元IBF世界スーパーフェザー級王者・尾川堅一選手インタビュー。「ボクシング人生やってきてよかったと最後に思いたい。そう思うにはもう1回世界のベルトを巻く。それしかない」
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元IBF世界スーパーフェザー級王者・尾川堅一選手インタビュー。「ボクシング人生やってきてよかったと最後に思いたい。そう思うにはもう1回世界のベルトを巻く。それしかない」

9月2日、再起2戦目となる『WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE vol.6​​』のメインで、マービン・エスクエルド​​戦に臨む元IBF世界スーパーフェザー級王者・尾川堅一選手。昨年6月に王座陥落して以来、10ヶ月を経た今年4月、クライ・セッタポン(タイ)から3度のダウンを奪うTKO勝利で見事に再起を果たした尾川選手が、再び世界の頂点を目指す現在の心境、これからのボクシング人生についての思いを語ってくれました。

━━ 4月の再起戦に勝利し、また世界に向けて前進を始めました。世界を目指すという意味で今までとの違いは?

尾川堅一(以下、尾川):昔顎を折って負けたことはありますけど、それとは違った意味で、世界戦で負けて後楽園ホールに出戻りして、みなさんの前で久々に試合をしたので緊張がすごかったですね。倒された後ではあるのでしっかりやりたくもあり、かといって中途半端な試合をしても意味がない。「世界チャンピオンにもう1回なる!」という意味を持って再起戦に臨んだので、今の自分がどれくらいの位置にいるか、どれくらいやれるかや「怖くなっちゃうのかな」、「打たれ脆くなっているのかな」といった色々な思いがあるなか、いい緊張感を持ってできた試合です。

━━ 2年半ぶりの後楽園ホール大会でした。歓声に包まれていかがでしたか。

尾川:あれが日本で試合するメリットですよね。自分のホームというか、大応援団が来てくれるので。前回500人くらい来てくれて、今回も400人くらい大応援団が来てくれるので、あれはやっぱり力になるしありがたいですし。まあ興奮しすぎちゃう部分もあるので、何ともですけど。本当に心強いです。それだけの人が期待してくれているので、絶対に応えたい。

━━ その試合では右ボディを効かせて膝をつかせてから、2度の右ストレートでTKO勝利を納めました。やはり右には自信がありますか。

尾川:昨年8月に手術して、最初はもう治らないのだろうなと思っていましたけど、今は本当に手術前というか、デビューして間もない頃、よく倒していた頃と変わらず、それ以上の状態に持ってこれているので、そういう意味で右を打ち抜けているのは、プラス要素ですし、まだまだ伸びるというか、もっと色々できるな、という手応えはあります。

尾川堅一_01

一戦一戦を必死にやって、結果を残して、自分が納得できる状態で終えられるようにしたい

━━ 今回、再起後の2戦目という点ではどういう意味を持つ試合ですか。

尾川:本当はすぐにでも世界戦がやりたいという思いがあります。35歳にもなってモタモタしていられないですし、何の変化もないような自分だったらさっさとやめたほうがいいと思いますし。だから今回はしっかりアピールできる試合というか、せっかく試合ができるので、つまり試合でしかできないことがたくさんあると思うので、次に向けてのアピールの試合ですね。

━━ いま言及のあった、35歳という年齢について思うことは。

尾川:20代のほうが良いのは間違いないです。でもそれは勢いだけですし、35歳だからってその年齢を言い訳にして色々とセーブしてもな、と思います。でもそこで無理して、結局壊れてしまう選手だっていると思いますし、そこは自分が感じる部分をしっかり感じて受け止めて、もっとできる部分ではもっとやるというように、調整をしていかないと。だから今しっかり動けているのはいいな、と思っています。

━━ ご自身で残り数年だと仰っていますが、キャリアとしての青写真はどのように描いていますか?

尾川:とりあえずもう1回、赤いベルトを巻きたいです。子どもたちに世界チャンピオンの姿を見せたいです。ただ今までは周りの方のためだったり家族のためにやっていましたけど、今回は自分のためにやりたいなっていうのもあって。そのために復帰しましたし、本当にボクシング人生やってきてよかったって最後に思いたい、そしてそう思えるのはもう1回ベルト巻くこと、それしかないと思っています。

━━ 王座陥落から復帰するまでには、葛藤があったのでしょうか。

尾川:すぐに辞めたかったですし「もうボクシングは限界だな」と感じた部分はありました。顔にもらって倒れるとは思っていなかったので、そこで倒れた自分自身への不甲斐なさもありましたし「1回チャンピオンになれて満足しちゃったのかな」と自分の中でも思うところがありました。でも子どもたちの声もあったりして、自分がくよくよしていてもしょうがないと思ったので「もう1度」と思って。もう1度やるからには絶対ベルトを巻きたい、と。

━━ 世界を目指す上で、以前と今では気持ちの面で変化がありますか?

尾川:それは考えたことがなかったですね。一度獲っているから、自分自身はそこで戦える実力はあるんだ、という自信はある。その点では違うと思います。

━━ 世界で戦うということにはどういう意味があるのでしょうか。

尾川:悔いなくボクシングを終えるという意味でも、そこが終着点というか、とりあえずの最終目標ですよね。再起してもう一度ベルトを巻くことが最終目標、そこからの防衛などはあまり意識していないです。自分が今のベストな状態でどれくらいできるかは、一戦一戦やってみないとわからないというのか、本当に先輩方だったり、過去のチャンピオンたちを見ていても思うので、ただやればいいだけじゃないので。一戦一戦を必死にやって、結果を残して満足のいく状態で終われるかどうか。終わりを見ているわけじゃないですけど、自分が納得のいく状態を作って終わりたいとは常々思っています。

━━ 今回、どんな試合をしたいと思っていますか。

尾川:自分が世界でやりたいと思っている意味では、しっかりアピールできないのであれば、ここで躓いているようでは、さっさと辞めたほうがいいという声もあがるでしょうし自分自身もそう感じているので、しっかりクリアするというか。なので対戦相手がどうということはなく、自分自身が満足できるパフォーマンスができればと思います。右で、バチン!で終わります。怖がらせてから、どこかでバチンて当たれば終わり、それが僕のボクシング。こまごまやるボクシングじゃないので、そこを楽しみにしていてほしいです。しっかり勝って、満足して帰ってもらう土曜日にしたいですので、応援よろしくお願いします。

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