日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』第7話では、端島の炭鉱で発生した坑内火災が島を揺るがしていく。火災を食い止めようと鉱員たちが奮闘する姿を劇的に描きつつ、人々の島への思いも浮き彫りにしていった。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
ここまで、ドラマは端島を舞台に描きつつも、炭鉱そのものを捉えたシーンは多くなかった。だがタイトルの『海に眠るダイヤモンド』が“黒いダイヤ”こと石炭を示していることは確かだろうし、その生命線を失ったら島はどうなるのか……。第7話は過去の端島を描くシーンが大半になり、端島の閉山を知っている2024年の我々は、その行く末を固唾をのんで見守るしかない展開が続いた。
1964年の端島と荒木家は、幸福そのものに見えた。進平(斎藤工)とリナ(池田エライザ)の息子は成長して1歳に。1歳のお祝いの「選び取り」で、子どもは坑夫のスコップでも鉄平の勤労課の腕章でもなく、寺の和尚(さだまさし)のところによちよちと歩いていき、家族はやさしい笑いに包まれていた。
仏に真摯に祈っている進平とリナを、和尚は「自らの身を投げ出しとるとよ」と語る。2人の信心深さは、ともに愛した人を失ったりと暗い過去があるゆえなのか。この幸せを失うまいと、必死に生きている様子がうかがえる。
一方鉄平(神木隆之介)は、まだ朝子(杉咲花)にプロポーズできずにいるが、2人には確かな想いに包まれていた。狭い端島での恋愛はすぐに気づかれてしまうと嘆くシーンにもしあわせが溢れていたが、そんな和やかな島のムードは、坑内火災を知らせるサイレンで暗転する。
一度目はなんとか鎮火したものの、二度目の坑内火災は海の下深度940メートルの最深部の坑道で発生。全てのポンプを振り向けても放水だけでは消火できず、坑道を封鎖して酸素を遮断する「密閉消火」を試みることに。島民が食事を用意するなど密閉作業に協力するものの、火災は一向に収まらずにさらなる爆発が地下の鉱員を襲う。地球という大きな生命に挑む人間──その無力さと、炭鉱を守ろうと命を懸ける賢明さがじりじりと伝わってくる。
そして、万策尽きたとみた炭鉱長の辰雄(沢村一樹)は、ついに坑道を放棄して海水で埋めるという苦渋の決断を下した。それは、二度と採炭ができなくなることを意味していた。
大ベテランの一平(國村隼)は、炭鉱長に食らいついた。文字通り命を懸けて海底に眠るダイヤを掘り続けたプライド、そして明治の開山から80年、戦争で我が子を失っても働き続けた無数の男たちのプライドは、生半可なものではなかったのだろう。
もっとも辰雄も、島の繁栄を終わらせたくない気持ちは同じだ。そして繁栄以上に、共に暮らしてきた人命を守りたいという思いは誰よりも強く、マイクを通して全島に語りかけた。
「端島は炭鉱の島です。石炭は我々の財産、生きる糧でした。しかし、本当の財産はここで生きている、働いている皆さんです。もう石炭がとれなくても、端島が終わっても、命にはかえられない。これ以上、甚大な事故を起こすわけにはいかない。この3日間の皆さんの働き、そして、この島で働く全ての人に、敬意を称します。ありがとう」。
目に涙を浮かばせながら辰雄が最後に放った「皆さんが生きている限り、この島の灯火は消えません」は、第7話のタイトル「消えない火」にも繋がっているのだろう。ここまで端島に暮らす人たちの生き生きとした営みを見てきたからこそ、人命を最優先とした決断に感謝したくなる思いだ。
長崎の大学を出た鉄平は、端島で働くために戻ってきていた。外勤で坑内の最前線に入ることがなかった彼が、最後には炭鉱の生命線である排水ポンプを止め、海底のダイヤモンドは眠りについた。どんな思いでポンプを止めたのか、長尺で映される神木の表情は見逃せない。
端島の繁栄を象徴するシーンとして、夜でも煌々と電気がついて島が輝いている光景がある。辰雄も一平も守ろうとしたこの明かりも、これからは寂しくなっていくのだろうか。第8話からは最終章に突入。新しい鉱脈を見つけようと奔走する鉄平ら、衰退する端島を守ろうとする人々の物語が進んでいく。
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