エヴァートンを率いる名将・モイーズ監督に独占インタビュー 12年ぶり復帰で得た手応えと“新スタジアム元年”への決意
2025年1月、12年ぶりに古巣エヴァートンへ帰還し、シーズン途中就任ながらチームを立て直したデイヴィッド・モイーズ監督。クラブにとっては新スタジアムで迎える歴史的な新シーズンを直前に控え、百戦錬磨の指揮官は何を思うのか。チーム再建への確かな手応えと未来への視線、日本との関わりや印象について訊いた。
7シーズンにわたり率いたブレントフォードを離れ、ビッグクラブの指揮官へ。トーマス・フランクがこの夏、スパーズの新たな監督に就任した。
次なる挑戦に踏み出した背景には、どのような哲学があるのだろうか。データとディテール、そして人間性を重んじるフランク監督が、新天地で描く未来を語った。
──トッテナム・ホットスパーの監督就任、おめでとうございます。小規模なクラブから世界中にファンを持つクラブへの移籍は、安定から未知への大きな飛躍でもあります。就任初日、ブレントフォードとトッテナムの規模の違いを最も象徴的に感じたのは、どんな点でしたか?
トーマス・フランク: やはり、このトレーニンググラウンドに足を踏み入れた時のインパクトでしょうか。これは些細なことではないかもしれませんが、ここは世界でも最高峰の練習施設です。 あらゆる面で素晴らしく、私が以前いたブレントフォードの環境とは、非常に大きな変化でした。
この環境には感銘を受けましたし、とても満足しています。 ただ、施設は非常に重要ですが、違いを生み出すのは結局“人”です。 その点においては、スパーズにも多くの素晴らしい人々がいることがわかり、それほど大きな違いは感じませんでした。私にとって、それはとても大切なことです。
──真面目な質問ですが、新しく出会う大勢のスタッフの名前を覚える秘訣は何ですか?
トーマス・フランク: もしご存知でしたら、ぜひ教えてください(笑)。不可能ですよ。 今でもたくさん間違えます。「ジョン」だったか「ジョシュ」だったか、というように。
ですから、間違えたら素直に、もう一度名前を尋ねるようにしています。 あるいは、他のスタッフに「名前は何だっけ?」とこっそり聞いて、確認してから「やあ、ダニー」などと声をかけにいくこともあります。そうやって自分に名前を覚えさせていくんです。
──あなたは自他共に認める“ディテールの男”です。以前、ブレントフォードのカフェテリアでスプーンの配置が気に入らず、場所を移動させたと話していましたね。昨季のトッテナムの試合映像を分析した際、プレイスタイルに関して「ここを変えなければならない」と感じた点は何でしたか?
トーマス・フランク: まず何よりも先に言っておきたいのは、アンジェ(・ポステコグルー前監督)と彼のスタッフがヨーロッパリーグのタイトルを獲得したという、とてつもない功績です。 41年ぶりのヨーロッパタイトルというのは、本当に素晴らしい。 ですから、私が活用できる良い部分はたくさんありましたし、その土台の上に築いていけると確信しています。
その上で私が加えたいのは、おそらく“バランス”です。攻撃と守備、その両面でより良いバランスを、と私は考えています。 そしてもちろん、何か大きなことを成し遂げたいのであれば、試合のあらゆる局面で優れていなければなりません。
──スパーズファンは、あなたがロングスローを練習に取り入れたことに興味津々です。ブレントフォードでも活用していました。あなた自身の言葉で、ロングスローの美学を説明していただけますか?
トーマス・フランク: わかりました(笑)。私はチームを向上させ、勝利の可能性を少しでも高めるためなら、どんな些細なことでも探求しようと試みています。 セットプレーもその一つで、改善できるプレーはたくさんあります。
ロングスローもその一つです。これは良い武器になります。 毎試合使うような武器とは思いませんが、様々な形のハイプレスやロープレス、あるいはチームの微調整と同じように、道具箱に入れておきたい選択肢の一つなのです。
──なぜ、あなたがこの状況のトッテナムで成功できる人物だと思いますか?戦術的な洞察力、コミュニケーション能力、それとも人心掌握術でしょうか?あなたの中で、トーマス・フランクがトッテナム・ホットスパーで成功する理由は何ですか?
トーマス・フランク: もちろん、その3つすべてです(笑)。 いや、これは私一人の力でどうにかなるものではありません。 多くの人々が同じ方向を向く必要があります。 私、コーチ、スタッフ、選手、そして役員。全員の足並みが揃っていなければなりません。
私は、明確で率直なコミュニケーションを信念としています。 日々、一貫したメッセージを伝え続けること。なぜなら、道筋から逸れるのはとても簡単だからです。 正しい道を進み続け、そしてもちろん、懸命に努力すること。それが必要です。
──昨季のスパーズは、最高と最悪が同居していました。念願のタイトルを獲得し、チャンピオンズリーグ出場権も得た一方で、リーグ戦は17位に終わりました。チームに必要なものは何だと思いますか?
トーマス・フランク: ブレントフォードであろうとトッテナムであろうと、レアル・マドリードやPSGであろうと、どんなチームにも基本的な土台というものがあります。 その土台とは、“カルチャー”です。クラブに、そしてチームに、選手たちの間に存在するカルチャーが強固であればあるほど、勝利のチャンスは大きくなると信じています。
そして、“ハードワーク”という土台も欠かせません。何かを成し遂げたいのであれば、懸命に働かなければならない。 特に、少し暗くて寒くて辛い11月から3月にかけての時期こそ、ハードワークが絶対に必要です。 それを選手たちに植え付ける必要があります。 それが、私たちが築かなければならない最大の基盤だと考えています。もちろん、その上にプレイスタイルや戦術などが乗ってくるわけですが、まずはこの部分を確固たるものにしなければなりません。
──2018年にブレントフォードの監督に就任した際、最初の10試合で8敗を喫しました。当時は「オーナーや役員が本当に私を信頼しているか試すために、わざと負けたんだ」と冗談を言っていましたね。トッテナムであなたのアイデアが浸透するまで、どれくらいの時間が必要だとお考えですか?
トーマス・フランク: もう少し早いといいですね(笑)。前回と同じような形で周囲を試すような事態は避けたいものです。とはいえ、ご存知の通り、サッカーは世界で最も偶発性の高いゲームです。 非常に多くの要因が試合に影響を与えます。大切なのは、私が持つアイデアを信じて全力で取り組み、それを常に発展させ、修正し、選手たちに伝え続け、正しい道から外れないことです。
そうすれば、時間が経つにつれて成功がもたらされるはずです。幸いなことに、これまでのキャリアでは、どこにいても高いレベルで成功の一部を担うことができました。 あとは、ほんの少しの運があれば、魔法が生まれるかもしれません。正しいことをすべてやっても、ポストの内側に当たって入らないような不運が5試合続けば、解任される可能性だってあるわけですから。
──昨季、ソン・フンミンは在籍10年目にしてスパーズで初のトロフィーを手にしました。彼は間もなく33歳になり、契約は残り1年です。来シーズン、彼の役割をどう見ていますか?
トーマス・フランク: まず第一に、おっしゃる通り、ここでのソンの功績は驚くべきものです。 彼はトッテナムにとってこれまでも、そして今も、素晴らしい選手です。 私は、彼が来シーズンも非常に重要な役割を果たせる選手だと見ています。 彼は素晴らしい心構えでチームに合流し、非常にハードに、そして質の高いトレーニングをこなし、他の選手たちを鼓舞しています。彼の活躍が楽しみです。
──この新しい仕事における、最初のシーズンでの「成功」とは何でしょうか?プレミアリーグですか?チャンピオンズリーグですか?あるいはトッテナムを常勝軍団に変えることでしょうか?
トーマス・フランク: 良い質問ですね。私にとっては、4つの主要大会すべてにおいて、長年にわたって安定して戦えるチームを作り上げ、同時に何かタイトルを勝ち取ることです。
あなたがおっしゃったように、ヨーロッパリーグで優勝したのは素晴らしい功績ですが、リーグ戦は17位でした。 この両方の大会、さらには国内カップ戦でも同時に上位争いができるレベルまで、チームを引き上げられるか。 それが目標であり、トッテナムほどの規模のクラブが目指すべき場所です。
──あなたがスパーズに植え付けるであろうスタイルについて、ヒントをいただけますか?ご自身で表現するとしたら、どのようなサッカーになるでしょう?
トーマス・フランク: 私は試合のあらゆる局面において、明確な原則を持っています。 それが極めて重要だと考えています。その上で、チームが勇敢であること、アグレッシブであること、そして攻撃的であることが重要です。 それが私のゲームに対する見方であり、トッテナムというクラブの在り方とも一致していると思います。
──今シーズンの開幕にあたり、これまでのシーズンとは違う種類のプレッシャーを感じますか?また、そういった疑念や恐怖にどう対処するのでしょうか?
トーマス・フランク: 今のところ、プレッシャーは感じていません。まだプレシーズンで、トレーニングをしている段階ですから、感覚が違います。いざ試合モードに入れば、おそらく感じるかもしれない、どうでしょうね。次にお話しする機会があれば、PSG戦やバーンリー戦の前にどうだったか、お伝えしますよ。
もちろんその2試合は、少し特別な緊張感があるでしょう。PSG戦はUEFAスーパーカップの決勝ですから、特別で、良い意味での緊張感があります。 そしてバーンリー戦はホーム開幕戦であり、プレミアリーグのシーズン初戦です。
ですが、それ以降は通常通りとまでは言いませんが、ご想像の通りです。 私はこの仕事を長年やっていますから。何事も最初は少し特別ですが、それ以降は日常になるのです。
──あなたは「この仕事を引き受けた理由の一つは、人生にもう少しリスクを加えるためだ」ともおっしゃっていました。データ重視のあなたに伺いますが、あなたのフットボールIQとスパーズの組み合わせが成功する確率を、パーセンテージで表すとしたら?
トーマス・フランク: 100%に近い、ですね。ポジティブでなければ、最初から前向きでなければ、物事は難しくなりますから。
──最後の質問です。サッカーは非常にストレスの多いビジネスですが、その見事な髪を維持する秘訣は何ですか?
トーマス・フランク: それは家族、というより父譲りだと思います。遺伝子が良かったのでしょう。秘訣はそれだけですよ(笑)。
2025年1月、12年ぶりに古巣エヴァートンへ帰還し、シーズン途中就任ながらチームを立て直したデイヴィッド・モイーズ監督。クラブにとっては新スタジアムで迎える歴史的な新シーズンを直前に控え、百戦錬磨の指揮官は何を思うのか。チーム再建への確かな手応えと未来への視線、日本との関わりや印象について訊いた。
昨シーズン、70年ぶりに国内タイトルを獲得したニューカッスル。キャプテンとしてクラブの中心を担うブルーノ・ギマランイスは、「僕たちはもっとハングリーになっている」と、新シーズンのさらなる躍進を見据えている。 中盤で次々に相手のチャンスの芽を摘み、攻撃面でも常に闘う姿勢を崩さない、“マグパイズ”のダイナモ。ギマランイスの原動力とサッカーへの眼差し、そして新シーズンへの意気込みを、U-NEXTオリジナルインタビューで紐解いていく。
昨季はUEFAカンファレンスリーグとクラブワールドカップの二冠を達成した、チェルシーのエンツォ・マレスカ監督。「非常にポジティブなシーズン」と手応えを口にする昨季の成績を踏まえ、久々のプレミアリーグタイトルへ、ファンの期待も日に日に高まっているだろう。 つかの間のオフとプレシーズンを経て、どのような心境で開幕直前を迎えているのか。セリエA中継実況などでおなじみの北川義隆さんが、マレスカ監督にイタリア語でインタビュー。冷静な言葉の奥にある、指揮官の哲学と見据える先を紐解いていく。
昨季はプレミアリーグで勝ち点43の14位に終わったウェストハム。苦しむチームの中でも、リーグ戦34試合で13ゴール10アシストの活躍を見せたのが、イングランド代表ジャロッド・ボーウェンだ。キャプテンとしてチームを牽引する同選手は、“ハマーズ”の現状をどう見つめ、新シーズンへ向け何を思い描いているのか。プレシーズンの手応えと率直な想いを、U-NEXTのインタビューで語ってくれた。
昨季、圧倒的な堅守を武器にチャンピオンシップを2位で終え、プレミアリーグ昇格を決めたバーンリー。クラブを1年でのプレミア復帰へ導いたのが、昨季就任したスコット・パーカー監督だ。 監督として、自身3度目となるプレミア昇格を成し遂げた指揮官は、今のチームを「成功のために、たゆまぬ努力を惜しまない集団」と表現する。昨季の成功の礎となった「一体感」を武器に、台風の目となれるのか。開幕を間近に控えたその胸中を、U-NEXTのインタビューで訊いた。
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