金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)がとうとうスタートした。これから、犯人の考察や、主人公たちが困難に立ち向かう姿を見てあれこれ悩み、悶える日々が続く。ドラマの世界に浸る最高の時間だ。ただ、改めて驚いたことがあった。それは、あの俳優の──。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
山下心麦(広瀬すず)は、元警察官の父・春生(リリー・フランキー)と2人暮らし。春生は、心麦に「愛することは、信じること」を教え、彼女にとっても心の支えとなっている存在だ。どうしたって年頃になると反発してしまうものだが、2人のやりとりには愛や絆しかなく、この親子物語をもっと見たい(スピンオフなどで)、と贅沢なことを思ってしまった。
クリスマスイブの日、いきつけの屋台でラーメンを食べ、2人は別れた。ただ、それが山下親子の最後の会話だった。春生はその日、殺されてしまったのだ。
容疑者の名前は遠藤友哉(成田凌)。彼は、22年前、一家6人が殺害された「東賀山事件」で死刑判決を受けた遠藤力郎(酒向芳)の一人息子である。警察はその恨みもあって、捜査の中心にいた春生を殺害したのではないか、と睨んでいた(そう仕向けている可能性もある)。もちろん、証拠もあった。
そんななか、心麦はラーメン屋の店主・染田進(酒井敏也)より、春生から預かったという封筒を渡される。封筒のなかには、300万円と手紙が入っていた。手紙には、自分が殺され、以下の人物が逮捕された場合、それは冤罪であるというものだった。そのなかには、容疑者とされている遠藤の名前も入っていた。
300万円は弁護士の松風義輝(松山ケンイチ)に、友哉の弁護を依頼するための費用だった。心麦は実際に会いに行くも、松風は春生と面識がないという。松風としても様々な懸念点があり、断る方向だったが、彼女の「父親を信じる力」に引っ張られ、弁護を引き受けることに。
松風は、友哉が冤罪ではない場合を含め、今後起きる可能性があるバッドエンドを心麦に並べる。しかし、「私の目を信じてますから」と彼女の意志は固い。松風も改めて決心し「お父さんを信じる君を信じるよ」と返した。
……サスペンスとして、これ以上のないスタートと、時折厳しい意見を言いながらも、クスッとしてしまう松風と心麦のやりとりの“バランス”が最高に心地良かった第1話。2人の間を取り巻くキャラクターも、松風の幼なじみで、彼と共同で事務所を立ち上げた弁護士・波佐見幸信(森崎ウィン)、心麦に怪しく近づく記者・神井孝(磯村勇斗)など、多種多様。これからどんな展開が待っているのか、次回以降も必ず見たくなる幕開けだった。
なぜ、ここまで物語に没頭できたのか。ドラマの展開もさることながら、キャストの力に持っていかれた部分も大きい。第1話を見れば、なぜ制作陣が心麦役を広瀬にオファーしたのか理由が分かるだろう。春生との親子の会話はもちろん、春生が亡くなって、部屋でひとり「泣くな……」と声を震わせたところ、松風と話した夕焼けのシーン、「私の目を信じてますから」と述べた場面、書ききれないほどハイライトがある。広瀬は、心麦の目には見えない「心じる力」を体現し、すっかり視聴者を惹きつけてしまったのだ。
なかでも驚いたのは、広瀬の表情、声のトーン、言葉の抑揚、目の動き、佇まいなど、一秒たりとも見逃したくないと思わせる「吸引力」と、サスペンスの世界に、広瀬が舞い降りたときの爆発力である。快活な役だけでなく、シリアスな役や物語との相性も抜群なのか……。
『クジャクのダンス、誰が見た?』は、今後も、物語の展開や考察を楽しむだけでなく、広瀬をはじめとしたキャストの演技にも注目していきたいと思う。第2話も楽しみだ。
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