅力。今から次の試合が楽しみだ!

そして小松直人選手、サウスポーの強みを発揮することは出来なかったが、強打者相手に真っ向から打ち合いに応じる勇敢な姿は見事。名勝負を生み出した立役者だ!

【敢闘賞】下村佳輝


第7試合:全日本新人王決勝/フェザー級5R

06-1
©NAOKI FUKUDA

×牧田健之介(RK鎌田)vs 〇石崎大二朗(LUSH)判定0-3

東日本新人王の牧田健之介は、優勝候補筆頭だった山川健太選手をワンパンチで失神KOし、東軍MVPを獲得したシンデレラボーイ。まるでパッキャオかカシメロのような爆発力のあるパンチで、一瞬で試合を決める華がある。中日本新人王の石崎大二朗は、見るからに頑丈そうな体格を活かし、プレッシャーと手数で連勝を続けるファイター。クリンチを振りほどいて連打する荒々しさで向かうところ敵なし。攻撃的な両者による全勝対決の行方は?

1回開始早々、まずは身長差が目立つ。体格で勝る石崎はジャブで、自分の距離をキープし、牧田の強打に最大限の警戒を払っている。2回、攻撃を強めた牧田が左フックをヒットさせるも当たりは浅く、大きなダメージを与えられない。3回、石崎はジャブをさらに増やしアウトボクシングを強化。徹底した接近戦回避が作戦のようだ。4回も、石崎の距離でのアウトボクシングが続く。途中、石崎のパンチで牧田の右目上をカットするが、決して深追いせずに危険を冒さない。5回、牧田は一発逆転を狙い、左フックで飛び込むも、最後まで石崎を捉えることが出来なかった。判定はほぼフルマーク、0-3で石崎が勝利した!

敗れた牧田健之介選手にとっては、これまでにないほど研究と警戒をされた試合となった。打ち合いをさせてもらえないと強打は打ち込めない、これは辛い!

そして、石崎大二朗選手もある意味、辛い試合だったのでは。何度かここで攻め込めばKO出来るのでは、という瞬間があったが、勝ちに徹したボクシングを遂行した。これまでの石崎選手の試合ぶりから考えると、本当はもっと攻めたかったと思う。しかし、陣営の作戦を優先し、計画通り勝利した。これは価値ある勝利だった!


第6試合:全日本新人王決勝/スーパーバンタム級5R

00-3
©NAOKI FUKUDA

×須藤大和(伴流)vs 〇武藤涼太(松田)1回KO

東日本新人王、技能賞の須藤大和は倒せる技巧派。相手のパワーを利用した、タイミング抜群のカウンターで強豪を倒してきた、全勝サウスポー。中日本新人王の武藤涼太は、サウスポーから放つ左ストレートと返しの右フックの強さ、連打の正確さで無敗を続ける、今大会最年少の18歳。東西技巧派サウスポー対決は、あっという間に決着がついた!

1回、右のジャブの差し合いから始まる。ここで武藤選手のジャブが早く、かつ固い印象を受ける。ガードの上をアッパー、フックのコンビネーションで叩きリズムを作る。対する須藤は、後手になりながらも相打ちでチャンスを伺うが、ガードを弾き飛ばすような、武藤の破壊力にジワジワと後退。さらに、武藤が序盤から出していたアッパーからフックのコンビネーションでコーナーに詰めると、もう一度、今度は左アッパーからの右ショートフックがクリーンヒット!須藤から痛烈なダウンを奪う!須藤は、なんとか立ち上がるが足元がふらつき、レフェリーは10カウントを数え、武藤のKO勝利となった!

実力者である須藤選手に何もさせない完勝、しかも116秒でのKO劇を成し遂げた、武藤涼太選手のポテンシャルは計り知れない!KO率以上にパンチの強さがあることを証明した試合だった。倒し方を知った今、これからKO勝利がどんどん増えていくに違いない。

そして須藤大和選手、カウントアウトされた瞬間の悔しそうな表情が印象的だった。同じコンビネーションで倒されたこと、まだ試合を続けたかったこと、ダウンを挽回して勝利したかったこと、その悔しさが須藤選手を更に強くするだろう。

【最優秀選手賞】武藤涼太


第5試合:全日本新人王決勝/バンタム級5R

05-2-(1)
©NAOKI FUKUDA

×三浦良斗(ワタナベ)vs 〇森口山都(クラトキ)判定0-3

東日本新人王の三浦良斗は、混迷の新人王トーナメントで勝ち上がりながら成長してきたボクサーファイター。今、一番勢いに乗った状態でリングに上がる。西日本新人王の森口山都は、基本に忠実で、まとまりのあるボクサー。攻撃、防御ともに隙が無く綺麗なボクシングで未だ無敗。

試合は1回から、森口のジャブ、フットワークが目立つ展開。上下の打ち分け、特にボディに強いパンチを打ち込みダメージを与える。対する三浦は、肉を切らせて骨を断つ、カウンター狙いのよう。ポイントを取られても、逆転の一発で清算する作戦。実際に東日本新人王決定戦では、右ストレート一閃、1回KO勝利をおさめている。2回、試合を作っているのは、森口のジャブ、ワンツーだが、三浦の右ストレートも当たりは浅いが合い始めている。

しかし3回、森口は距離を作りながら左ボディで三浦のスタミナをじわじわと奪うと、4回は完全なるヒットアンドアウェイで打たせずに打つ展開に。最終5回、あとのない三浦は捨て身の猛攻で逆転KOを狙うが、ここまで積み重ねられたペースは変えられず、最後まで森口が試合を支配した。判定は0-3、大差で森口の勝利!

敗れた三浦良斗選手、新人王トーナメント初戦の頃とは別人のように成長し、実力をつけてきた。下剋上とはならなかったが、この大会を大いに盛り上げたことは事実。

勝利した森口山都選手は、ボクシング技術に合わせて冷静な判断力もあり、負けるイメージが出来ない。


第4試合:全日本新人王決勝/スーパーフライ級4R

04-1
©NAOKI FUKUDA

×佐藤祐(三迫)vs 〇藤野零大(カシミ)判定1-2

東日本新人王の佐藤佑は、KO勝利こそないが豊富なスタミナと手数で、最終ラウンドのゴングがなるまでコツコツとパンチを当て、主導権を渡さないボクサー。一方、中日本新人王で西軍敢闘賞の藤野零大は、3勝全てがKO勝利の強打者。決して力んで打って入るパンチではないのに、当たれば倒してしまうナチュラルなパンチの強さが魅力。まったくタイプの異なる無敗対決、19歳対決となった。

試合は、強打の藤野に対し、佐藤が前に出続ける予想通りの展開に。1回、ボディジャブで接近しようとする佐藤に対し、しなりの効いた右アッパーで迎え撃つ藤野のパワーが際だった。2回、しつこく接近してくる佐藤に、藤野の右ストレートがカウンターとなり、クリーンヒット!藤野が明確にポイントを取ったと思われるが、食い下がる佐藤に対し戦い辛さを感じてきた様子。3回、佐藤が手数を増やして右ストレートをクリーンヒット、藤野を押し込む場面が増えてくるが、クリンチともみ合いが多くなる。そして4回、ここでもフットワークと手数が衰えないのが佐藤。軽いパンチだが、接近戦でコツコツ当てる中で、藤野が強いボディで応戦し試合終了、勝敗は3人のジャッジに委ねられた。判定は、1-2の割れた採点で、藤野零大の勝利!

佐藤佑選手は、最後までスタミナを切らさず、パンチを出し続ける自分のボクシングは出来たのでは。これが5回戦、8回戦ならば結果は違っていたに違いない。また、試合中のセコンドからの支持にも瞬時に反応し、インターバルではニコニコして話を聞く。そんな素直な性格が、佐藤佑選手の強さの秘密なのでは。そして、藤野零大選手の、まるで中南米の選手のようなしなやかな動きは今後もKOを連発する予感。若きハードパンチャーの今後から目が離せない!


第3試合:全日本新人王決勝/フライ級5R

03-2
©NAOKI FUKUDA

×高熊龍之介(松本ACE)vs 〇坂井涼(畑中)判定0-3

東日本新人王の高熊龍之介は、フライ級にしては171㎝と長身だが、アウトボクシングよりも、接近戦での打ち合いを好むボクサーファイター。中日本新人王の坂井涼は、ジムの先輩である田中恒成ゆずりのスピード、パワー、センスで西軍MVPに輝いた注目株。

試合は、スピードで勝る坂井が優位に試合を進めていたが、最終回に劇的展開が待っていた!1回、2回と坂井は、ガードを固めて前に出る高熊に対し、スピードと手数で翻弄。ガードの間を狙ったボディが度々ヒットし、打たせずに打つ理想的なボクシングで引き離す。一方、高熊も手数では坂井に敵わないものの、強い左ボディを叩き込む。フットワークとスピードのある相手に対して、ボディでスタミナを削るのは良い作戦。特に3回は、坂井の脇腹が赤くなるほど強いボディがヒットしていた。4回、ガードの固い両者は、お互いのパンチを防ぎあうが、スピードのある坂井がコンビネーションで優勢をアピールする。そして迎えた最終5回、これまでスピード、有効打で劣勢に立たされていた高熊の形勢逆転を呼ぶ左フックが炸裂!ラスト20秒でのまさかの一撃に会場は大歓声の渦に巻き込まれる!完全に足にダメージを負った坂井は、必死のクリンチで追撃を回避。何とか最終ラウンドのゴングを聞いた。あと10秒あれば大逆転KO勝利もありえた一戦、結果は3-0で坂井の大差の判定勝利だった。その素質から高い将来性を期待されている坂井涼選手、こういった苦戦こそが大きな経験となり、成長につながるもの。今後、後楽園ホールで活躍する選手になることは間違いない!そして敗れた高熊龍之介選手、最後まで試合を諦めない強い意志を垣間見ることができた!

【技能賞】坂井涼


第2試合:全日本新人王決勝/ライトフライ級4R

02-2
©NAOKI FUKUDA

△磯金龍(大橋)vs △上蔀哲汰(S&K)判定1-1ドロー

東日本新人王の磯金龍は、スピードに乗せて放つ豪快なアッパーとフックを武器に、少々打たれてもお構いなしに打ち合いにいく攻撃的なファイター。西部日本新人王かつ西軍技能賞を獲得した上蔀哲汰は、ポジショニングが上手く、サウスポーが相手でも鋭い左ストレートを打ち込めるボクサーファイター。スタイルの違うサウスポー同士の対戦は、スピード感のある、互角の攻防が繰り広げられた。1回、やや遠い距離から磯金がジャブからの左ストレートで先手を奪うが、上蔀はボディを返し応戦。迫力で勝る磯金だが決定打は共にない。続く2回もお互いクリーンヒットはなかったが、磯金の大振りに上蔀もつられて大振りとなり、スリリングな展開に。この前半2ラウンドは、採点が割れている可能性が高い。3回は、上蔀の左ストレートがヒット、磯貝は腰を落とすが反撃の手は緩めない。そして4回、磯貝はバランスを崩すほどの強振で強引に攻め込むが、ノーガードで軽いジャブを返され、打たれ方が悪い印象。お互いに最後まで明確なクリーンヒット、ペース掌握がないまま試合終了!どちらが勝ってもおかしくない混戦は判定に委ねられた。その結果は、三者三様の1-1のドロー。新人王特別ルールの優勢点により、磯金龍が全日本新人王となった。この判定は全く逆の結果でも異論がないほどの接戦!相手を巻き込む磯金龍選手の積極的な攻めが、僅かな差を引き寄せた。上蔀哲汰選手、後半2ラウンドはポイントを取ったとも思えた試合。今回はツキがなかった。


第1試合:全日本新人王決勝/ミニマム級4R

01-3
©NAOKI FUKUDA

△北野武郎(大橋)vs △坂田一颯(S&K)判定0-0ドロー

センスあふれるテクニカルなボクシングで全勝を誇る、東日本新人王の北野武郎と、フットワークとハンドスピードで攻め立てる、西部日本新人王の坂田一颯のサウスポー対決。

試合は、最軽量ならではのスピードとテクニックがぶつかり合う白熱の一戦となった。1回、アウトボックスに長けた北野は長めの距離でペースを掴もうとするが、坂田の踏み込みが早く左ストレートを被弾。坂田は先制攻撃が功を奏し、優勢にこの回を終える。2回、北野は鋭いジャブで坂田をコントロールし巻き返すと、3回は中間距離での打ち合いに。どちらかというと坂田の距離での打ち合いは、相打ちならば、やや坂田が優勢に見えた。最終4回、両者互角のシーソーゲームは北野の左ストレートがクリーンヒット、劣勢だった前の回を挽回し、有効打で上回り試合終了!判定はジャッジ3名ともが引き分け、0-0のドロー。新人王特別ルールの優勢点により、坂田一颯が全日本新人王に輝いた。

惜しくも全日本新人王を逃した北野武郎選手は、攻撃力のある坂田選手から先手を取ろうと、いつもより少し打ち気に焦っていた印象。全勝の技巧派がちょっとだけペースを乱された。しかし未だ無敗、次のステージでの試合が楽しみなことには変わりない。そして、坂田一颯選手、テクニシャンに臆することなく自分のボクシングを貫き通し、やり切った。その微妙な差が、優勢点に表れた決着だった。


今年の全日本新人王決定戦は、東軍の5勝、西軍の7勝だった。くしくも昨年と同じ結果で、西軍が勝ち越す内容だった。西軍の選手は、後楽園ホールで初めて試合する選手も多かった様子。近い将来、さらに高いステージで、聖地、後楽園ホールに返ってくることを期待する!

そんな彼らの健闘を称え、敢闘賞、技能賞、最優秀選手賞が発表された。

【敢闘賞】下村佳輝(三迫)
【技能賞】坂井涼(畑中)
【最優秀選手賞】武藤涼太(松田)

次は日本チャンピオン!そして、未来の世界チャンピオンを目指せ!

U-NEXTでは、今回レポートした『全日本新人王決勝戦 WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT 特別編』を2024年1月21日まで配信中!

配信開始前、または配信終了しています。

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