ひとりの力ではどうにもならない悲劇や後悔に直面した時、どうすれば立ち直れるのか?日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第4話は、端島の人々に影を落とした戦争の記憶に焦点が当たる。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
前回、中之島での花見で距離が縮まった鉄平(神木隆之介)と朝子(杉咲花)。「朝子はかわいいんだ」と賢将(清水尋也)にのろけるほど鉄平はウキウキ気分になっている。
百合子(土屋太鳳)は炭鉱の組合紙の編集者に転じていた。「いっそ本土に行って、女社長にでもなろうかな」との百合子のひと言から視点は2018年の東京へ。こちらでは社長のいずみ(宮本信子)が玲央を会社の第二秘書に任命、しかも「次期社長候補」とまで公言した。玲央を気に入らないいずみの家族は当然、納得がいかずに玲央の血縁関係を調べようと躍起になる。
家族の間で「玲央はいずみの孫」という説が浮かぶ中、少しづつ現代パートの人間関係が明らかになっていく。いずみは夫と20年以上前に死別。一方の玲央は父親の顔を知らず、母親も「どっかて男と暮らしてんじゃない?」とそっけない。「母親の人」「父親の人」という玲央の言葉遣いにも、冷え切った親子関係をうかがわせ、「先祖とか、俺いないし」と家族という存在自体を突き放しているかのようだ。
一方端島では長崎の夏の風物詩「精霊流し」が近づいてくるが、以前よりも百合子の朝子への当たりがきつい。第2話でスクエアダンスを手ほどきするシーンでは、まだ”おぼこい島の娘”朝子に対する心の余裕が見え隠れしていたが、今回は違う。「あの子が楽しそうにしていると、腹が立つの」という土屋のセリフのトーンは、心境の変化を的確に表していた。
百合子の朝子への嫉妬は、単に恋心からくるものではないようで、ここまで小出しになってきた彼女の過去──トラウマのような記憶がはっきりしてくる。
母の寿美子(山本未來)と姉と共にキリスト教を信じていた百合子。1945年8月9日、彼女は長崎に行くのを嫌がって隠れていたが、無邪気な朝子の“告げ口”で母と姉に見つかってしまう。そして渋々行った長崎に原爆が投下。自身は助かったものの長崎の地獄絵図を目撃した上に姉は被爆死、母は原爆症で苦しみ続けていた。朝子を苦しませたくない、との思いからその事実を朝子に伝えない百合子の優しさと、にぎやかな銀座食堂を営む朝子一家との対比に苦しむ百合子、優しいからこそつらく当たってしまう百合子がとても切ない。
鉄平の家庭でも実は2人の姉が福岡の空襲で命を落とし、長兄はビルマで戦死。気丈に見える一平(國村隼)とハル(中嶋朋子)にとって、娘を疎開させ息子の出征を認めてしまった後悔はいかばかりか。一平が賢将の父・辰雄(沢村一樹)にこぼしたという「あいつの子どもは戦争で一人も死ななかった」という言葉が、重い。
終戦の時、子どもだった百合子は、「神は何もしてくれない」と、無慈悲に母や姉を失った怒りをぶつける。一平も、良かれと思って島から子どもたちを送り出した後悔が忘れられない。それらを受け止めるのが、島の和尚を演じるさだまさし。長崎で生まれ、長年鎮魂の思いも歌に込めてきた彼をこの配役にあてたことが活きてくる、絶妙なキャスティングだ。
原爆症に苦しんでも今際の際まで神を信じていた寿美子と、仏に仕えながら「神も仏もいない、全ては人の業」と語る和尚。そんな中、賢将が台風の夜に百合子が投げ捨てたロザリオを見つけてくれた。賢将のおかげでロザリオが百合子のもとにかえってきたことを「奇跡」と言うのなら、もう少し人が運命を切り開く可能性に賭けてもいいし、それこそが寿美子が信じてきた「神の思し召し」なのかもしれない。朝子に浴衣を選んでやり、過去に踏ん切りをつけた百合子からは、そんな強さが感じられた。
一方で、百合子や朝子と対称的な生き様が予想されるのがリナ(池田エライザ)だ。偽名を使い、拳銃や謎の大金を隠し持っている彼女は、かなり大胆に戦後の混乱期を生き抜いてきた人物なのではないだろうか。続く第5話では、リナを探している人物が登場。リナの人には言えない過去が明らかになりそうだ。
第4話はこちらから
第5話予告編はこちらから
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ひとりの力ではどうにもならない悲劇や後悔に直面した時、どうすれば立ち直れるのか?日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第4話は、端島の人々に影を落とした戦争の記憶に焦点が当たる。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
前回、中之島での花見で距離が縮まった鉄平(神木隆之介)と朝子(杉咲花)。「朝子はかわいいんだ」と賢将(清水尋也)にのろけるほど鉄平はウキウキ気分になっている。
百合子(土屋太鳳)は炭鉱の組合紙の編集者に転じていた。「いっそ本土に行って、女社長にでもなろうかな」との百合子のひと言から視点は2018年の東京へ。こちらでは社長のいずみ(宮本信子)が玲央を会社の第二秘書に任命、しかも「次期社長候補」とまで公言した。玲央を気に入らないいずみの家族は当然、納得がいかずに玲央の血縁関係を調べようと躍起になる。
家族の間で「玲央はいずみの孫」という説が浮かぶ中、少しづつ現代パートの人間関係が明らかになっていく。いずみは夫と20年以上前に死別。一方の玲央は父親の顔を知らず、母親も「どっかて男と暮らしてんじゃない?」とそっけない。「母親の人」「父親の人」という玲央の言葉遣いにも、冷え切った親子関係をうかがわせ、「先祖とか、俺いないし」と家族という存在自体を突き放しているかのようだ。
一方端島では長崎の夏の風物詩「精霊流し」が近づいてくるが、以前よりも百合子の朝子への当たりがきつい。第2話でスクエアダンスを手ほどきするシーンでは、まだ”おぼこい島の娘”朝子に対する心の余裕が見え隠れしていたが、今回は違う。「あの子が楽しそうにしていると、腹が立つの」という土屋のセリフのトーンは、心境の変化を的確に表していた。
百合子の朝子への嫉妬は、単に恋心からくるものではないようで、ここまで小出しになってきた彼女の過去──トラウマのような記憶がはっきりしてくる。
母の寿美子(山本未來)と姉と共にキリスト教を信じていた百合子。1945年8月9日、彼女は長崎に行くのを嫌がって隠れていたが、無邪気な朝子の“告げ口”で母と姉に見つかってしまう。そして渋々行った長崎に原爆が投下。自身は助かったものの長崎の地獄絵図を目撃した上に姉は被爆死、母は原爆症で苦しみ続けていた。朝子を苦しませたくない、との思いからその事実を朝子に伝えない百合子の優しさと、にぎやかな銀座食堂を営む朝子一家との対比に苦しむ百合子、優しいからこそつらく当たってしまう百合子がとても切ない。
鉄平の家庭でも実は2人の姉が福岡の空襲で命を落とし、長兄はビルマで戦死。気丈に見える一平(國村隼)とハル(中嶋朋子)にとって、娘を疎開させ息子の出征を認めてしまった後悔はいかばかりか。一平が賢将の父・辰雄(沢村一樹)にこぼしたという「あいつの子どもは戦争で一人も死ななかった」という言葉が、重い。
終戦の時、子どもだった百合子は、「神は何もしてくれない」と、無慈悲に母や姉を失った怒りをぶつける。一平も、良かれと思って島から子どもたちを送り出した後悔が忘れられない。それらを受け止めるのが、島の和尚を演じるさだまさし。長崎で生まれ、長年鎮魂の思いも歌に込めてきた彼をこの配役にあてたことが活きてくる、絶妙なキャスティングだ。
原爆症に苦しんでも今際の際まで神を信じていた寿美子と、仏に仕えながら「神も仏もいない、全ては人の業」と語る和尚。そんな中、賢将が台風の夜に百合子が投げ捨てたロザリオを見つけてくれた。賢将のおかげでロザリオが百合子のもとにかえってきたことを「奇跡」と言うのなら、もう少し人が運命を切り開く可能性に賭けてもいいし、それこそが寿美子が信じてきた「神の思し召し」なのかもしれない。朝子に浴衣を選んでやり、過去に踏ん切りをつけた百合子からは、そんな強さが感じられた。
一方で、百合子や朝子と対称的な生き様が予想されるのがリナ(池田エライザ)だ。偽名を使い、拳銃や謎の大金を隠し持っている彼女は、かなり大胆に戦後の混乱期を生き抜いてきた人物なのではないだろうか。続く第5話では、リナを探している人物が登場。リナの人には言えない過去が明らかになりそうだ。
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