日曜劇場『御上先生』(TBS系)第2話が放送された。まだ始まって間もないドラマだが、主人公の御上孝(松坂桃李)が教壇に立つと、スッと背筋が伸びる。御上の言葉が「刺さる」とまとめてしまえば簡単だが、それだけではない。そこに止まらない。「自分ならどうだろうか」と胸に手を当てて考えたくなるのだ。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
報道部の神崎拓斗(奥平大兼)は、自らの記事で不倫が発覚し、退職した教師・冴島悠子(常盤貴子)と話をするため、彼女が働くコンビニへと足を運んだ。しかし、彼女は何も語ろうとせず、「もし、これから何があってもあなたのせいじゃないから」と言われるのみだった。
その後、何者かのリークによって、国家公務員採用総合職試験の会場で殺人事件を起こした犯人が、冴島の子ども・真山弓弦であることが明らかに。学校にもマスコミが押し寄せた。
その日、御上は是枝文香(吉岡里帆)と共に教壇に立った。騒動の説明をするなか、生徒の和久井翔(夏生大湖)の提案によって、生徒同士が意見交換を行うことに。
そんななか、御上はスーダンで撮られた「ハゲワシと少女」という写真を生徒たちに見せた。こちらは、餓死寸前の少女をハゲワシが狙っている一枚で、大きな賞を獲った作品だ。しかし、「なぜシャッターを押す前にその子を助けなかったのか」とカメラマンが批判されたという。神崎は、この写真の“その後”について、その子どもは保護されたが、批判にさらされたカメラマンは自ら死を選んだ、と明かした。
御上は改めて「なぜ辞めたのは女性教師(冴島)で男性教師ではなかったのか」と投げかけた。そして、是枝から御上に担任が変わった件も含め「いけにえの羊なら下等な生き物がいいだろうと選ばれただけ」……替えた人にそういう意識があったのではないか、と問いかけた。
「ハゲワシと少女」の写真がなければ誰にも届かない貧困があった。だから、シャッターを押すべきだったと信じている、と神崎。続けて「でも、あのときのオレは冴島先生を食おうとするハゲワシの正体を見ようとしなかった。これからでも、オレは絶対それを捕まえる」と意気込んだ。
このシーンでは、ハゲワシの正体、神崎の想いや御上の思惑など、さまざまな想いが去来したが、私は御上が出した写真を見て「すぐに答えを出してしまう危うさ」も感じた。自分自身も、何も知らずにあの写真を見たら、違和感を覚えていた可能性がある。だが、事実は違った。これまで何度も思ったことだが、(あのとき、写真を撮るべきかどうかは置いておいて)やはり物事は決して一方向で見てはいけない。先入観を捨てて、いくつもの方向から見るべきなのだ、とふと感じた。御上が言いたかったのはまた別軸にあるかもしれないが……。
ただ、私は何も学んでいなかった。
今回、ラストに真山弓弦役の俳優が明らかとなった。演じていたのは堀田真由。てっきり男性だと思っていたが、女性キャストで驚いた。もちろん性別なんて関係はないのだが、「男性だ」と無意識に思い込んでいた自分に嫌気がさした。それと同時に、普段の生活でも、先入観や思い込みで人を傷つけたり、相手に不快な思いをさせたりしていないだろうか、というところまで至り、なんだかゾッとした。自覚のなさが怖いのだ。
ドラマはエンターテインメントだ。どんな楽しみ方をしたっていい。『御上先生』は、物語の展開を楽しむだけでなく、御上が問いかけること、ドラマのなかで起きる問題、作品に込められたメッセージや想いをキャッチして“考える”こともできる作品だ。御上は生徒たちだけでなく、私たち視聴者にも教えてくれている──。
だからこそ、私は“考える”ことを諦めずにやっていきたい。答えなんてなくたっていい。“考えること”が大事だと思うから。
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