終盤戦に向かってさらなる盛り上がりを見せているTBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』。2018年放送の前作『ブラックペアン』で主人公・渡海征司郎を演じた二宮和也さんが、前作から6年後を描いた今続編『ブラックペアン シーズン2』では、渡海とまったく別人の新たな主人公、世界的天才外科医・天城雪彦を見事に演じわけています。渡海と天城の外見が瓜二つという設定は、原作者の海堂尊さん自らが提案したドラマオリジナル。最終回に向けてさまざまな謎が解き明かされていく本作について、同シリーズのすべてを知る伊與田英徳プロデューサーが、二宮さん演じる天城の役作りから、今後の展開や終盤の見どころなどをネタバレぎりぎりで明かしてくれました。
──前作で主人公の渡海征司郎を演じた二宮和也さんが、続編のシーズン2では全く別人の天城雪彦を演じています。容姿と“悪魔”と称される天才外科医であることは似ていても、渡海とは話し方も性格もファッションも全く異なる天城のキャラクターを、どのように作り上げていったのでしょう?
伊與田:まず海堂先生の書かれた原作『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』に登場する天城雪彦という役をイメージした上で、それを二宮さんがどう演じるかという視点でアレンジしていきました。その過程で、グレーアッシュな髪型や服装や、優しそうに柔らかく流暢に喋るような感じがいいんじゃないかとか。二宮さんのアイデアもあるし、こちらからも提案した上で脚本家が落とし込み、監督が最後に料理して…原作のイメージを中心に、みんなで相談しながら作り上げていった感じですね。
──天城はすごくオシャレでハイセンスな服装に身を包んでいますが、外見的な狙いとは?
伊與田:天城先生は、医療にちゃんと向き合った上で、自分の身なりや楽しみ、趣味などもおろそかにせず、仕事もできるところが、ちょっと日本人的ではないというか、逆にかっこいいという感じにしたかった。そのひとつの象徴として、服にもちゃんとこだわっているキャラクターにし、いろんなブランドを組み合わせて衣装を選んでもらっています。それは髪型も同じで、彼の生き方を示すためにやっている感じが、面白いかなと。もちろんその狙いは二宮くんとも相談しています。
だから天城が、新病院“スリジエハートセンター”の名称や建物にこだわっていて、「建物こそが残る」と語った“建物への想い”も、大事なのは建物よりも中身だろうという一般的な日本人的感覚とはちょっと違う。天城はそういう、ちょっと違った目線や発想を持っている役どころだということを、二宮さんは上手く汲み取って、渡海とは全く異なるキャラクターを演じていただいていると思います。
──手術中にクラシックの音楽が流れるのも、そのハマリぶりなどが話題になっています。手術シーンの音楽の狙いとは?
伊與田:手術中の音楽は、二宮さんから「こんな音楽ってありかな?」と提案を受けました。本格的なクラシックもあれば、現代風にアレンジしたクラシックもあった。二宮さんは音楽に詳しくて、コミュニケーションを重ねていく中で、面白いと思った曲を劇中に使わせていただいています。
──天城のフランス語の台詞は、二宮さんが先生などから学んでいるのですか?
伊與田:どなたかから学んだという話は聞いていないので、通常のやり方と同じく、正確な発音の外国語の台詞を吹き込んだ音声をお渡しして、それを練習していただいたのだと思います。フランス語の台詞が上手いのは、耳がいいんだろうなとも思いますね。それは4~5話に登場したAIのエルカノ役の三石琴乃さんも同じで、実は三石さんも今後エルカノとしてフランス語を喋るシーンがあるのですが、正確な発音のフランス語の台詞を聞いていただくと、一瞬にして喋れちゃうんですよね。あれだけ上手くできているから、個人的に勉強しているのかもしれないけど、二宮さんも同じなのかもしれないし。でも実際のところはわからないです。
──天城以外で、「ブラックペアン」らしさをたらしめているキャラクターはありますか?
伊與田:内野聖陽さんが演じる佐伯先生でしょうか。きっと昔は技術一筋でやってきた外科医が、年齢を重ねてきたことや、病院長となったことで、全体が見えるようになってきたし、見なきゃいけなくなった。以前は脂ぎっていたけど年をとり、まだ野心もあるけど、院長としてこの東城大や医療界をどうするかと思っている。そんな人の生き様みたいなところは、個人的にも面白いと思っています。特に最終回に向けて彼が動くことには、ジーンと感動するようなところもあるかと思います。
──天城の衣装や美術以外の裏方的なスタッフの仕事で、特に注目してほしいポイントはありますか?
伊與田:いろいろありますが、あえてひとつあげるなら心臓や臓器などの造形物を作っているスタッフの力というのは、特に大きいと思います。実際のリアルなものをそのまま再現するのではなく、誇張と省略があるので、血管なども恐らくリアルとはちょっと違うと思うんです。わかりやすくしつつもリアルに見えるように作るというのは、すごいなと思いました。手術シーンで、血がブワっと吹き出たりするのも、かなり大変だと思うんです。
──その手術シーンの撮影でこだわっているところとは?
伊與田:前作の渡海先生は、誰かが失敗してからやって来る形でしたが、天城先生は最初から手術室にいることが多いので、その辺のアプローチの仕方が、前作とは違っている。それに天城の「心臓は美しい」という台詞もあるように、実際に美しく見えるような心臓の映し方や美しい手術シーンを、演者も、監督も、美術スタッフも、カメラマンも、みんなで試行錯誤しながらこだわって撮っている点も、前作とはちょっと違っていると思います。
──最終回に向けて、今後の展開などを、明かせる範囲で教えていただけきたいのですが、まずは終盤に向けての見どころを教えてください。
伊與田:やっぱり主人公の生き様でしょうか。天城先生がどうしてあんなに腕がいいのに、お金にこだわるのか、賭けをするのかなど、彼の生き様や背負ってきているものが少しずつ見えてくると思うし、患者を助けることに関してはプロ中のプロなので、それがどう描かれていくのかを見ていただけたらと。
──天城が渡海を知っていそうなそぶりも描かれていましたが、渡海と天城の容姿が似ているという海堂先生からのドラマオリジナルの設定は、今後の物語自体にも深く関わっていくことになるのでしょうか。
伊與田:その辺のところが、ストーリーのひとつの大きなポイントになってくることは間違いないです。原作にない新しい世界の面白さも、楽しみにしてください。
──劇中に挿入される謎のインサート映像もSNSで考察が盛り上がったりなど、話題になっています。
伊與田:もちろん何らかのメッセージを込めていますから、最終回までにはその謎の答えがわかると思います。
──原作とはかなり違う展開になっていくのでしょうか?
伊與田:原作には渡海と天城が関係していくような話はないので、海堂先生と相談しながら進めていますが、起きている事件自体は、原作の面白いエピソードを使わせていただいています。原作に沿ったところも、違うところも、どちらもありますね。最終的には、私が原作を読んだ時の読後感と同じ感覚を、ドラマとしても描けるとうれしいと思って作っています。
──シリーズを改めて見直していただく方々に向けても、注目ポイントを教えてください。
伊與田:今回のシーズン2の前に前作・シーズン1を見直してみて、自分でやっておきながらなんですが、改めて面白いドラマだなと思いました(笑)。シーズン1もシーズン2も、軸となるのは原作の主人公でもある世良で、世良の目線でどう感じているのかを中心に見ていただけると、2作共にまた違った目線で見られると思います。それに、多くの方が天才に憧れるかもしれませんが、天才が背負っている逆の苦悩もあると思うんです。それは前作の渡海先生もあったし、今作の天城先生もある。天才の持つ苦悩にも注目して見ていただくと、2人の共通点のようなものが見えてくるんじゃないかなという気がします。
(プロフィール)
伊與田英徳(いよだ・ひでのり)
1967年5月6日生まれ、愛知県出身。近年、制作に関わった携わったドラマは『クロサギ』『新参者』『半沢直樹』など 。
日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』
毎週日曜よる9:00~9:54
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