秘密の社内恋愛を描くラブコメは数あれど、職場では他人を装う夫婦が主人公という逆転の発想がユニークなドラマ『五十嵐夫妻は偽装他人』。U-NEXTで配信中の海石ともえによる同名漫画を原作に、お互いが気になりながらも反発し合う夫婦の“もだもだ”した関係を描き出す。
家出中の妻・会沢真尋を演じるのは、テレ東ドラマ初主演となる新川優愛。夫の五十嵐直人役は、昨年の大河ドラマ『光る君へ』で一条天皇役に扮して注目の塩野瑛久が扮する。別居中の夫婦の直人と真尋は、お互いに相手に告げずに転職。すると2人の転職先は偶然一緒で、しかも同じ部署で働くことに。
紆余曲折を経て、ようやく仲直りした真尋と直人。一方で、美羽(田辺桃子)が2人を別れさせるために行ってきた数々の悪事を翠(兵頭功海)は暴き出す。そんな中、今回はコントラクト事業部全員で温泉地に視察旅行に行くという展開に!相変わらず会社では他人偽装中の夫婦だが、美羽と翠には偽装他人がバレた今、全部署に秘密は守り切れるのか!?そして、この旅行でますます直人への執着を増してきた美羽&真尋のことが心配な低体温男子・翠との関係にも変化はあるのか?物語も終盤を迎え、それぞれの想いが交錯する第8話をレビュー!
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
視察とはいえ部署全員での温泉旅行とあって、ワイワイと楽しげな同僚たち。そのしんがりで、長い石段をしげしげと眺めているのは五十嵐夫妻である。
実は、この温泉地・伊香保は、結婚前に2人が初めて旅行した思い出の地なのだ。
「もう一度、あの頃の気持ちを思い出せってことかな」
しみじみつぶやく直人。そして、当時おそろいで買ったこけしのボールペンが、まだ同じお店に売られているのを見つけ、さらにしみじみとなる2人。
しかし、そんな風にしみじみしている場合ではないのである。今回の旅は2人きりではなく、直人を手に入れるためなら手段を選ばない恐ろしい子・美羽も当然一緒。
直人は「いつかはわかることだから」と真尋との関係を美羽に打ち明けることを決め、真尋も「隠してたことちゃんと謝って、わかってもらおう」とそれに同意する。
一方、翠に自身の悪事を知られた美羽は、翠が真尋にチクっていないか牽制しつつ、真尋への気持ちを認めるのが「怖いんですか?」と翠を煽る。
「何言ってるかわかんないんで」
そう言って流す翠を苦々しく見送ったところへ、美羽の携帯が鳴る。認知症の祖母を抱え、ひとり留守番する母にイライラを隠さず受け答えする美羽。
美羽も苦労してるのよね…。とはいえ、人間やっていいことと悪いことがある!
と、そこへ通りかかった直人。美羽がやって悪いことを平気でする子だとは知らずに、やめときゃいいのに「大丈夫?何かあった?」と優しく声をかける。そりゃ美羽は恐ろしい子ではあるけれども…直人も直人。こういう気を持たせるようなことするから…と全女子が心で叫んだことであろう…。
誰にでも優しい男とは、結果、誰にも優しくない男なのである。これ真理。
美羽は、ここぞとばかり、直人に祖母の認知症のことを打ち明け、同情を誘う”かわいそうな私”モードのスイッチオン。
「たまに心が疲れちゃうこともあります…。でも、大事な家族だし、支えなきゃって思って…」
しおらしく話す美羽に「あんまり無理しないように」と、あくまでも上司として優しさを示す直人なのだが、「ありがとうございます!」とお礼を言う美羽の目はキラキラ。直人は直人で真尋に負けず劣らずの無自覚モテ男ムーブ。罪な男なのである。
しかし、それにけじめをつけようと、美羽に真尋とのことを打ち明けようとした直人が、話を変えようとした途端…ロビーの真ん中で部下たちに招集をかけたのは部長・竹橋(水橋研二)。
結果、美羽に何も言えずじまいでこの場は終わる。…ということは、この先の波乱が予想されるわけで。見守る方はドキドキである。
宴会後の余興を終えた部長が部員たちの前で夫婦の絆について語りだすと、ついついアイコンタクトを取ってしまう真尋と直人。
その姿が目に入って面白くない美羽は、唐突に部員たちの前で「羨ましいです。そういう素敵な家族」と発言。ずいっと真尋と直人の間に割り込んで、早く結婚したいアピールをぶちかます。
そこへすっくと立ち上がったのは、翠!
全然ストーリーとは関係ないのだが、ここでの翠は鼻眼鏡の扮装をしている。低体温男子なのに、宴会にこの姿で参加していたのかと思うと笑える。「なぜそうなった?」と想像するだけで小一時間は楽しめそう…というのは余談。
「あんまり興味ない話なんで、飲み物もらってきます」と美羽の話の腰をポキリと真っ二つに。さらに真尋もそこに同行すると言って座を外し、自然と場はお開きに。相変わらず、真尋をさりげに守るいいナイトっぷりの翠である。
ぽつんと残された美羽に「このあとちょっと話したいことがあるんだけど」声を掛けたのは直人。いよいよ真尋とのことを打ち明けるのか?と思ったら、なんと直人、「このあと部屋に来てくれないかな」と美羽を誘う。
いやいや、直人さん、それはヤバいでしょ!!!!
しかも、「人目につかないように」とまで言い添えられれば、誰でも誤解してしまうというもの!!!!
美羽はグロスまで塗り直し、ウキウキで部屋を訪れるのである。
が、そんな美羽を出迎えたのは真尋。直人はひとりではなく、真尋とともに部屋で美羽を待っていたのだった。いやあ、ホッとした…。一方、美羽は般若の形相である。まあ、そりゃそうなるか。
2人が夫婦だということを隠していた経緯を、真摯に説明する真尋。そして、直人は入社時にとっさに独身だと嘘をついたことを美羽に謝罪する。
本当のことを言われても「次長は私に優しくしてくれましたよね」と、受け入れたくない様子の美羽。直人は美羽の誤解を解こうと、「君は大切な部下だ。それ以上の気持ちはない」と正直な気持ちを伝え、さらに「俺が浅はかだった。泊めるべきじゃなかった」と頭を下げる。
そして、直人がここで美羽に痛恨の一撃!
「ただ、彼女の不安を煽るようなことだけは言わないでほしい。俺は真尋が好きなんだ」
直人〜、よくぞ言ってくれました!…しかし、美羽がこのまましょんぼりと終わるわけがない。
絞り出すような低い声で、「は?ウザ!」と吐き捨てると「なんで私がそんなこと言われなきゃいけないのよ。そっちが嘘ついたのが悪いんじゃん!」と大激怒である。
「気を持たせるようなことしておいて、私が悪者みたいに言わないで!」と盛大に逆ギレしはじめたのである。さすが美羽…。失恋したのに態度が斜め上すぎる…。死んだ魚ような目でそんな美羽を見る直人の気持ちもよく分かる…。
「裏切り者!」と叫んで、「みんなにバラしてやるから!」と怒り狂って部屋を飛び出す美羽。
一体どうなってしまうのか?怖すぎる!
しかし、旅館の下駄を盛大に鳴らし、イライラMAXで歩く美羽を、止める男が現れる!
それはもちろん、恋する低体温男子・翠!同僚たちにあることないことぶちまけようとする美羽をすんでのところで押し留めるのだ。
真尋が見ているわけでもないのに、しっかり好きな女性を影で守る姿がマジいじらしい。…報われないのが切ないけども。涙。
逆上した美羽に「自分だって内心嬉しいでしょ。2人が離婚したほうが」と言われた翠は、「あんたみたいに人を陥れてまで自分の欲を満たしたくはないんだよ」とあくまでも冷静に言い返す。しかし、美羽に「そうやって自分の気持ちから逃げてるだけじゃん」と図星を突かれると押し黙ってしまう…。
すると、そこへ真尋が美羽を追ってやって来る!
「許さないから。独身だって嘘ついて私の気を引いたあの男も、他人のふりして薄ら笑ってたあんたも」と真尋と直人を責め立てる美羽に、「笑う余裕なんてなかった」と自身の心情を説明しようとする真尋。美羽は、そんな真尋に「いい人ぶるのもいい加減にしたらどうですか!」と言い募る。
一方、真尋も負けじと「私たちが夫婦だって知ってた?」と美羽に切り出し、不倫捏造FAX事件についても「あなたが仕組んだの?」と問いただす。
「会沢さん、意外とバカじゃなかったんですね」と暗に肯定する美羽に、「だからって何をしてもいいわけじゃないでしょう?」と言い返す真尋。
それでも、「そこまでさせた責任は自分にもあるから」と、直人に美羽の悪事はをバラしていないという真尋に、美羽は「バカにしないでよ」とかえって激昂してしまう。
「そういうところがいい人ぶってるって言ってるの!」という美羽の意見には、頷けないこともない。「結婚してると知ってたら、好きになっていなかった!」というのも頷ける。結局、手前勝手な夫婦間の理由で結婚を隠していたことが、全ての原因ではあるわけで…。
「私は不倫がしたいわけじゃない!次長が欲しいだけ!」
己の欲望にはとことん正直な美羽に押されて、被害者のはずの真尋もタジタジに。そして、「欲しいもの手に入れるために必死になったこともないくせに!」と、無自覚モテ女であるところの真尋の痛いところを的確に突いてくる美羽には何も言い返せない…。
「あんた、手に入れたもの、簡単に手放そうとしてたじゃない。次長のこと、そんな大事じゃないんでしょ?いらないって思ったんでしょ?だったら譲ってよ!」
いい条件で結婚することが冴えない人生から脱却する救いだと刷り込まれているがゆえの、美羽の切実な叫び。そして、当たり前に与えられた好きな人との結婚生活を大事にせずに、諦めようとしてしまった真尋。
美羽の立場でも、真尋の立場でも、耳が痛い女子は多いかもしれない…。
ドキドキしながらもどこかしんみりした心境で2人の対決の行方を見守っていたところに、ピリオドを打ったのはまたもや翠である。
割って入るのに、ラムネの蓋のビー玉をぽんと落とすところがまたイケメンである。
「この前、俺にしゃべったこと録音してるから、全部バラしてもいいんだけど」と翠が牽制すると、美羽は「あんたって会沢さんに都合のいい白馬の王子様だわ」と嫌〜な女全開でズバリ。
さらに真尋にも「瀬戸さんって、いっつも影で会沢さんを守って健気だと思いません?ちゃーんと感謝したほうがいいですよ」と、いかにも言外に何かを含む匂わせ発言をかます。
そして最後っ屁のように「そのダセえネックレス、全然似合ってねえから!」と言い捨てて去る美羽。その幼児っぽさが、もはやかわいく見えてしまう。美羽、恐ろしい子だけど憎めない子。
そして残された真尋と翠は、やや気まずげな空気ながらも、表面上は”心配する後輩くん“と”それに甘える無自覚モテ女”の構図に一旦は戻ったのだが…。
翠の真尋に対する恋心を隠す、しらばっくれっぷりもなかなかのものではありますが、真尋の鈍感っぷりもまたヤバくないです?ホントに翠の気持ちに気づいてないの!?
しかも真尋は、美羽のしでかした悪事を「直人には黙っていてほしい」と翠に依頼。「誰だって好きな人に醜いところを知られるのは嫌だと思うんだよね」と、なぜか美羽に同情的なのである!
いやいや、そ・う・い・う・と・こ・ろ!さすがに視聴者もイラッとし始めたところに、喝をいれるのもまた翠なのである。
「何言ってるか、マジでわからないです」
いや、ホントそう。瀬戸くん、よくぞ言ってくれた!
この期に及んで美羽を「傷つけたくない」と言う真尋に、いよいよもって我慢ならなくなった翠は、ずいっと真尋ににじり寄り、壁ドン!
「あんたのそういう優しさが周りを振り回してるんですよ。だから、俺は…」
そして切なげに真尋を見つめると、今にもキスしそうに顔をそっと近づけていく…。
…のだが、真尋は、そんな翠の顔面をただ凝視するのみ!
え、え?まだ気づかないの?真尋さん!?いくらなんでも無自覚すぎん??
そんな真尋の様子に、我に返った翠は手に持ったラムネの瓶を真尋の唇に押し当て「俺はラムネにしておきます」とキスを寸止め。
「油断してると、こうやってつけこまれますよ。ちょっとは自覚してください」
そう忠告された真尋は、さすがに動揺しているのか?よくわからない表情である。現実から逃げてるのだろうか?
とにかく、「じゃあ行きますか」と翠に促され、2人揃って直人の部屋へ向かうことに。
翠にも夫婦の秘密を知られていると知った直人は、まずは巻き込んでしまったことに詫びを言いつつ、美羽の様子を2人に確認。
「言いふらしたりはしないと思いますよ。自分に不利なことはしないタイプだと思いますし」と冷静に分析する翠に、直人は「今は様子を見るしかないな」と、ひとまずは大ごとにしないことを選択する。さて、これが吉と出るか、凶と出るか?
一方で、直人はおずおずと気になっていることを翠に切り出す。
それは、なぜ美羽が五十嵐夫妻を別れさせるための協力を仰いだのが翠だったのか、ということ…。
すると、翠は直人の目をまっすぐに見て答える。
「俺が会沢さんに惚れてるって(美羽が)思ったからです」
出ました、爆弾発言!
ここへきて、やっと真尋も「え?」と彼の気持ちに気づいた様子(遅い!)。
翠の想いを知った真尋はどう出る?そして、強力なライバルの登場に直人は勝てるのか!?もちろん、美羽もこのままで済むとは思えない!
いよいよストーリーも大詰め。次回も必見!
第8話の視聴はこちらから
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