「最悪」だった。目をそらしたくなった。登場人物のことを思うと、胸が痛くて仕方がなかった。なんでこんなことに……。『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)最終話。ある人物から語られた「東賀山事件」の真相、山下春生(リリー・フランキー)がこの世を去った理由、すべてが地獄だった。ただ、ぼんやりとだが、光もあった。それは確かだ。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
山下心麦(広瀬すず)、松風義輝(松山ケンイチ)、神井孝(磯村勇斗)が林川家に行くと、血だらけになった赤沢正(藤本隆宏)と、そこに佇む赤沢京子(西田尚美)がいた。
逮捕された京子と面会した心麦は、東賀山事件について詳しく聞く。幼いころ、5歳の弟を餓死で失った京子は、成人して正と結婚。守(野村康太)が生まれ、この子だけは幸せにする、と心に誓っていた。
そんななか、新しく始めた事業で林川安成(野間口徹)と出会う。正と別居したあと、安成の子どもを妊娠していたことが分かった。それが歌(=心麦)だった。
京子が林川家を訪れた日、安成の妻・里子が自身の子どもを殺害。襲いかかってきた里子を安成自身が絞殺した。林川家の名誉を守るべく、安成は「家族全員殺されたこと」にするため、自ら命を絶った。
現場近くで別の事件の聞き込みをしていた春生が、通報を聞きつけて現場に急行。一番乗りだった彼が目にしたのは、悲惨な現場と泣きじゃくる歌だった。1階から2階のベッドに彼女を移動させたあと、現場にやって来た正たちを案内した。このことで、遠藤力郎(酒向芳)の“赤ちゃんがいた場所”についての発言に矛盾が生じてしまう。春生が真相を言わなかったことで、力郎は逮捕され、死刑判決を受けた。
京子が春生を殺害した真相は、裁判所で明らかとなった。クリスマスイブ。「誇らしい父親でありたい」と、事件を詳らかにしようとした春生と、守たちの人生がめちゃくちゃになる、との考えの京子が対立。京子は春生を薬で眠らせたあと、放火して殺害した。さらに現場近くに呼び出した遠藤友哉(成田凌)に捜査の目がいくように仕向ける──。
「最悪」である。京子が心麦に土下座していたが、その姿を傍聴席から見る守の涙がなんとも切なく、胸が苦しくなった。嘘に嘘を重ねて、さまざまな人の人生を狂わせた京子。泣きじゃくって謝っていたが、彼女に同情する気持ちは一切湧かなかった。もちろん、他の加害者にも。
最終話で涙が止まらなかったシーンがある。それは、遠藤親子が再会したシーンである。父親を見たとき、友哉はいまにも泣きだしそうな顔で「老けたな」とつぶやく。面会で見せていた鋭い表情はなく、とても柔らかい目をしている。もしかしたら、これが本来の彼なのかもしれない。
「まずはおかえりだべ」と言う力郎は、あの日渡せなかったプレゼントを渡す。それは、いまの友哉にとっては、ずいぶん小さくなってしまったグローブだった。力郎を連れてきた神井も、心麦たちに見せていた刺々しさはなく、なんだか嬉しそうだ。
当初はかしこまっていた力郎だったが、神井とは当時の雰囲気に戻り、楽しそうにやりとりをしている。それを穏やかな表情で見つめる友哉……本当に良かった。そもそもあってはならない冤罪だったが、これから遠藤親子の幸せが続けばいいな、と本気で思う。
このシーンは、成田凌、酒向芳、磯村勇斗という素晴らしい俳優陣の演技に圧倒された時間でもあった。「このトーン、この表情、この間(ま)でしかありえない」という針の穴に糸を通すような演技を見せてくれて、涙が止まらなかった。
そしてラスト。心麦と松風の会話が普段通りで安心した。とても辛く悲しい事件だったが、思えば、松風と心麦のやりとりにいつも救われていたように思う。今度は、松風弁護士とパラリーガルの心麦が難事件に挑む物語が見たい、と思うのは私だけだろうか。
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