いよいよ最終盤にさしかかった日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』。第8話では、端島が活気を失う中でさえ、鉄平(神木隆之介)と朝子(杉咲花)は炭鉱の復活に希望を感じていた。そして現代でも、玲央(神木)の人生が大きく動いていく兆しが見え始めた。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
第7話で発生した坑内火災は採炭を不可能にしただけでなく、鉄平の兄・進平(斎藤工)の命まで奪ってしまった。多くの鉱員と家族が島を離れる中、残った職員は新しい石炭層にたどりつくため坑道を掘り進めていた。
端島と同じく、荒木家も支えを失ってしまった。一平(國村隼)は病魔に冒され、進平とリナ(池田エライザ)の息子・誠が無事に成長してくれることが、一家のひとすじの希望。そんな絶望的な状況の中でも、鉄平と朝子は炭鉱の復活、そして2人で幸福になることに希望を見出し端島で力強く暮らしていた。
一方2018年の東京では、玲央が居候するいづみ(宮本信子)の家に店のホストが押しかけてくる。店に上納するツケを溜めていたためで、殴られた挙句に今月中に50万円用意することを言いつけられてしまった。玲央を心配して後をつけてきた聖也(豆原一成)は法外な取り立てに対して「お店におかしいって言ったことないの?」とつぶやく。すると玲央は、初めて自分の置かれている環境に疑問を抱き始めた。
現代の朝子=いづみの長女・鹿乃子(美保純)と長男・和馬(尾美としのり)は朝子に認知症の検査を受けさせ、社長の座から引きずり落とそうと画策していた。和馬は「姉に言われたことをやっているだけ」と積極的な関与を否定するが、玲央は「アンタと同じで、俺もドブ石。クズいね」とつぶやく。実は玲央は、ホストに貢ぐために高級キャバクラで働いていたアイリ(安斉星来)のホスト離れを引き留めた過去があった。結果アイリは貢ぎ続けるために、今度は風俗で働くことになってしまった。積極的ではないが、汚いことをやってきた自分は和馬と同じではないか…玲央は思わず「鉄平だったらどうしてたんだろう?」と口にする。
端島では、その鉄平がジレンマに立たされていた。戸籍がないリナと誠には保険がなく、病気の誠を医者に診てもらうことができない。鉄平は母から、リナと夫婦になることを勧められ、誠を荒木家の子どもとして届け出ることに。朝子との結婚を約束していた鉄平が、朝子と家族の間で悩んだであろうことは想像に難くない。その表情には決意が表れていた。
銀座食堂では、後に朝子の夫となる虎次郎が朝子に好意を抱いている様子がうかがえる。鉄平とリナの関係に嫉妬しつつも朝子は気にしているそぶりを一切見せず、石炭が採れて端島が再びにぎわう日をただひたすら健気に待っている。
ところが、現代に視点が戻ると朝子は「裏切られてるのは、慣れてるから」と、今までになかった弱気な顔を見せる。結婚の約束をした鉄平とは夫婦になれず、一度は鉱脈に届いた端島炭鉱も最後は閉山してしまった。鉄平は島から姿を消してしまい、日本中に緑をあふれさせたいと興した会社は、自身の子どもたちから乗っ取られようとしている……そんな中、朝子は会社の売却を決意。子どもたちに会社を継がせず、時代を超えて受け継がれる意志を残すという思い切りを見せた。
この決断に、長女の鹿乃子は「母は認知症」だと騒ぎ立てるが、和馬は立ち上がり認知症と書かれた診断書を破ってみせた。そして「あぁ、あぁ〜さっぱりした」、実に晴れやかな笑顔を見せた。
そんな和馬に触発されたのか、玲央は「本気で笑って、生きたいんだ」と、風俗店に出勤しようとするアイリを呼び止め、クラブの悪行の証拠を握って警察署に駆け込む。いつも端島の人のために駆けまわっていた鉄平の意思が、日記を通じて玲央に受け継がれたのか。警察に洗いざらい話してスカッとした玲央は、自分の人生を取り戻したかのように見えた。
そして端島では、ついに良質な石炭の採掘に成功。島に残った炭鉱夫とその家族、島に暮らす全員が、半年の間つよくつよく願い続けてきた炭鉱復活は、涙なしには語れない。満面の笑みで喜びあう鉄平と、島の隅々から沸き上がる歓声は、この時代、この熱狂が確かに存在していたのだと確信できるシーンだった。
だが端島の喜びは束の間。第1話の冒頭で、赤ちゃんを抱いて船に乗っていたのはリナで、船を漕いでいたのが鉄平だと明らかになる。鉄平はなぜ、島を去らねばならなかったのか?朝子と約束していた鉄平はどこに消えたのか──50年越しのドラマが決着する最終回は、端島の人々がたどった運命だけでなく、その運命の選択に込めた思いにも注目したい。
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