秘密の社内恋愛を描くラブコメは数あれど、職場では他人を装う夫婦が主人公という逆転の発想がユニークなドラマ『五十嵐夫妻は偽装他人』。U-NEXTで配信中の海石ともえによる同名漫画を原作に、お互いが気になりながらも反発し合う夫婦の“もだもだ”した関係を描き出す。
家出中の妻・会沢真尋を演じるのは、テレ東ドラマ初主演となる新川優愛。夫の五十嵐直人役は、昨年の大河ドラマ『光る君へ』で一条天皇役に扮して注目の塩野瑛久が扮する。別居中の夫婦の直人と真尋は、お互いに相手に告げずに転職。すると2人の転職先は偶然一緒で、しかも同じ部署で働くことに。
紆余曲折を経て、お互いに歩み寄った真尋と直人。しかし、2人が夫婦であることを知った美羽(田辺桃子)は、かえって略奪心に火が付いた様子。夫婦仲を引き裂こうと、ある策略に出る。何も知らないフリで「直人のことが好き」と真尋に相談し、直人のマンションに泊めてもらったことをあえて誤解させるように真尋に暴露したのだ。せっかく元サヤ寸前だったのに、真尋の心は硬直状態。
さらに、美羽が直人に迫っているところを目撃した真尋は、2人が抱き合っていると誤解してしまう。真尋を気に掛ける翠の存在も含めて、いよいよ四角関係は複雑な様相に。波乱づくしで目が離せない、第6話をレビュー!
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
薄暗いベッドルーム。「いいでしょ?」と男の腕を取って誘う女…。男は部長の竹橋(水橋研二)、女は部下・美羽(田辺桃子)である。
ド頭から、なんという驚きの展開!美羽は部長にまで手を出そうとしている!?
…と思わせて、実はここはサムラスジャパンのショールーム。
美羽はここで部長に「五十嵐夫妻の秘密を知っている」とカマをかけ、まんまと乗せられた部長は口を滑らせ、美羽に事実を知られてしまうことに。
この竹橋部長、ドラマの中ではいちばんの上長なのに、見事なコミックリリーフぶりなのが面白い。
さらに夫婦が別居中だということもペロッと口にしてしまい、喜ぶ美羽。「このことは内密に」と部長と約束するものの、彼が去ったあとの美羽の表情の不穏さたるや…。嫉妬で悶々とする美羽の苛立ちを、シャーペンの筆圧で表す描写も笑える。やっぱり田辺桃子、最高!
そんな魔性の女・美羽が抱える、複雑な背景も今回は明らかに。
彼女の実家は、昭和の佇まいを残す古びた一戸建て。見るからにレトロな玄関の引き戸を美羽が開けようとした途端、ひとりの老婆が飛び出してくる。
「助けてください!閉じ込められてるんです!」とすがりつく老婆を、美羽は「大丈夫だよ。おばあちゃん」と優しくなだめる。
実は、美羽の祖母は認知症で、父は10年間も音信不通。母がひとりで介護をしているようなのだ。さらに母は、美羽に食事中にこう言い放つ。
「美羽はそんなに仕事ができるわけじゃないし、勉強もそこそこだったし。だから、早くいい人を見つけて楽させてもらいなさい」
女性の自立心なんて全く無視した、なんとも古い考えである上に、娘の自己肯定感をがっさり削ぎ落とす毒親の典型の言葉…なのだが、母本人にも美羽にもその自覚がないところが切ない。
美羽が必死に“いい条件の男”を追い求める理由はそのせいだったのね…。そして、その必死の頑張りで疲弊した美羽の心に、するんと入ってきたのが理想の上司・直人だったわけなのね…。
なるほど、ただの”恐ろしい子”というわけではなさそう…なのだが、その分、美羽の直人への執着がただごとではないことも伝わってくるわけで。より一層、美羽の“恐ろしい子”っぷりが予想できる展開なのが怖い…。
一方で、前回すっかり雪解け、仲直りしたように見える五十嵐夫妻。久しぶりに2人揃って、真尋の実家の喫茶店「スノウ」を訪れる。
真尋の父・雪人(相島一之)に新しい豆の感想を尋ねられた直人は、的確に味わいを分析。すると雪人は、個性的な2つの豆を使っているが、「ブレンドすると不思議とまとまりが出て、豊かな味わいになる」と解説する。
「お互いの足りない部分を補い合って、いい部分を引き出し合ってるってことか」としみじみつぶやく直人に、「夫婦もそうありたいもんだねぇ」と雪人。
帰り道、自然に触れ合う真尋と直人の手と手。そして、真尋からそっと直人の手を握り、微笑み合う2人。雪人の言葉のとおり、このまま真尋と直人も元サヤに美しく収まってくれればいいのだが…。
さて、ここでもうひとりの伏兵・翠(兵頭功海)の登場である。真尋の手を取って呼び止め、「蒸し返してすみません」と謝りつつ、「FAXの相手って、もうわかってるんすか?」と真尋に問いただす。
まだはっきりとはわからないと言う真尋に、翠は不倫疑惑のFAXが送られたコンビニを特定したことを報告。彼は、FAXに印字されていた発信元を独自で調べていたのだ。
そして、そこは今は直人がひとりで暮らす夫婦のマンションの近く。しかし、真尋はそのマンションの真実を翠に言うわけにはいかない…。
「知ってるとこっすか?」と翠に詰められて、「知り合いが住んでるマンションの近くかな」とごまかす真尋。
あくまでも犯人を突き止めようとする翠だが、ことを大きくしたくない真尋は「これ以上、何もないならそれでいいかなって」と不問に付すつもりのようだ。
しかし、ここでそんな真尋に翠は「お人好しすぎるのもどうかと思いますよ」とビシッと言い放ち、うろたえる真尋に真っ直ぐな眼差しでこう言う。
「心配なだけっす!」
いつもは低体温そうな男子からのこの言葉。真尋がそんじょそこらの恋愛脳の女子ならば、「翠くん♥」とキュンキュンしちゃうこと間違い無しのシチュエーション!
なのだが、なにせ無自覚モテ女の真尋。まったく翠の恋心には気が付かず、「私のこと、バカだと思ってる?」と斜め上の解釈ののち、純粋な眼差しで「ありがとう。気をつけます」とお礼を述べるのである。
この無意識にピュアなところが、翠の恋心をさらにくすぐってしまうのだろう。罪な女…。
とはいえ、そんな鈍感な真尋も、翠には黙っていたものの、前回の美羽の「なんにも覚えてません〜!」というしらばっくれっぷりには、さすがになんらかの怪しみを感じている様子である。
直人に仕事の用事を装って近づき、美羽の実家が夫婦のマンションの近くであることを直人に確認する真尋。
一方、そんな真尋の内心は知らずに、こっそりパソコン画面で「今夜、メシどう?」と誘う直人。いじらしい…♥
もちろん、真尋の答えはOK。
「はい、問題ございません」とビジネスライクに返事する真尋に、直人は喜びのあまり「マジで!」と大声になってしまう。ほんと、いじらしい…♥
この「みんなにナイショ」というシチュエーション。ラブコメ的には大正解!ちょっとしたデートの誘いもキュン度高し!はよ元サヤに収まってラブラブになあれ〜♪と願わずにはいられない!
…のだが、離れた席でそんな2人を監視している美羽の存在がまた不穏なのである…。この会食、どうなっちゃうのかドキドキ!
さて、そろそろ退勤という頃合い。真尋は直人と会食へ向かう…のかと思いきや、声を掛けたのは美羽。
先方の部長との写真を撮られた時、怪しい人を見なかったか確かめる真尋に、「え〜、ホント覚えてなくて」とやっぱりしらばっくれる美羽。さらに、しれーっと「次長、めちゃくちゃ怒ってましたよね。あの時」と、2人の関係に何も気づいていないフリで真尋を戸惑わせたあげく、「私、好きなんです!五十嵐次長のこと」と爆弾発言をかますのである。
「あんな人がまだ独身だなんて奇跡ですよね」と甘えた微笑みを浮かべる美羽。
直人と夫婦であることが美羽に知られているとは思いもしない真尋は、「向こうの気持ちもゆっくり確認しないとね。仕事に支障が出たら大変だし」としどろもどろになってしまう。
すると美羽は、「脈はないわけじゃないかなって」と照れた表情を作って「実は私、この前、次長のおうちに行ったんです!」と告白。
別居中とはいえ、夫婦のマンションに後輩女子が来た!真尋としたらえらいこっちゃである。
さらに「次長って、前髪下ろすとめちゃくちゃカワイイんですよ!」と、誤解を招くしかない発言で真尋の心をかき乱す美羽。「どういうこと?」と聞く真尋に、美羽は「この前、お泊りしちゃったんです!」と痛恨の一撃を繰り出す!
さらに「私達のこと、見守っててくださいね♪」と天使の笑顔で真尋の手を握る美羽。
いや〜、恐ろしい子〜!!!そんでやっぱり、田辺桃子、天才〜!!!!
せっかく仲直りしたのに…。ウキウキで真尋を待つ直人の姿が切なすぎる。涙。
そこへ肩を落として現れた真尋は、もちろん能面の表情。
「泊めたの?林さんのこと」と真尋は早速、直人を問い詰める。そこで即答せず、ゆっくり事実を説明すればいいものを、直人から出た言葉は「なんでそれを…」。
暗に認めたとも受け取れる発言に、おそらく大きなショックを受けたであろう真尋は黙ってその場を去ろうとする。
直人はあわてて「林さんとは何もない!」と引き留めようとするが、もはや真尋の心は硬直状態。完全に打つ手を間違えてしまった直人なのである。
真尋は、「そう、わかった」と受け入れつつも、「でも、またにして。今日は帰る」と完全にぶんむくれである。
直人は真尋の腕を取って、さらに引き留めようとするも、真尋から出た言葉は「触らないで!」。
今度は、その言葉に大きなショックを受けた様子の直人。ああ、せっかく元サヤ寸前だったのに…。真尋は直人からの電話も完全無視。会社でも直人を避ける真尋。取り付く島もないとは、まさにことのこと。
どんよりモードの直人(しかし、憂い顔も美しい♥)は、ことの経緯を知ろうとメールで美羽を呼び出すことに。
密室に2人きりになった直人と美羽。このままではすまないムードがプンプンである。
「会沢さんにうちに泊まったこと話した?」と聞き出す直人に、「すみません!」とかわいい部下モード全開で肯定する美羽。
直人は「そういうことはあまり人に言いふらさないほうがいい」とたしなめるが、美羽はケロリとした顔で「大丈夫ですよ。会沢さんは言いふらすような人じゃないですし」とあくまでも無害な後輩を装う…。
一方、翠と2人で残業中の真尋は、デザイン集を取りに2人で資料室へ向かう。が、おそらくは2人の行先は…美羽と直人がいる密室!
その頃、美羽の狂言ストーカーを信じ込んでいる直人が、美羽を心配する言葉をあくまでも上司として口にしたのをいいことに、直人の腕を取って「次長って、ホントに優しいんですね」と寄り添う美羽。
はい、このタイミングで資料室のドア、開きますよね。真尋と翠がそこに飛び込んできますよね。
で、ちょうどそのタイミングが、美羽を押しのけようと直人が手を伸ばした瞬間だったもんで、どう見ても美羽を直人が抱き寄せているように見えますよね。
決定的な瞬間を目撃してしまった(と誤解した)真尋は、部屋を飛び出してしまい、直人は愕然。
そんな真尋を慌てて追いかける翠…。
「どうしたんでしょうね?会沢さん」と、何も知らない風の顔で言う美羽に、この期に及んで本当のことが言えない直人。それだからダメなのよ〜!!!
一方、動揺した真尋は、過呼吸&涙でボロボロに。そんな真尋をそっと慰める翠…。
落ち着きを取り戻して空元気を見せる真尋に、翠は「心配なんすよ。だから、俺に話してみませんか?何があったのか」と持ちかける。
真尋はどう出る?…というところで第6話は終了。
すれ違ってしまった夫婦の関係は、修復できるのか?真尋はこのまま、優しい翠に惹かれていく?そして美羽の思惑はどう転ぶ?波乱の連続の後半戦。次回の展開が待ち切れない!
第6話の視聴はこちらから
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紆余曲折の末、やっと別居解消となった真尋と直人。そんな中、真尋は父を見舞いに行った病院で、20年ぶりに母・如月春奈(黒木瞳)とついに再会することに。実の娘になんと非難されようと自分の生き方を貫く春奈の言葉に、真尋は心を動かされ…。
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