「第11回WHO'S NEXT」ボクシング観戦レポート!
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「第11回WHO'S NEXT」ボクシング観戦レポート!

2024.02.09 17:00

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2月3日開催のボクシング「第11回WHO'S NEXT 」は、世界ランカー小林豪己が王座奪還を目指して行われる、WBOアジアパシフィックミニマム級王座決定戦をメインイベントに、これから日本、アジアで頭角を表すであろう技巧派ボクサーが大集結!パワーだけでは勝ち残れない、まるで詰将棋のような頭脳戦、技術戦を堪能しよう!

本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届け!

配信開始前、または配信終了しています。

メインイベント 第6試合:10R/WBOアジアパシフィックミニマム級王座決定戦

01-11
©NAOKI FUKUDA

〇小林豪己(真正)vs ×金谷勇利(金子)3回TKO

小林豪己は、WBC8位、IBF8位、WBOアジアパシフィック4位、OPBF5位、日本3位にランクされる、前WBOアジアパシフィックミニマム級チャンピオン。軽量級離れしたハードパンチ、卓越した防御技術、そして冷静な判断力はすでに世界レベル。昨年8月、2度目の防衛戦でまさかの惜敗。その再起戦が、失ったタイトルの王座決定戦となった。

この王座を争う金谷勇利は、日本ミニマム級4位、鋭い踏み込みからのカウンターと、当て勘の良さで試合をコントロールするボクサーファイター。今回対戦する小林豪己は、相学高ボクシング部の1学年後輩。これまで通り豊富な手数でポイントアウトするのか、それとも倒しに来るのか。

注目のタイトルマッチは1回、強打の小林に臆することなく、金谷は先手で攻撃を仕掛ける。思いっきりよく踏み込んでの右クロスがオープニングヒットとなり、真っ向勝負する意気込みが感じ取れる。小林は早いショートの左フックをクリーンヒットさせ、隙を見逃さない。2回、金谷は接近しての打ち合いを仕掛け、右ボディからフックを打ち込むが、小林は右アッパーで対抗。すると今度は、金谷は左アッパーを返す、お互いに気持ちの入った打撃戦が展開される。右ストレートから左フックのタイミングを掴んだ小林は、このコンビネーションを連打し、金谷をロープに弾き飛ばしダウンを奪う!ここで小林は、大きな雄叫びを上げて感情を爆発させる。金谷は立ち上がるが、ここでゴング。つづく3回、小林はボディから金谷を崩しにかかり、意識を下に向かせてから、左アッパー、強烈な右ストレートが、がら空きの顔面にクリーンヒット!金谷は後ずさりながらダウン!ここまでかと思われたが、なんとか立ち上がりファイティングポーズを取る金谷。再開後、小林は一気呵成に連打を放ち、右フックがテンプルにヒットし、金谷が大の字に崩れ落ちたところでレフェリーは試合を止めた。

金谷勇利選手、強打の前チャンピオン相手に正々堂々と打ち合いに挑み、敗れたとはいえ、ハートの強さと勇敢さを見せた試合だった。

そして小林豪己選手、これまでボクシング技術にしても、メンタルにしても冷静沈着な“精密機械”のような隙の無い試合運びで勝ち進んできていたが、今回はこれまでにない熱いパフォーマンスだった!そこには、初黒星からの再起戦というプレッシャーもあるが、この試合の前日に逝去した、同じ真正ジムのジムメイト穴口一輝さんへの思いが大きかったのだろう。

セミファイナル 第5試合:8R/スーパーフライ級

02-8
©NAOKI FUKUDA

×廣本彩刀(角海老宝石)vs 〇川浦龍生(三迫)3-0判定

廣本彩刀は、元日本スーパーフライ級10位。アマチュア戦績48戦31勝17敗、蘆屋大学ボクシング部出身。基本に忠実なまとまりのあるボクサーで、スナップの効いた左ジャブ、右カウンターが武器。ただし、プロ戦績の2敗は共にサウスポーに敗れたもの。対する川浦龍生は、OPBF12位、日本3位。アマ戦績52戦38勝14敗、中央大学ボクシング部ではキャプテンを務めた。抜群のスピードとカウンターの破壊力が武器の攻撃的なサウスポー。

試合はこの日一番の大歓声の中でゴングが鳴った。サウスポー対オーソドックスの対戦だが、お互いにストレートパンチがヒットする距離が同じで、真正面からの打ち合いとなった。1回、先手は川浦だった。廣本の右ストレートの戻りに合わせて早い左ストレートを打ち込みクリーンヒット、廣本の動きが一瞬止まる。しかし、上体を立て直した廣本は左フックをお返し、今度は川浦がグラつく。そしてラウンド終盤、激しい打ち合いの中で再び川浦の左ストレートがヒット!たまらず廣本がダウン!初回から激しい打撃戦。2回、廣本はボディで突き放し、川浦の追撃をかわすと、3回は右ストレートのカウンターで迎え打つ。4回、5回は、手数では廣本が勝っているものの、パワーでは川浦が上回っており、一進一退、互角のシーソーゲームが続く。6回、タイミングを掴んだ川浦は、左ストレートをクリーンヒットし廣本を突き放し始めると、7回にはよりパワーパンチを廣本に打ち込み、完全に主導権を掌握。最終8回、リズムに乗る川浦は、廣本の豊富な手数をものともせず、得意の左ストレートを叩き込み続け、最後は押し切った。判定は、大差がついた3-0で川浦が勝利を収めた。

川浦龍生選手、中盤こそ廣本選手の手数に翻弄されたが、左ストレートさえ当たれば流れを引き戻せるタイミングの良さが光った一戦。かつて“アンタッチャブル2世”と呼ばれたディフェンスのリズムが、攻撃にも良い影響を与えているのでは。今後、名勝負を連発する予感。大歓声を送った応援団と共に、日本タイトルに大いに期待!

廣本彩刀選手、これまでプロ戦績の2敗は共にサウスポーに敗れたもの。今回もサウスポー相手に苦杯を舐めたが、最終ラウンドでも手数と闘志は衰えなかった。ボクシングセンスは確かなので、気持ちを切り替えて、次戦での復活を願う。

第4試合:8R/フェザー級

03-4
©NAOKI FUKUDA

〇嶋田淳也(帝拳)vs ×ジェトロ・パブスタン(比)2回KO

嶋田淳也は、WBOアジアパシフィック10位、日本15位。ボクシングの教科書から飛び出してきたかのような美しいフォームが特徴的な技巧派ボクサー。アゴを引き高いガードから正確無比な鋭いジャブで試合をコントロールし、これまで5戦全勝。対戦相手のジェトロ・パブスタンは、2016年にWBO世界バンタム級タイトル挑戦経験のあるキャリア豊富なベテラン。後にWBOアジアパシフィックバンタム級タイトル獲得、これがキャリア50戦目となるサウスポー。

日本の全勝ホープとフィリピンのベテランが対戦する試合は、嶋田の勢いが上回った。1回、豊富なキャリアがあるとはいえ、元々パブスタンはバンタム級の選手。フェザー級では嶋田が一回り大きく見える。しかしパブスタンは、積極的に接近し左右フックで攻め込み、嶋田のリズムを崩し乱打戦に持ち込もうとする。嶋田はガードでパンチをかわしつつ左ボディで応戦、技術の高さを見せる。2回、パブスタンはさらに圧力を強め強引に接近してくるが、そこで偶然のバッティング!嶋田は左目上をカットし血が流れる。テクニシャンの嶋田に対して、正攻法に戦っていては勝機はないと感じたパブスタンのラフな戦法に、長引けば苦戦する予感。しかし、嶋田は冷静にガードの上を打たせると、パブスタンの右フックにカウンターの左ボディを合わせダウンを奪う!リングに這いつくばり悶絶するパブスタン!カウント7で立ち上がるも、ダメージを考慮したレフェリーは10カウントし、嶋田がKO勝利した!

立ち上がったにも関わらずカウントを続行されたパブスタンは、レフェリーの裁定に不満そうではあったが、レフェリーの目を見てファイティングポーズを取っていなかったように見える。あまりにも見事なダウンだったので、立ち上がるだけではなく、試合続行可能なことをもっとレフェリーに認めてもらう必要があった。仮に継続して更に深いダメージを負う前に、勝負ありとレフェリーが判断したことは良かった事かもしれない。

嶋田淳也選手、もともとテクニックには定評があったが、力強さも付いてきた感じ。以前より筋肉も盛り上がっているように見えた。今のところ負けるイメージがないので、まだまだ連勝は続きそう!

第3試合:8R/ライトフライ級

04-3-(1)
©NAOKI FUKUDA

×川崎智輝(真正)vs 〇山本智哉(横浜光)判定0-3

川崎智輝は、アマ戦績47戦35勝12敗、近大ボクシング部では主将を務めた。矢吹正道の世界戦前には、豊富な手数とテンポの早いボクシングを評価され、仮想・寺地拳四朗としてスパーリングパートナーに抜擢されたことも。一方、山本智哉は、スムーズに繰り出される右リードジャブと、力みなく伸びてくる左ストレートで中間距離を支配するサウスポーのアウトボクサー。打たせずに打つボクシングを徹底し、ポイントアウトしたいところ。

試合は、懐深く構えるサウスポーの山本が優位に進める。シャープな右リードジャブで距離を作ると、左ストレートを打ち込む。積極的に攻め込もうとする川崎のガードの真ん中を突き刺す山本の左ストレートは、狙い打ちのようにクリーンヒット。2回以降、川崎は距離を詰めて打ち合いに持ち込むが、逆に右フックをカウンターで合わせられ、ペースを掴めない。接近戦でもいいパンチを放つ山本には、進化と研究の成果が感じ取れる。しかし4回、距離がグッと詰まり接近戦での打撃戦が多くなると、徐々に川崎の連打がヒットし始める。

5回以降、川崎の接近戦に山本が耐える展開に。山本は、前半とは反対にロープに押し込まれるシーンが増える。7回は両者、足を止めての打ち合いに!ほぼ互角の攻防で、どちらが取ってもおかしくないラウンド。おおむね、1回から3回は山本が支配し、4回から6回は川崎が優勢に進めてきたこの試合、最終回で勝敗が決する大接戦になった!そして最終8回、山本は本来の持ち味であるアウトボクシングに活路を見出す。ただし、ポイントアウトを狙うような“逃げ”ではなく、隙あらば左ストレートを打ち込む“攻め”のアウトボクシングで。

試合の流れが二転三転した技術戦の結果は判定へ。結果は3-0で山本の勝利!3名のジャッジのうち、2者が僅か2ポイント差の大接戦。ボクシングの採点で、2ポイントというのは1つのラウンドを取るか、取られるかの差。最終ラウンドで勝敗が決した。

敗れた川崎智輝選手、戦い辛いサウスポー相手に、最後までアグレッシブな攻撃姿勢を貫き苦しめた。後半に見せた攻撃をもう少し早いラウンドで出したかった。

勝利した山本智哉選手、サウスポーの利点を活かしたアウトボクシングと接近戦を織り交ぜた試合運びで、攻撃力の幅を見せた好ファイト!まだまだ伸びしろがある!

第2試合:8R/ミニマム級

05-3
©NAOKI FUKUDA

〇松本流星(帝拳)vs ×ジョマー・カインドグ(比)判定3-0

松本流星は、アマ戦績97戦77勝15敗。2021年全日本選手権、国体フライ級制覇など4冠を獲得しているアマチュアエリートのサウスポー。昨年2月のプロデビュー戦では、3回に鮮やかなKO勝利。アマチュアで磨いたスピードとフットワークに、プロ仕様の力強さが加わった。対するジョマー・カインドグは、ガードを固めて接近し、右アッパー、左フックを叩きつけるファイター。がっちりした体格で、少々打たれても下がらないタフネスが武器。

試合は、序盤から松本がスピードと豊富な手数でリードする。カインドグは強打のカウンターを狙いすぎて明らかに手数が少ない。2回には、松本が左ストレートと左ボディをクリーンヒットさせるが、飛び込み様にカインドグの右アッパーを被弾、後ろにバランスを崩し腰が落ちかけるが、強靭な足腰の強さで踏みとどまる!松本のスピードとテクニックは知っていたが、フィジカルの強さをも披露した。効いたパンチではないが、カインドグの攻勢を評価するジャッジがいるかもしれないラウンド。3回以降も松本はスピードと手数でラウンドを支配し、カインドグを寄せ付けない。そして6回、狙いをボディに定めた松本は、接近戦でのカインドグの右ストレートに、左ボディアッパーをカウンターで合わせクリーンヒット!カインドグは、ヒットした瞬間は耐えてみせたが、時間差でダメージが襲い、たまらずしゃがみ込む。松本は、タフなファイターから鮮やかなダウンを奪ってみせた。松本は立ち上がったカインドグに連打で猛攻をしかけるも、驚異の粘りで仕留めきれず。その後も7回、8回と松本は手数とコンビネーションで攻め立て、試合終了のゴングを聞いた。判定結果は3-0で松本の勝利!ジャッジ2者がフルマークを付ける大差判定勝ちで、デビューから3連勝を飾った。

松本流星選手、これまでKO負けのないタフな選手相手に、ダウンを奪う完勝で順調にキャリアを歩んでいる。今回は倒せなかったが、松本選手のスピード、タイミング、そしてパワーを持ってすれば、自ずとKO勝利が付いてくるのでは。

第1試合:4R/スーパーバンタム級

06-1
©NAOKI FUKUDA

〇岡森祐太(真正)vs ×福嶋滉平(T&H)判定2-1

岡森祐太は、これがデビュー戦の難聴ボクサー。京大経済学部在学中にアマチュアボクシングを始め、一般企業に就職後もジムに通い、昨年8月、感音性難聴を乗り越えてプロテストに合格。同じくデビュー戦の福嶋滉平は、昨年12月にプロテスト合格。長身でリーチがあり、ボクシングに恵まれた体格。

試合は、岡森が身長リーチで上回る福嶋の懐に入ろうと、頭を振りながら接近するのに対し、福嶋が長いジャブと右ストレートで突き放す展開。1回は、ほぼ互角のラウンドだったが、岡森が右フックでグラつかせるシーンが印象に残った。2回、福嶋の左ストレート、アッパーがヒットし、アウトボクシングで優位に試合を運ぶ。しかし3回、プレスを強めた岡森は、福嶋のジャブをかいくぐり左フックをヒットすると、思わず福嶋がバランスを崩しダウン。パンチのダメージではなく、足を取られて尻もちを付いたものだが、岡森のパンチがヒットしていたのも事実なので、ダウンの裁定は致し方ない。この回はダウンがあったので、岡森が確実に2ポイントのリード。このリードは非常に大きく、仮に1回、2回を福嶋がポイントを取っていたとしても、3回のダウンでイーブンに。もし1回が岡森のポイントならば逆転されている計算。あと1ラウンドでダウンを奪い返さなければ、福嶋に勝機はない。迎えた最終4回、岡森は左右フックを振り回しグイグイ攻め込むが、福嶋がアウトボクシングで立て直し、なんとか岡森の猛攻を捌き切った。

判定は2-1で岡森の勝利、ジャッジの2者が38-37で岡森を支持する一方で、1者がダウン以外のラウンドを全て福嶋に付けた37-38の採点。最後までスリリングな接戦だった!

岡森祐太選手、ゴング、レフェリーの声、セコンドの指示も聴こえないリングの中で、ハンディキャップを跳ね返す好ファイト!プロ初勝利おめでとう!

福嶋滉平選手、アンラッキーなダウンが勝敗を分けたが、長身を活かしたアウトボクシングに磨きをかけて、手強いボクサーに成長することに期待!


8R/バンタム級
矢代博斗(帝拳)vs アルビン・カミケ(比)試合中止
矢代博斗、体調不良により棄権。

今回は大会の開始前に、2月2日に逝去された穴口一輝さんへの黙祷が捧げられた。ボクシングは、プロライセンスがなくてはリングに立つことは出来ないし、そのためには自分を守るトレーニングを積み、フェアに戦うために階級を分け、上半身の正面以外は攻撃してはいけないなど厳しいルールがある。全てはこのスポーツの安全性を高め、ボクサーが無事にリングを下りるためにある。それなのに、このような事故が起きてしまい胸が痛む。日本ボクシング史に残るような素晴らしい試合をした穴口一輝さんのご冥福を心よりお祈りします。


U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.11』を2024年3月4日まで配信中!

配信開始前、または配信終了しています。

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