TBS系「日曜劇場」放送中のドラマ『海に眠るダイヤモンド』。高度経済成長期の長崎県・端島と現代の東京を舞台に、2つの時代のドラマを同時進行で描く第3話は、“カネ”が人を狂わせる様が生々しく展開されていく。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
物語は1957年の端島から始まる。テレビの普及率は全国平均より高く、都会の流行も入ってくる。本土と島を結ぶ待望の地下水道が開通し、炭鉱も島も活気に沸く端島では、人口も増え最盛期を迎えていた。ある時、銀座食堂の看板娘である朝子(杉咲花)が食堂の食い逃げ犯と思って捕まえた男(渋川清彦)が映画プロデューサー夏八木を名乗り、朝子に「女優にならない?」と誘う。インテリ気取りで勝ち気な百合子(土屋太鳳)をそばで見てきた朝子なだけに、心が揺れ動く。
夏八木の主導で映画を撮影する話が進み、端島を舞台にした映画『燃ゆる孤島』の続編を作るべく、島民を巻き込んでのオーディションが始まった。「映画のワンシーンになるといつもの食堂が輝いとった」と『燃ゆる孤島』の感想を語る杉咲の笑顔がまぶしい。子どもの頃の『鞍馬天狗』を名乗る少年との思い出を胸にオーディションに臨んだ朝子は、選考を勝ち抜いて近所の人々もまんざらでもない気分に。鉄平(神木)も夏八木の言葉をすっかり信じてしまうが…。
と、ここで舞台は21世紀の東京に。神木隆之介扮するホストの玲央が、謎の老女いづみ(宮本信子)の家族と初めて顔を合わせた。
いづみには息子の和馬(尾美としのり)と娘の鹿乃子(美保純)がいて、それぞれに息子の星也(豆原一成)と千景(片岡凛)がいるが、家族仲はよろしくない様子。
子どもの学歴でマウントを取り、いづみが築いた財産のことでもめるところは生々しい。財力もあり、家族もいる。いまだ会社を経営していてなに不自由ないかに見えるいづみだが、「間違えた気がする。私の欲しかった人生って、こんなだったのかしら」と玲央を前にぽつりと呟いた。
ある日、玲央は千景がホストといるところを目撃してしまった。千景はお金を渡して口止めしようとするが、玲央は相手ホストの素行の悪さゆえに家族に報告。すると、千景がため込んだ400万円の売掛金を肩代わりすると言って、その場はすぐにお開きとなってしまった。400万円は千景の家族にとってははした金にすぎない。何でもカネで解決しようとする冷淡さと、それができてしまうほどの財産があること。自身もノルマに追われる玲央ですら、人の世の無情さを思い知った瞬間だった。
いづみの家族の内実を知った玲央は「本当は俺と結婚する気もないし、財産を譲る気もないでしょ?」「なんか1人だよね」といづみを揺さぶろうとする。ここまでいづみが玲央をリードしてきたが、今度は玲央がいづみと家族を翻弄していきそうな予感が漂っている。
端島でも、朝子が抱いた夢ははかなくついえてしまった。映画の計画は金に困った夏八木がでっち上げたフェイクで、彼は炭鉱組合の金庫をあさって高飛びしてしまったのだ。「世界を壊すのは、いつだって権力と金だ」という夏八木自身のつぶやきを証明するかのような出来事だった。
カネが人を狂わせていくのは現代も過去も変わらない。そんな中で、鉄平と朝子が目にする無人の中ノ島に咲く桜、夜の海上に輝く端島。そして、「ちょっとだけ食堂の朝子じゃない人になりたかった」とはにかむ朝子と、初恋の鉄平からもらった花瓶を今なお大事にしている朝子。カネや欲にまみれた日常だからこそ、儚く健気な朝子の輝きが、余計にまぶしく感じられるエンディングだった。
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脚本・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子× プロデューサー・新井順子によるヒューマンラブエンターテインメント
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