二宮和也が、世界的天才外科医・天城雪彦を演じるTBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』最終第10話。“ブラックペアンの謎”を解くダイレクト・アナストモーシスが始まる。そこに隠された天城の命を繋ぐ悲しい絆とは──?
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
国際心臓外科学会での公開手術。
天城(二宮和也)は、育ての親・天城司(大和田伸也)と佐伯(内野聖陽)の間にある“ブラックペアンの約束”の鍵を握る患者・徳永(井上肇)のダイレクト・アナストモーシス手術に着手した。
3本の冠動脈がほぼ閉塞している状態の難手術を前にしてもひるまない天城だったが、手術を始めるや徳永の体温が急上昇、悪性高熱の症状が出てしまう。さらには悪性高熱を下げるための薬・ダントロレンがない──。
天城がかつて執刀した、育ての母の手術で味わった最初で最後の術死と同じ危機に陥ってしまったのだ。
母の死のトラウマに動揺を隠せない天城だったが、死亡率を格段に上げてしまうリスクがあるものの、物理的に患者の体を冷やすことができる人工心肺を使用しての手術続行を決めた。
高階(小泉孝太郎)が悪性高熱に対処し、天城は引き続き癒着がひどい術部を丁寧に執刀していくが…。今度は右の大胸動脈の損傷が発覚。高熱の影響で手術に使える時間は2時間が限界。天城は使用できるかわからない橈骨動脈を使用することを決める。
次々起こる緊急事態に、天城は冷静に次の一手を見つけていくが、それとは裏腹に真行寺(石坂浩二)から、オペ中止の指示が入った。その時、オペ室に佐伯が現れた。佐伯はオペ室を内側から施錠するよう指示し、強制中止を防いだのだ。
だが、天城はその佐伯に「失敗したオペを、あんたは僕の父になすりつけた」と、ここぞとばかりに問い詰める。今まさにオペをしている患者・徳永の8年前の手術では、なんとダイレクト・アナストモーシスが行われており、そして失敗していたのだ。
天城は、実はその手術の執刀医は佐伯で、ダイレクト・アナストモーシスの失敗を天城司になすりつけたと考えていた。だからこそ天城が見つけた8年前の手術記録を佐伯は持ち去った、そう仮説を立てていたのだ。
佐伯は「今は手を組まんか」と、危機的状況にある徳永のオペを続けることを提案し、天城の仮説について多くを語らなかった。
「司先生も私も、ダイレクト・アナストモーシスを完成させたかった」と、天城の心臓を治せる唯一の術式を実現させる想いを天城司と共にしていたことだけを告げ、オペの強制中止を防ぐべく観客席に向かうのだった。
佐伯が、天城をセンター長に据えた新病院を作ろうとしたのも、この想いのためだった。天城を治せるダイレクト・アナストモーシスを、今は天城しかできない。新病院に世界中から有能な外科医を集めて、天城に続いてダイレクト・アナストモーシスを執刀できる心臓外科医を育てようと考えたのだ。
佐伯が観客席に向けて公開手術の現況を説明すると、観衆の医師たちは騒然となり、予定外の術式のリスクを訴える声が上がった。だがこの代案なき批判に「患者の命を救う最良の道をご存じであれば、ぜひお知恵を貸していただきたい」と凄み制止すると演説を続けた。
ダイレクト・アナストモーシスの歴史のはじまりは、20年前の真行寺による革新的な論文だった。真行寺はダイレクト・アナストモーシスを“理論上可能”な机上の術式としていたが、天城雪彦がそれを成功させた。
佐伯は今まさに手術を中止させようとしている真行寺の偉業を観衆に知らしめ、「医療研究の最高峰・真行寺先生と、稀代の才能を持つ心臓外科医・ドクター天城。ふたりの天才がもたらしたダイレクト・アナストモーシスを、ぜひ最後までご覧ください」と高らかに語り、見事観客席の医師たちから手術続行の賛同を得ることに成功した。
同じ頃、東城大病院では、翌日に天城が執刀する予定だった繁野結衣(堀越麗禾)の容態が急変、急性僧帽弁閉鎖不全を起こしてしまい、世良(竹内涼真)が黒崎(橋本さとし)とともにスナイプによる緊急オペを始めていた。
スナイプが術部に進入しないトラブルに見舞われるも、東城大病院の病院長選挙で佐伯が失脚する様を見ようと訪れていた菅井(段田安則)のアドバイスで無事に僧帽弁形成術を成功させる。
菅井もまた、患者の命を救おうと考えるひとりの医師だったのだ。
一方、無事に手術を再開した公開手術の現場。
天城の判断で切離した橈骨動脈は大半が解離してしまっており、使用できるのは3㎝程度で、ダイレクト・アナストモーシス1カ所分しかないことが分かった。助手の医師たちは、1カ所だけ実施して閉胸しようと進言するが、天城は「それでは数カ月後には心不全で死んじゃう」と答えると、まだ使える血管はあると諦めない。
天城は、胃大網動脈の使用を提案した。心臓を専門とする佐伯外科では胃の血管を利用する事例はほとんどなく、リスクが高い。しかし「僕以外に生え抜きではないお医者様がひとりいらっしゃるじゃないか」と、腹部外科経験がある高階ならば対応できると指名したのだ。
「何がなんでも助けなきゃいけない」。天城の言葉に高階も同意し、胃大網動脈の摘出を担当することになった。
しかし、その時東城大病院から緊急電話が入った。
スナイプ手術が成功した結衣が心筋梗塞を起こし、今すぐにバイパス手術が必要な状況に陥ってしまった。世良が高階に、エルカノ・ダーウィンを使用して遠隔でオペに参加してほしいと打診してきたのだ。今まさに胃大網動脈の切離を担当することになった高階を失えば、開腹手術のリスクが高まる。
天城はふいに、「ジュノ、こんな時、渡海先生(二宮和也)だったらどうするんだろう?」と尋ねた。すぐさま世良は「渡海先生は、どんな状況であれ、患者をひとりも死なせることはありませんでした」と答える。
すると天城は、双子の弟・渡海への評価に満足するかのように微笑み頷くと、「高階先生、ダーウィンで、ジュノたちを助けてもらえますか?」と告げた。
天城は自分が開腹手術をすることにしたのだ。「渡海先生にできて僕にできないものなんてこの世の中でひとつもない。大丈夫」と、弟にライバル心を燃やすかのように楽し気に、不敵に笑った。
天城は颯爽と開腹手術に着手するが、再び患者の体温が上昇し始めた。さらに、天城が胸を押さえ手を止めてしまう──。
その時、佐伯がオペ室にダントロレンを携えてやってきた。そして天城には抗不整脈薬を手渡す。
ダントロレンの投与で徳永の体温は落ち着き、天城の体調も戻った。しかし、佐伯は悪い知らせも持っていた。「徳永さんの胃大網動脈は、8年前に既に切離している」というのだ。5~6cmなら残っているかもしれないが、使用できる確率は低いという。
あらためて手術の終了を指示する佐伯に、天城は「開腹に賭けるべきです。徳永さんの心臓を完治させるにはそれしかない」と訴える。天城の執念に折れた佐伯は「ならば開腹は私がやる」と名乗り出た。
佐伯が開腹手術、天城はダイレクト・アナストモーシスの準備を進める。
ふたりの天才医師の共同オペが始まると、佐伯は天城に「お前は思い違いをしている」と、8年前のオペの真相を語り始めた。
事の発端は、3歳の渡海の手術だった。渡海の命を救うために天城の内胸動脈を移植した手術が、当時の外科のトップである真行寺にばれてしまった。真行寺は天城を国外に連れ出すよう指示し、手術の件は極秘にしようと決めた。
だが、真行寺がこの手術を極秘にし、天城を天城司のいるフランスに送ったのは違法手術を隠蔽するためではなかった。本当の狙いは、天城司にダイレクト・アナストモーシスの未来を託すことだった。天城雪彦の心臓を治し得る術式の完成を目指すための采配だったのだ。
しかし、その想いも空しく、天城司は何度もシミュレーションを重ねたが実現の見込みは得られず、結局真行寺はダイレクト・アナストモーシスの永久封印を命じた。
そして8年前。同じチームの外科医だった徳永が心臓の病で倒れたとき、天城司は真行寺の封印を破り、ダイレクト・アナストモーシスを実行した。成功させようと必死の天城司は次々と動脈を切離しダイレクト・アナストモーシスを試みたが、いずれも成功に至らなかった…。
これが、徳永の体に使用できる血管がほとんど残されていない理由だった。同志の血管を切り刻み失敗し続け、もはや開胸した徳永の体の前で震えるばかりの天城司からメスを受け取り、オペの後始末に対処したのが佐伯だったのだ。
永久封印の指示を破った天城司と佐伯は、真行寺との関係を断絶することとなった。
佐伯が語った真相に、天城は「まだ嘘をつくんですか?」と聞く耳を持たないが、開腹された胃には、佐伯の話の通り胃大網動脈がなかった。
さすがの天城も目を伏せた。打つ手はもうないのか…。
すると佐伯が「下腹壁動脈」とつぶやいた。佐伯は、天城司がただ1本、下腹壁動脈を保護する手術をしていたことを思い出したのだ。
「父はなぜこんなことを?」と困惑する天城に、佐伯は「司先生は未来のお前に賭けたんだよ。お前に託したんだ」。
天城司、渡海一郎、渡海征司郎、そして佐伯。誰もたどり着けなかったダイレクト・アナストモーシスの高み。佐伯は天城に「この世でお前ひとりだけが授かった力」と確信を告げると、「天城!やれ!」と鼓舞した。
「メッツェン」。天城の躊躇いは吹き飛ばされ、いつもの華麗な手術が始まる。
佐伯が指摘した下腹壁動脈は、橈骨動脈の倍以上の長さがあり、3カ所のダイレクト・アナストモーシスが可能な血管を確保できた。
血圧が低下し、5分ともたないと騒ぐ助手の声にも動じず、天城のダイレクト・アナストモーシスが始まる。1カ所目。まったく出血はない。2カ所目。見事な吻合を終える。3カ所目。天城が仕上げに見せる素手での縫合。終始華麗な天城の芸術的なオペが進む。
そして──。
世界初の、3カ所同時のダイレクト・アナストモーシスが見事に成功。
学会会場は、観客たちのスタンディングオベーションに揺れた。
時を同じくして、高階の助けを得て世良が担当した結衣の手術も、無事成功に終わった。
手術後、ベンチに横たわった天城は、心臓の音を感じていた。自分の心臓のために、ふたりの父や佐伯、渡海、多くの人々が繋いできた想いを感じるかのように。
「司先生も、天国で祝福してくれてるだろう」という佐伯に、「じゃあ司先生に伝えといてください。僕ひとりの力じゃ成し得なかったと」と、天城はかつて見せたことがない健やかな笑顔を見せるのだった。
天城は、真行寺の元を訪れ、「ブラックペアンの約束とは?」と、ずっと知りたかった謎を尋ねた。すると真行寺はすべてを明かした。
ブラックペアンを作ったのは、天城司だった。渡海一郎を東城大病院から追放することになってしまったペアンの件を悩む佐伯のために、レントゲンに写らないカーボン製のペアンを開発したのだ。
真行寺は「みんな結束して。いい仲間だった」と回顧したが、同時に、仲間のひとりである徳永が病に侵されると、真行寺との約束を反故にしてダイレクト・アナストモーシスを実施した天城司を悔しがった。
抱えてきた想いを乗せるように天城の肩に手を置くと、去っていく真行寺。その意志を受け取るように、天城は頭を下げるのだった。
東城大病院の病院長選挙は、江尻(大黒摩季)に軍配が上がった。藤原看護師長(神野三鈴)が江尻につき、真行寺も裏で佐伯失脚に向けて暗躍していたという。
伴って新病院の構想からも佐伯は外れ、スリジエハートセンターのセンター長は高階が務めることとなった。
天城は、佐伯から受け取った新病院センター長の推挙状を返上し、東城大病院を去ることを決めた。新病院をまだあきらめていないと息巻き「推挙状は預かっておく」と笑う佐伯に、天城は「ウィ、ムッシュ」と軽やかに東城大病院を後にし、オーストラリアに帰っていった──。
1年後。
一層腕を磨きオペで活躍するも、渡海に続き天城にも無言で去られた世良は、東城大病院を辞め地方の系列病院に従事していた。
そんな世良の元に、天城から「カジノの特別室までドン・キホーテを迎えにくるように 天城雪彦」と書かれたエアメールが届く。
腐っていた世良だが、天城との再会を楽しみにオーストラリアで天城に最初に出会ったカジノを訪れた。
だが、到着した世良に伝えられたのは、驚愕の事実だった。
「天城先生は亡くなりました──」。世良に届いたエアメールは、天城の指示で、天城の死後に発送されたものだと言うのだ。
天城の墓を訪れた世良に渡される天城からの手紙。
「ジュノは僕のことを世界で唯一の医者だと言ったが、それは君も同じだ。ジュノにはジュノの才能がある。真っすぐであきらめの悪いジュノにしか治せない患者が必ず世界のどこかに現れる。世界でジュノにしかできないオペをする日がくるはずだ。なにせジュノは、僕と渡海征司郎という、ふたりの悪魔に愛された世界で唯一の医者なのだから。ジュノ。お前は良い医者だよ」。
「ありがとうございました」天城の墓標に頭を下げた世良は、溢れる涙を遮らず泣き、「これからも、医者としての仕事を続けていきます」と空に誓うのだった──。
数年後。
スリジエハートセンターには、天城が思い描いたソメイヨシノが咲き乱れていた。
センター長の高階は、エルカノ・ダーウィンによるダイレクト・アナストモーシスを臨床試験までこぎつけていた。東城大病院を離れたものの、全日本医学会・会長としてAI医療研究を支えた佐伯の力もおよんでのことだった。
海を見渡すオペ室では、天城の流儀に則り、世良がクラシック音楽の中でオペを手掛ける。
そして、ソメイヨシノの前。そこには、懐かしい相棒・猫田(趣里)に手渡された白衣に袖を通す渡海の姿があった。左腕には、東城大病院のロゴが見える──。
天城が遺したダイレクト・アナストモーシスの技術や、医師としての矜持は、確実に受け継がれていた。
ついに迎えた最終回。SNSでは、「天城先生にもう会えないなんて、辛すぎる」「まさかの天城先生…泣いた」と天城の死を哀しむ声が続出する一方、ラストの「渡海先生と猫田さんにわあああってなった!」という声を筆頭に、シーズン3や劇場版を待望する声が相次いでいる。
シーズン1のラストで渡海から「お前は良い医者になれ」、シーズン2のラストでは天城から「お前は良い医者だよ」と、ふたりの天才からの言葉に成長が見えた世良。世良を通して繋がっていく物語に、確かに次回作を期待せずにはいられない!
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二宮和也が、世界的天才外科医・天城雪彦を演じるTBS日曜劇場『ブラックペアン シーズン2』最終第10話。“ブラックペアンの謎”を解くダイレクト・アナストモーシスが始まる。そこに隠された天城の命を繋ぐ悲しい絆とは──?
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
国際心臓外科学会での公開手術。
天城(二宮和也)は、育ての親・天城司(大和田伸也)と佐伯(内野聖陽)の間にある“ブラックペアンの約束”の鍵を握る患者・徳永(井上肇)のダイレクト・アナストモーシス手術に着手した。
3本の冠動脈がほぼ閉塞している状態の難手術を前にしてもひるまない天城だったが、手術を始めるや徳永の体温が急上昇、悪性高熱の症状が出てしまう。さらには悪性高熱を下げるための薬・ダントロレンがない──。
天城がかつて執刀した、育ての母の手術で味わった最初で最後の術死と同じ危機に陥ってしまったのだ。
母の死のトラウマに動揺を隠せない天城だったが、死亡率を格段に上げてしまうリスクがあるものの、物理的に患者の体を冷やすことができる人工心肺を使用しての手術続行を決めた。
高階(小泉孝太郎)が悪性高熱に対処し、天城は引き続き癒着がひどい術部を丁寧に執刀していくが…。今度は右の大胸動脈の損傷が発覚。高熱の影響で手術に使える時間は2時間が限界。天城は使用できるかわからない橈骨動脈を使用することを決める。
次々起こる緊急事態に、天城は冷静に次の一手を見つけていくが、それとは裏腹に真行寺(石坂浩二)から、オペ中止の指示が入った。その時、オペ室に佐伯が現れた。佐伯はオペ室を内側から施錠するよう指示し、強制中止を防いだのだ。
だが、天城はその佐伯に「失敗したオペを、あんたは僕の父になすりつけた」と、ここぞとばかりに問い詰める。今まさにオペをしている患者・徳永の8年前の手術では、なんとダイレクト・アナストモーシスが行われており、そして失敗していたのだ。
天城は、実はその手術の執刀医は佐伯で、ダイレクト・アナストモーシスの失敗を天城司になすりつけたと考えていた。だからこそ天城が見つけた8年前の手術記録を佐伯は持ち去った、そう仮説を立てていたのだ。
佐伯は「今は手を組まんか」と、危機的状況にある徳永のオペを続けることを提案し、天城の仮説について多くを語らなかった。
「司先生も私も、ダイレクト・アナストモーシスを完成させたかった」と、天城の心臓を治せる唯一の術式を実現させる想いを天城司と共にしていたことだけを告げ、オペの強制中止を防ぐべく観客席に向かうのだった。
佐伯が、天城をセンター長に据えた新病院を作ろうとしたのも、この想いのためだった。天城を治せるダイレクト・アナストモーシスを、今は天城しかできない。新病院に世界中から有能な外科医を集めて、天城に続いてダイレクト・アナストモーシスを執刀できる心臓外科医を育てようと考えたのだ。
佐伯が観客席に向けて公開手術の現況を説明すると、観衆の医師たちは騒然となり、予定外の術式のリスクを訴える声が上がった。だがこの代案なき批判に「患者の命を救う最良の道をご存じであれば、ぜひお知恵を貸していただきたい」と凄み制止すると演説を続けた。
ダイレクト・アナストモーシスの歴史のはじまりは、20年前の真行寺による革新的な論文だった。真行寺はダイレクト・アナストモーシスを“理論上可能”な机上の術式としていたが、天城雪彦がそれを成功させた。
佐伯は今まさに手術を中止させようとしている真行寺の偉業を観衆に知らしめ、「医療研究の最高峰・真行寺先生と、稀代の才能を持つ心臓外科医・ドクター天城。ふたりの天才がもたらしたダイレクト・アナストモーシスを、ぜひ最後までご覧ください」と高らかに語り、見事観客席の医師たちから手術続行の賛同を得ることに成功した。
同じ頃、東城大病院では、翌日に天城が執刀する予定だった繁野結衣(堀越麗禾)の容態が急変、急性僧帽弁閉鎖不全を起こしてしまい、世良(竹内涼真)が黒崎(橋本さとし)とともにスナイプによる緊急オペを始めていた。
スナイプが術部に進入しないトラブルに見舞われるも、東城大病院の病院長選挙で佐伯が失脚する様を見ようと訪れていた菅井(段田安則)のアドバイスで無事に僧帽弁形成術を成功させる。
菅井もまた、患者の命を救おうと考えるひとりの医師だったのだ。
一方、無事に手術を再開した公開手術の現場。
天城の判断で切離した橈骨動脈は大半が解離してしまっており、使用できるのは3㎝程度で、ダイレクト・アナストモーシス1カ所分しかないことが分かった。助手の医師たちは、1カ所だけ実施して閉胸しようと進言するが、天城は「それでは数カ月後には心不全で死んじゃう」と答えると、まだ使える血管はあると諦めない。
天城は、胃大網動脈の使用を提案した。心臓を専門とする佐伯外科では胃の血管を利用する事例はほとんどなく、リスクが高い。しかし「僕以外に生え抜きではないお医者様がひとりいらっしゃるじゃないか」と、腹部外科経験がある高階ならば対応できると指名したのだ。
「何がなんでも助けなきゃいけない」。天城の言葉に高階も同意し、胃大網動脈の摘出を担当することになった。
しかし、その時東城大病院から緊急電話が入った。
スナイプ手術が成功した結衣が心筋梗塞を起こし、今すぐにバイパス手術が必要な状況に陥ってしまった。世良が高階に、エルカノ・ダーウィンを使用して遠隔でオペに参加してほしいと打診してきたのだ。今まさに胃大網動脈の切離を担当することになった高階を失えば、開腹手術のリスクが高まる。
天城はふいに、「ジュノ、こんな時、渡海先生(二宮和也)だったらどうするんだろう?」と尋ねた。すぐさま世良は「渡海先生は、どんな状況であれ、患者をひとりも死なせることはありませんでした」と答える。
すると天城は、双子の弟・渡海への評価に満足するかのように微笑み頷くと、「高階先生、ダーウィンで、ジュノたちを助けてもらえますか?」と告げた。
天城は自分が開腹手術をすることにしたのだ。「渡海先生にできて僕にできないものなんてこの世の中でひとつもない。大丈夫」と、弟にライバル心を燃やすかのように楽し気に、不敵に笑った。
天城は颯爽と開腹手術に着手するが、再び患者の体温が上昇し始めた。さらに、天城が胸を押さえ手を止めてしまう──。
その時、佐伯がオペ室にダントロレンを携えてやってきた。そして天城には抗不整脈薬を手渡す。
ダントロレンの投与で徳永の体温は落ち着き、天城の体調も戻った。しかし、佐伯は悪い知らせも持っていた。「徳永さんの胃大網動脈は、8年前に既に切離している」というのだ。5~6cmなら残っているかもしれないが、使用できる確率は低いという。
あらためて手術の終了を指示する佐伯に、天城は「開腹に賭けるべきです。徳永さんの心臓を完治させるにはそれしかない」と訴える。天城の執念に折れた佐伯は「ならば開腹は私がやる」と名乗り出た。
佐伯が開腹手術、天城はダイレクト・アナストモーシスの準備を進める。
ふたりの天才医師の共同オペが始まると、佐伯は天城に「お前は思い違いをしている」と、8年前のオペの真相を語り始めた。
事の発端は、3歳の渡海の手術だった。渡海の命を救うために天城の内胸動脈を移植した手術が、当時の外科のトップである真行寺にばれてしまった。真行寺は天城を国外に連れ出すよう指示し、手術の件は極秘にしようと決めた。
だが、真行寺がこの手術を極秘にし、天城を天城司のいるフランスに送ったのは違法手術を隠蔽するためではなかった。本当の狙いは、天城司にダイレクト・アナストモーシスの未来を託すことだった。天城雪彦の心臓を治し得る術式の完成を目指すための采配だったのだ。
しかし、その想いも空しく、天城司は何度もシミュレーションを重ねたが実現の見込みは得られず、結局真行寺はダイレクト・アナストモーシスの永久封印を命じた。
そして8年前。同じチームの外科医だった徳永が心臓の病で倒れたとき、天城司は真行寺の封印を破り、ダイレクト・アナストモーシスを実行した。成功させようと必死の天城司は次々と動脈を切離しダイレクト・アナストモーシスを試みたが、いずれも成功に至らなかった…。
これが、徳永の体に使用できる血管がほとんど残されていない理由だった。同志の血管を切り刻み失敗し続け、もはや開胸した徳永の体の前で震えるばかりの天城司からメスを受け取り、オペの後始末に対処したのが佐伯だったのだ。
永久封印の指示を破った天城司と佐伯は、真行寺との関係を断絶することとなった。
佐伯が語った真相に、天城は「まだ嘘をつくんですか?」と聞く耳を持たないが、開腹された胃には、佐伯の話の通り胃大網動脈がなかった。
さすがの天城も目を伏せた。打つ手はもうないのか…。
すると佐伯が「下腹壁動脈」とつぶやいた。佐伯は、天城司がただ1本、下腹壁動脈を保護する手術をしていたことを思い出したのだ。
「父はなぜこんなことを?」と困惑する天城に、佐伯は「司先生は未来のお前に賭けたんだよ。お前に託したんだ」。
天城司、渡海一郎、渡海征司郎、そして佐伯。誰もたどり着けなかったダイレクト・アナストモーシスの高み。佐伯は天城に「この世でお前ひとりだけが授かった力」と確信を告げると、「天城!やれ!」と鼓舞した。
「メッツェン」。天城の躊躇いは吹き飛ばされ、いつもの華麗な手術が始まる。
佐伯が指摘した下腹壁動脈は、橈骨動脈の倍以上の長さがあり、3カ所のダイレクト・アナストモーシスが可能な血管を確保できた。
血圧が低下し、5分ともたないと騒ぐ助手の声にも動じず、天城のダイレクト・アナストモーシスが始まる。1カ所目。まったく出血はない。2カ所目。見事な吻合を終える。3カ所目。天城が仕上げに見せる素手での縫合。終始華麗な天城の芸術的なオペが進む。
そして──。
世界初の、3カ所同時のダイレクト・アナストモーシスが見事に成功。
学会会場は、観客たちのスタンディングオベーションに揺れた。
時を同じくして、高階の助けを得て世良が担当した結衣の手術も、無事成功に終わった。
手術後、ベンチに横たわった天城は、心臓の音を感じていた。自分の心臓のために、ふたりの父や佐伯、渡海、多くの人々が繋いできた想いを感じるかのように。
「司先生も、天国で祝福してくれてるだろう」という佐伯に、「じゃあ司先生に伝えといてください。僕ひとりの力じゃ成し得なかったと」と、天城はかつて見せたことがない健やかな笑顔を見せるのだった。
天城は、真行寺の元を訪れ、「ブラックペアンの約束とは?」と、ずっと知りたかった謎を尋ねた。すると真行寺はすべてを明かした。
ブラックペアンを作ったのは、天城司だった。渡海一郎を東城大病院から追放することになってしまったペアンの件を悩む佐伯のために、レントゲンに写らないカーボン製のペアンを開発したのだ。
真行寺は「みんな結束して。いい仲間だった」と回顧したが、同時に、仲間のひとりである徳永が病に侵されると、真行寺との約束を反故にしてダイレクト・アナストモーシスを実施した天城司を悔しがった。
抱えてきた想いを乗せるように天城の肩に手を置くと、去っていく真行寺。その意志を受け取るように、天城は頭を下げるのだった。
東城大病院の病院長選挙は、江尻(大黒摩季)に軍配が上がった。藤原看護師長(神野三鈴)が江尻につき、真行寺も裏で佐伯失脚に向けて暗躍していたという。
伴って新病院の構想からも佐伯は外れ、スリジエハートセンターのセンター長は高階が務めることとなった。
天城は、佐伯から受け取った新病院センター長の推挙状を返上し、東城大病院を去ることを決めた。新病院をまだあきらめていないと息巻き「推挙状は預かっておく」と笑う佐伯に、天城は「ウィ、ムッシュ」と軽やかに東城大病院を後にし、オーストラリアに帰っていった──。
1年後。
一層腕を磨きオペで活躍するも、渡海に続き天城にも無言で去られた世良は、東城大病院を辞め地方の系列病院に従事していた。
そんな世良の元に、天城から「カジノの特別室までドン・キホーテを迎えにくるように 天城雪彦」と書かれたエアメールが届く。
腐っていた世良だが、天城との再会を楽しみにオーストラリアで天城に最初に出会ったカジノを訪れた。
だが、到着した世良に伝えられたのは、驚愕の事実だった。
「天城先生は亡くなりました──」。世良に届いたエアメールは、天城の指示で、天城の死後に発送されたものだと言うのだ。
天城の墓を訪れた世良に渡される天城からの手紙。
「ジュノは僕のことを世界で唯一の医者だと言ったが、それは君も同じだ。ジュノにはジュノの才能がある。真っすぐであきらめの悪いジュノにしか治せない患者が必ず世界のどこかに現れる。世界でジュノにしかできないオペをする日がくるはずだ。なにせジュノは、僕と渡海征司郎という、ふたりの悪魔に愛された世界で唯一の医者なのだから。ジュノ。お前は良い医者だよ」。
「ありがとうございました」天城の墓標に頭を下げた世良は、溢れる涙を遮らず泣き、「これからも、医者としての仕事を続けていきます」と空に誓うのだった──。
数年後。
スリジエハートセンターには、天城が思い描いたソメイヨシノが咲き乱れていた。
センター長の高階は、エルカノ・ダーウィンによるダイレクト・アナストモーシスを臨床試験までこぎつけていた。東城大病院を離れたものの、全日本医学会・会長としてAI医療研究を支えた佐伯の力もおよんでのことだった。
海を見渡すオペ室では、天城の流儀に則り、世良がクラシック音楽の中でオペを手掛ける。
そして、ソメイヨシノの前。そこには、懐かしい相棒・猫田(趣里)に手渡された白衣に袖を通す渡海の姿があった。左腕には、東城大病院のロゴが見える──。
天城が遺したダイレクト・アナストモーシスの技術や、医師としての矜持は、確実に受け継がれていた。
ついに迎えた最終回。SNSでは、「天城先生にもう会えないなんて、辛すぎる」「まさかの天城先生…泣いた」と天城の死を哀しむ声が続出する一方、ラストの「渡海先生と猫田さんにわあああってなった!」という声を筆頭に、シーズン3や劇場版を待望する声が相次いでいる。
シーズン1のラストで渡海から「お前は良い医者になれ」、シーズン2のラストでは天城から「お前は良い医者だよ」と、ふたりの天才からの言葉に成長が見えた世良。世良を通して繋がっていく物語に、確かに次回作を期待せずにはいられない!
最終回はこちらから
イッキ見視聴はこちらから
シーズン1の振り返りはこちらから
公式サイトはこちらから
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