『アンチヒーロー』最終回。「共に、地獄に堕ちましょう」稀に見る傑作、その結末は?
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ“な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』最終回をレビュー
長谷川博己が「殺人犯をも無罪にする“アンチ”な弁護士」を演じるTBS日曜劇場『アンチヒーロー』第2話が、4月21日(日)に放送された。提示された殺害の決定的証拠を前に、明墨は依頼人の無実を証明できるのか──?
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
殺害の凶器として見つかったハンマーには、被告人・緋山(岩田剛典)の指紋と被害者の血痕が付着していた。公判が始まる絶好のタイミングで新たな証拠が見つかるという不可解さは残るものの、決定的な証拠と言っていい。
しかし明墨(長谷川博己)は、ハンマーは緋山がなくしたもので、それがたまたま凶器に使用されたのだから気にする必要はないと一蹴。それよりも、担当検事・姫野(馬場徹)が担当する裁判のDNA鑑定が、すべて都立医科大学の法医学教授・中島(谷田歩)に依頼されていることに着目した。
緋山を犯人だとする証拠が多数あったにも関わらず、検察は逮捕から起訴までに長期間を要している。明墨は、決定的な証拠がなく焦った姫野が、「被害者の爪から被告人のDNAが検出された」という証拠を捏造したのではないかと推測した。
赤峰(北村匠海)は「検察が改ざんをするわけがない」と咎めるが、明墨は「世の中の発見や発明はすべて、推測や仮説の上に成り立っている」と不敵に笑うと調査を開始する。
紫ノ宮(堀田真由)は、いつも中島教授の検査に立ち会う助教授・水卜(内村遥)に接触し、DNA鑑定の結果が保存されたファイルの存在を突き止めるが、赤峰のミスもあり、データを入手できないままに公判の日が近づいていた。
赤峰は自分のミスによって証拠を逸し諦めかけていたが、冤罪を晴らした憧れの明墨のように「無実の人を助けたい」ともがく。一方、明墨は「赤峰君、裁判というものの勝ち方を見せてあげよう」と余裕の様子で公判を迎えた。
第三回公判。
DNA鑑定を担当した中島教授の証人尋問が行われる。明墨は余裕綽々の不敵な笑顔で中島教授に近づき、鑑定の信憑性を疑う策に出る。
元々被害者の爪には被告人のDNAなどついていなかったが、中島教授が二度目の検査で故意に付着させたのではないか。それは検察からの依頼であり、金銭の見返りをもらっていたのではないか──。
明墨の追及に中島教授も、姫野検事も顔を強張らせ反論できない。明墨は「DNA鑑定を二度行ったこと」を証明しただけで、DNAの証拠捏造や、検事と教授の癒着にも踏み込んでいった。
そして、華麗な論陣は、視聴者にまでも突き刺さる演説とも呼べる弁論へと続き、明墨は、検察官が“起訴したからには有罪にしなくてはならない”という、ありもしない制約が重圧となり、今回のような不正を誘ってしまったと説く。そして、傍聴席に向けて語りかける。
「皆さんにも心当たりありませんか?組織に属するものなら誰しも、全体が作り上げた考え方を前に、自分自身を捻じ曲げてしまった経験が」。そしてまくしたてるように「司法に携わる人間は、人の一生を左右する立場にあるということを、1秒たりとも忘れてはならない。ゆがんだ思考が、平穏な暮らしを求めていた罪なき人の人生を奪ってしまう。それだけは絶対にあってはならない!」と声を荒げ、裁判長に「この法廷が、人が人を裁くため、公正な審判を行う場となることを、心から願います」と語ると、深く頭を下げた。無実の罪で、不正な検察に裁かれようとしている被告人と、それを助けるヒーロー弁護士、そんな構図に拍手を送りたくなるほどの名演説だった。
判決のとき。被告人に無罪が言い渡される。
検察の不正が暴かれた事件にマスコミが押し寄せ騒然となる中、明墨は緋山に「あとは自分で頼みます」とささやき車のカギを渡した。
赤峰はその様子を不審に思い、緋山が運転する車を追った。雨が降りしきる中、車を停めた緋山が入っていったのは産廃場。そこで、殺人を犯した際に返り血を浴びた衣服を捨てているのを目撃する。
やはり緋山は犯人だったのだ──。
明墨が見事に無罪を勝ち取る論陣と、それを裏切るように発覚する緋山の罪。なんとこれがクライマックスか、今回も裏切られたと第2話の余韻に浸ろうとするのも束の間、真のクライマックスが始まる。
人を救いたいと願い、正義を追求する赤峰と、罪も正義も語らず、裁判に勝ち依頼人の利益を守ることを自分の道と呼ぶ明墨。2人が対峙する圧巻のクライマックスに、SNSでも「重厚すぎる」「瞬きできないくらい見入った」と絶賛の声が寄せられた。
裁判で雄弁に語る明墨には、共感しかない。しかし事実として、殺人犯は無実となって世に放たれた。立場次第で「正義」の捉え方は異なることは百も承知だ。であればそもそも、正義とは何なのか?そして殺人犯でさえ無実にする明墨の真意とはなんなのだろうか?
二転三転する物語はすでに中毒性を帯びており、第3話ではどう視聴者を裏切ってくれるのか、期待はどんどん大きくなっている。パラリーガル・白木(大島優子)が言うように「この事件は、序章にすぎない」のだろうか。明墨に疑念を抱く赤峰や紫ノ宮がどう動いていくのかも含めて、第3話が待たれる。
第2話はこちらから
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