“パーフェクトレコード”村田昴、タイトル初挑戦!「WHO'S NEXT Vol.24」対戦カード発表!
10月5日開催のボクシング「第24回WHO'S NEXT」。村田昴ほか、全5試合の注目ポイントをレポートする
1月20日開催のボクシング「第10回WHO'S NEXT」は、全試合がドラマチック!
OPBF東洋太平洋ライト級王座決定戦に出場する鈴木雅弘、WBOアジアパシフィックフェザー級王座決定戦に出場する藤田健児、世界前哨戦となる岩田翔吉が、戦慄KOや、衝撃KOで、後楽園ホールを熱くする!
本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!
昨年10月にフィリピンで行われドローとなった、ロルダン・アルデアと鈴木雅弘のOPBF東洋太平洋ライト級王座決定戦のダイレクトリマッチ。今回は舞台を日本に移して行われる。
OPBFライト級4位のロルダン・アルデアは、柔らかな上体から独特のテンポで右ジャブ、左ストレートを打ち込むサウスポー。10月の試合では、前半は攻勢を許しポイントを奪われるも、後半に疲れの見えた鈴木雅弘を攻め立てドローに持ち込んだ。再戦でも、序盤は鈴木の猛攻をしのぎ、後半にチャンスを見出したい。
対するOPBFライト級3位、WBOアジアパシフィックライト級4位、日本ライト級2位、元日本スーパーライト級王者の鈴木雅弘は、重くて強い多彩な左リードパンチと巧みなブロッキングが持ち味の技巧派ボクサーファイター。先制攻撃を仕掛け前半で打ち倒し、今度こそ王座獲得を成し遂げたい。
注目のダイレクトリマッチは1回、プレッシャーをかけて前に出る鈴木に対し、アルデアは下がりながらジャブ、ワンツーで応戦する。アルデアが、低い姿勢で上体を振る僅かの隙に、鈴木の打ち下ろすような右フックが、ドンピシャのタイミングでテンプルにクリーンヒット!まるで、総合格闘技のパウンドのような硬くて破壊的な一撃で、アルデアはたまらずダウン!立ち上がろうにも体を支えられず、顔面から崩れ落ち、ダメージの深さが見て取れる。もう一度、立ち上がろうとするが、バランスを崩しロープに倒れ込んだところでレフェリーストップ!因縁の再戦は、鈴木の1回1分22秒、戦慄KO勝利で決着がついた。
鈴木雅弘選手は、1発のパンチで3度ダウンを奪ったようなもの。まるで、マイク・タイソンがトレバー・バービックから奪ったダウンのようだった!つくづく前半強い、という事を再確認できた試合。念願のライト級チャンピオンになった鈴木選手は、試合後のインタビューで「人間的にもチャンピオンでいたい」と発言、スポーツマンライクな人柄に魅了されるとともに、これからの飛躍を願わずにいられない!
藤田健児は、WBOアジアパシフィック1位、OPBF8位、日本13位にランクされる左ボクサーファイター。アマチュア10冠のエリートで、プロ転向後もサウスポーから繰り出す左カウンター、ポジションを変えての右アッパー、コンビネーションの当て勘の良さで5戦全勝。
WBOアジアパシフィック2位のジョセフ ・アンボは、フィジカルの強さを活かし、右クロスを振り回しながらパワーで押し込むファイターで、乱戦に活路を見出す実戦派。
試合は1回から、藤田のサウスポーから繰り出す右フックがヒットし、2回には右フックからの左ボディでダメージを与えるが、追撃のボディがローブローになり中断。再開後も右ジャブ、右フックをリードパンチにし、ポジションを変えて左ボディを叩きつける。
3回、藤田は攻勢を強め、右フックに左ストレートを返し手数で押していくが、ここでまたローブロー。藤田のパンチがベルトラインに掛かっていたので、ローブローに間違いはないが、ボディが効いているアンボとしては、オーバーにアピールしてでも、回復に時間が欲しかったところ。続く4回も藤田の左ボディがローブローになり、アンボは悶絶しリングに倒れ込み5分間の休憩が与えられた。
試合続行不可能の場合は、アンボのTKO負けというWBOルールの中、時間をフルに使って休憩し試合は再開された。せっかくの大一番なので、反則打でのノーコンテストや途中採点は避けて欲しかったので一安心。しかし、故意ではなく、偶然のローブローとはいえ、反則打を3度放ってしまった藤田に対して減点がないのは違和感を感じた。5回以降、藤田はアンボの過度なアピールを警戒し、ボディ攻撃を避けて、顔面のみの攻撃に徹する。アッパーを織り交ぜたコンビネーションで、たとえガードの上でも叩き続けリズムを作ると、9回には集中打を浴びせ一方的に攻め立てた。
最終12回、藤田は再びボディを攻め始めると、右ボディがクリーンヒット。アンボは背を向けて、ローブローをアピールするが、レフェリーはスタンディングダウンを宣告、アピールは認められなかった。その後アンボは、揉みあいの中でレスリング行為を行うなどイライラをつのらせ、精神的にコントロールを失った様子。最後までペースを掴む事が出来ず、最終ラウンドのゴングを聞いた。判定は、ジャッジ2者がフルマークの大差で、藤田の判定勝ち。WBOアジアパシフィックフェザー級王座を獲得した。
藤田健児選手は、右リードパンチの威力、左ストレートのタイミング、巧みなポジショニング、豊富な手数といった攻撃面、相手のパンチをことごとく空転させる防御面、荒れた試合展開の中でも冷静さを失わない精神面、全てのスキルの高さを見せた。アジアを通過点として、世界へ飛び出していく逸材であることは間違いない!
岩田翔吉は、世界ランクがWBCとWBOで1位、WBA2位、IBF10位のトップコンテンダー。ハンドスピードを活かした、ノーモーションの右ストレート、コンビネーションを武器にするボクサーファイター。今年の目標である世界再挑戦に向けて、勝利だけではなく、内容が問われる世界前哨戦。これまでのスタイリッシュでスピードのあるボクシングに加え、パワーも証明したい。
レネ・マーク・クアルトは、元IBF世界ミニマム級王者。豪腕を振り回す荒々しいボクシングと、実戦的なテクニックのあるファイター。乱打戦に引きずり込み、主導権を握りたい。
1回、クアルトは叩きつけるような右オーバーハンドと左フックで攻め込むが、岩田は冷静にブロックし強烈な左ボディで弾き返す。2回、岩田は顔面へのコンビネーションでガードを上げさせたところで、ウェイトの乗った左ボディを突き刺し、この試合最初のダウンを奪う。これ以上ないタイミングとパワーのみなぎったボディブローに、岩田の進化が見て取れる。さらに、左ボディでもう1度ダウンを奪い、完全にペースを掴む。3回、クアルトはダウンを挽回しようと、さらに強いパンチを振り回してくるが、岩田はここでも冷静にブロッキング、ボディワークで空転させ、防御技術の高さを見せる。4回終盤、岩田はカウンター狙いのクアルトに対し、右フックからの左ボディで3度目のダウンを奪う。上下の打ち分けが素晴らしい技ありのダウン。しかし、クアルトは三度立ち上がる。
5回、クアルトは逆転KO狙いの右フックで攻め込むが、岩田はアッパーとボディで応戦。踏ん張りを見せたクアルトの攻勢を評価することもできるが、緩急、強弱をつけたパンチをより多く当てていた岩田だったようにも見えた。採点の割れるラウンド。そして6回、プレッシャーをかけて押し込んでくるクアルトに対し、岩田は下がりながらリズムボクシング。そこに、岩田の右アッパーがクリーンヒット。左ボディを警戒していたクアルトは、それに反応できず4度目のダウンを喫したところでレフェリーストップ。岩田のTKO勝利となった。
レネ・マーク・クアルト選手は、プッシングによるスリップダウンと試合続行をアピールしたが、右アッパーがクリーンヒットしていることは明らか。4度のダウンと一方的な内容をかんがみても続行する理由は見当たらない。ダウンの度に立ち上がるタフさは素晴らしかったが。
岩田翔吉選手は、4度のダウンを奪ってのTKO勝利で、世界挑戦に向けて実力を証明した試合。攻撃面でのアピールはもちろんだが、ディフェンスの良さも際だった。果たして、前回敗れているジョナサン・ゴンザレスに再挑戦するのか、それとも別のチャンピオンをターゲットにするのか、興味は尽きない。
中野幹士は、WBOアジアパシフィック5位、OPBF7位、日本9位にランクされる左ボクサーファイター。アマ7冠の実績を携え2018年プロデビュー。これまで8戦全勝7KOの高いKO率を誇り、顔面でもボディでもワンパンチで試合を決める左の破壊力は驚異。
一方、ジェス・レイ・ワミナルは、キャリアのほとんどをフィリピン国内で積み上げてきたボクサーファイター。一発のパワーはないが、好戦的かつ回転力のある連打が持ち味の激闘型。しぶとく粘り強く戦い、判定に持ち込みたいところ。
しかし、試合はあっけなく決する。1回わずか53秒、中野の出した左ボディストレートがワミナルのみぞおちに突き刺さると、後ろに弾き飛ばされるようにダウン。そのままレフェリーの10カウントを聞いた。
中野幹士選手は、マノス・デ・アセロ(鉄の拳)のニックネームが示すように、持ち前の強打を見せつけたが、その表情はどこか不満げに見えた。顔面へのパンチで意識を飛ばしてのKOならまだしも、初回にボディへのワンパンチでギブアップされては、自身のスキルアップ、経験を積むことは出来ない。中野幹士選手のパンチが、戦意喪失するほど強かったのならば、それに耐えられるレベルの対戦相手が必要。タイトルマッチの準備は出来ている。
WBOアジアパシフィック14位の齋藤麗王は、高校選抜、インターハイ、国体などで高校6冠を達成し、プロ転向後も4戦全KO勝利中のハードパンチャー。豊富な手数と、練習量に裏付けられたスタミナを持ち、抉るような左ボディからの連打が必勝パターン。
対する日本スーパーフェザー級12位の中井龍は、デビューからハードマッチメイク路線で実力をつけてきたサウスポー。ワイルドな風貌と言動とは裏腹に、ジャブ主体の丁寧で隙の無いボクシングは、荒々しさよりも上手さを感じさせる。
この、全勝エリート強打者と叩き上げ技巧派の一戦は、神経をすり減らすような接戦となった。
1回、サウスポーの中井は、得意の左ストレートを打ち込み、齋藤からクリーンヒットを奪う。しかし一発の破壊力で勝るのは齋藤。中井はパンチのダメージ以上に、精神的疲労を感じながらのスタートではないか。2回、中井はシャープなジャブを主体とした徹底したアウトボクシングで試合をコントロール。決して足を止めない作戦が有効。しかし3回、齋藤はボディからのアッパーをヒットさせると、距離を詰めパワーで流れを引き寄せる。
続く4回も齋藤はプレッシャーをかけ強打を打ち込むが、中井はブロッキングとステップワークでパンチの威力を殺し、軽いパンチだが手数で応戦、両者一歩も引かない互角のラウンドとなる。5回、さらにプレッシャーを強めた齋藤はボディを中心に攻撃し、中井のスタミナを削り足を止めにかかる。ところが6回、直線的に強打を振るう齋藤に対し、中井はコンパクトにパンチをまとめて、接近戦でもコツコツとショートパンチを当てていく。離れ際、中井の力みなく出したワンツーがクリーンヒットし、齋藤は右目上をカット、ダメージで一瞬動きが止まる。ここは明らかに中井のラウンド。そして7回、中井は左ストレートで齋藤の顔面を弾き飛ばすと、連打で畳みかけレフェリーストップを呼び込んだ。
まるで「畑山隆則 対 坂本博之戦」のようなKO劇!注目のホープ、齋藤麗王選手はプロ初黒星。攻撃力、破壊力は確かだったが、打たれ過ぎた。
そして中井龍選手は、一発貰えばKO負けの緊張感の中で、アウトボクシングでも接近戦でも豊富な手数と的中率で上回った。決定的な一打は貰っていないが、ガードの上でもパンチは効いていたはず。しかし、ボクシングの引き出しの多さと集中力で、プラン通りの試合が出来たのでは。ハートは熱く頭はクールに戦い、そして勝ち取ったこの白星は、何勝もの価値がある大きな1勝だ!
今回は、タイトルマッチ2試合を含む全5試合の他に、元WBA世界フライ級暫定王者、江藤光喜さんの“引退式”として2分2ラウンドのスパーリングも行われた。なんとスパーリング・パートナーは、“神の左”山中慎介さん!私生活から交流のある2人が、現役時代を思い出すスパーリングに胸が熱くなった。見守るゲストもレジェンド級の元ボクサーが集まり、引退式に花を添えた。江藤光喜さん、お疲れ様でした!
U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.10』を2024年2月19日まで配信中!
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