「WHO'S NEXT Vol.8」観戦レポート!勝つのはファイターか?ボクサーか?
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「WHO'S NEXT Vol.8」観戦レポート!勝つのはファイターか?ボクサーか?

2023.11.13 18:00

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今回の対戦カードは、メインイベントの日本フライ級タイトルマッチ「飯村樹輝弥vs村上勝也」をはじめ、日本ライト級挑戦者決定戦「浦川大将vs 三代大訓」など、ファイター対ボクサーの対戦が多数組まれた。

果たして、“ファイター”が持ち前のパワーで接近し、強打でなぎ倒すのか?
または、“ボクサー”がフットワークと技巧で、打たせずに打ち勝つのか?

本記事では、“熱烈ボクシング応援団”目線での観戦レポートと対戦結果をお届けする!

配信開始前、または配信終了しています。


メインイベント 第6試合:10R/日本フライ級タイトルマッチ

第6試合 飯村VS村上
ⒸNAOKI FUKUDA

〇飯村樹輝弥(角海老宝石)vs ×村上勝也(名古屋大橋)3-0判定

前回の試合では、メキシコの大きな帽子“ソンブレロ”姿でリングイン、メキシカン的ファイトスタイルでタイトルを獲得した飯村樹輝弥。なんと今回はソンブレロなしで登場!このニュールックに、王者となった飯村の決意と進化を予感させる。

挑戦者、村上勝也は長身で攻撃的なボクサータイプ。アウトボクシング主体だが、打ち合って勝機を見出し現在6連勝中。人生初の後楽園ホールで日本タイトルに初挑戦する。

両陣営の大応援団が声援を送る中、試合開始のゴング!1回開始早々、飯村が放ったいきなりの左フックがヒット!そのパンチが速い!以前よりハンドスピードが速くなっている!村上が、飯村の打ち終わりに反撃しようにも、その時にはポジションを変えていて当たらない。逆に、飯村の速い右ストレートがヒットし膝が落ちる。

ハンドスピード、フットワーク両方のスピードで完全に試合を支配した飯村は、クリーンヒットを連発し、打たせずに打つボクシングでポイントを重ねる。ただし、このハイペースが長く続けられるとは考えにくい。どこかで失速するはずで、村上はパンチを返しながら耐えてチャンスを待つ。しかし、最終回まで飯村の動きは止まらず、村上は流れを変える事が出来なかった。結果は、大差がついた飯村の判定勝利!初防衛に成功した。

村上勝也選手としては、よく手を出し最後まで食らいついたが、ダメージを与えるような強いパンチを打ち込めなかった歯がゆさが残りそう。

飯村樹輝弥選手は、ホルヘ・アルセのようなメキシカン・スタイルから、“スピードスター”に進化した!まるで、ワシル・ロマチェンコのようだった。ただし、あれだけクリーンヒットを当てたのなら、ダウンの1つでも欲しいところ。それは次戦以降の課題として、更なる進化を期待したい!


セミファイナル 第5試合:8R/日本ウェルター級挑戦者決定戦

第5試合 豊嶋VS石脇
ⒸNAOKI FUKUDA

〇豊嶋亮太(帝拳)vs ×石脇麻生(石田)2-0判定

元WBOアジアパシフィック、元OPBF東洋太平洋王者で、日本、そしてアジアのウェルター級を牽引してきた豊嶋亮太の再起ロード第2戦。再び世界へ浮上するための足がかりとして、日本タイトル挑戦権を狙う。

対する石脇麻生は、豊富な手数と多彩なパンチで、打ちつ打たれつのアグレッシブなファイトスタイルが信条。実力者との対戦経験も多く、敗戦から力を付け強くなってきた実戦派。だから、今が一番強いと言えるのでは。

試合は、期待にたがわぬ大激戦となった!序盤は、ガードを固めジャブ、ワンツーでプレッシャーをかけ、重量感のある右ストレートを打ち込む豊嶋の安定感が際立つ。再起第2戦ということで大事に戦いつつ、徐々に攻撃を強めていく印象。この戦い方でフィニッシュ出来れば、最高のゲームプランだったに違いない。しかし中盤以降、石脇の反撃が始まる。

豊嶋は強い左ボディで石脇のスタミナを削り、攻撃の幅を広げペースを掴んだと思いきや、石脇の驚異の粘りで、パンチを返される展開に。石脇は上体を柔らかく使い、豊嶋のパンチの威力を殺しながらスムーズに手を出す。豊嶋の重い1発に対し、石脇は軽い2発を返し主導権を渡さない。終盤、石脇はこれまでの劣勢を感じさせない、堂々とした打ち合いを見せるが、相打ちではパワーに勝る豊嶋に分があった。石脇は、深いダメージを負いながらも勝利を信じてリングに立ち続けた!

判定はジャッジ3人のうち、1人が引き分けの2-0。豊嶋の手が上がった。

これまでの実績や期待値から、どうしても豊嶋亮太選手に偏り観戦してしまうバイアスがかかる中で、石脇麻生選手の健闘が光った一戦!敗れはしたが、評価を上げたことは間違いない!

第4試合:8R/日本ライト級挑戦者決定戦

第4試合 浦川VS三代
ⒸNAOKI FUKUDA

×浦川大将(帝拳)vs 〇三代大訓(横浜光)0-3判定

日本ランク2位、浦川大将は、固いガードでプレッシャーをかけ、射程圏内に入った瞬間に捻じり込むような右強打を叩き込むファイター。そのパンチは的中率、キレ、破壊力ともにハイレベル。2021年全日本新人王が日本タイトル挑戦権をかけてリングに上がる。

そして日本ランク1位、三代大訓は元OPBF東洋太平洋スーパーフェザー級王者。元WBOスーパーフェザー級王者の伊藤雅雪に判定勝ちし、評価を高めたクレバーなテクニシャン。ライト級に階級を上げタイトル獲得を目指す。典型的なファイター対ボクサーの対決はいかに!

試合は、立ち上がりから頭をつけた接近戦で始まる。なんと三代は、アウトボクシングでポイントを稼ぐこれまでのパターンを変えてきた!接近戦では、浦川の強打が有利と予想されたが、三代も力負けせずに手数を返す。浦川としては、このチャンスを逃さず確実にダメージを与えたいところだが、いつものように手が出ない。おそらく、練習でイメージしてきた対戦相手とは、まるで違う相手と戦っているのだろう。

中盤以降、流れを変えようと圧力を増す浦川だが、リズムに乗り手数が止まらない三代から、なかなか先手を奪えない。逆に三代は、接近戦でも多彩なパンチでガードの隙間にクリーンヒットを打ち込む。そして最終回、ファイターの浦川をTKO寸前まで攻め込んだ。判定は3-0で三代の勝利!日本タイトル挑戦権を獲得した!

接近戦なら浦川大将選手がパワーで打ち勝つと予想していたが、三代大訓選手のフィジカルとテクニックがそれに勝った。ライト級に台風の目、現る!

第3試合:8R/59.4kg契約

第3試合 波田VSビャオ
ⒸNAOKI FUKUDA

〇波田大和(帝拳)vs ×リウ・ビャオ(中国)5回TKO

左の強打でKOの山を築いてきたサウスポーの波田大和。那須川天心選手と強化合宿するなど、帝拳ジム次世代ホープの一人。会場を埋めつくす応援団に人気の高さをうかがわせる。普段はスーパーフェザー級が主戦場だが、今回はライト級リミット内での試合となる。

対するリウ・ビャオは、中国国内で4戦全勝のサウスポーで、海外での試合は初。上背があり頑丈な体格は、ナチュラルなライト級そのもの。

サウスポー同士の一戦は、右リードジャブの差し合いで始まる。リウ・ビャオのデータが少ないので、どうしても様子を見る時間が長くなる。リウ・ビャオはまだ4戦のキャリアだが、めり込むようなパンチの強さは見て取れる。波田は、スピードとキレのあるコンビネーションでチャンスを伺っている様子。そして迎えた5回、リウ・ビャオの全ての動きを読み切った波田は、狙いすました左ストレートをカウンターで強く打ち込むと、最後は右フックでフィニッシュ!リウ・ビャオを豪快にキャンバスに沈めた。

波田大和選手は、パンチがあり、何より華がある!早くタイトルマッチでの勇姿が見たい!


第2試合:8R/スーパーバンタム級

第2試合 池側VS岸根
ⒸNAOKI FUKUDA

〇池側純(角海老宝石)vs ×岸根知也(ミツキ)6回TKO

アマチュアエリートとして、充分な実績を引っ提げてプロデビューした池側純。これまで、強敵、難敵と拳を合わせて経験を積んだテクニックのあるサウスポーで、未だ無敗。

一方、岸根知也は、豪快な右フック、ガードを突き破る左ストレートでガンガン攻め込む、ファイタータイプのサウスポー。このテクニシャン対ファイターによるサウスポー対決、何が起こるかわからない!

試合はジャブの差し合いから始まる。サウスポー同士の試合では、前手である右リードパンチの使い方が勝負を左右する。スピードで勝る池側は、岸根のジャブにダブルジャブを返し主導権を握る。身長リーチで分が悪い岸根としては、速い踏み込みで接近し得意の右フックを当てたいが、池側はカウンターで迎え撃ちそれを許さない。それでも、なんとか接近したい岸根は、思いっきり踏み込んで左フックを打ちに行くが、そこで池側の頭部と岸根の顔面が偶然のバッティング!岸根は足元がふらつくほどのダメージを負う。たっぷり時間を取って回復に努めたが、ダメージは抜けきれてないように見えた。そのせいか、岸根の踏み込みが単調になり、これまで以上に池側のカウンターがヒットする。そして6回、池側の右アッパーが芸術的に決まり痛烈なダウン!カウント9で立ち上がった岸根には、反撃する力は残っておらず、棒立ちで連打を受けたところでレフェリーストップ。池側が自身2度目のKOでの勝利となった。

岸根知也選手のパンチは最後まで生きていたので、アンラッキーなバッティングが悔やまれる。勝利した池側純選手は、パワーも兼ね備えたテクニシャンに進化した!これで、KO勝利がもっと増えそう。もう弱点が見当たらない!

第1試合:8R/ライト級

第1試合 富岡VSトンテップ
ⒸNAOKI FUKUDA

〇富岡樹(角海老宝石)vs ×トンテップ・テーヤウォン(タイ)

初代日本ライト級ユース王者で順調にキャリアを積んでいた富岡樹。しかし、ビッグネームの中谷正義、吉野修一郎に連敗し、一時リングから遠ざかっていたが、1年5ヵ月ぶりにカムバック。対戦相手のトンテップ・テーヤウォンは、この試合が今年5試合目の手数の多いボクサーファイター。

試合は開始早々、富岡のシャープなジャブが冴えわたる!間合いを測るジャブではなく、ダメージを与える威力を持ったジャブを連射し、そのジャブでトンテップからダウンを奪う!

その後もジャブ、ジャブ、ジャブでリズムを作ると、今度はコンビネーションもスムーズに出始める。ここまでは、ブランク明けで試合勘を確認しながらのボクシングだったが、富岡が一段ギアを上げた。相手の注意を上に持たせてから、脇腹に突き刺す左ボディの感触を掴むと、そのボディを集中打!トンテップをリングに沈め、テンカウントを聞かせた。

富岡樹選手にはイージーな相手だったかもしれないが、連敗から再浮上するには、勝利のイメージが何よりも大切。これから勝ち続ければいいのだ!お帰り、富岡樹選手!


今回は、ファイター対ボクサーの構図に注目していたが、池側純選手、三代大訓選手、飯村樹輝弥選手は、これまでのスタイルから変化したファイトスタイルで観客を驚かせ、魅了した。どんなに完成度の高いボクサーでも、鍛錬して進化し続けている!

つくづくボクシングの奥深さを再確認できた大会だった。

U-NEXTでは、今回レポートした『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE BOXING vol.8』を2023年12月2日まで配信中!

配信開始前、または配信終了しています。

次回、12月2日『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT vol.9』日本ウェルター級タイトルマッチ「坂井祥紀VSシーサー皆川」もお楽しみに!

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