小森洸人(柳楽優弥)・美路人(坂東龍汰)兄弟と謎の男の子・ライオン(佐藤大空)のほのぼの共同生活から一転、サスペンス要素も色濃くなってきた『ライオンの隠れ家』(TBS系)。謎が深まる展開が続く中、名優たちの演技が感動を呼んだ第5話を振り返る。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
「何なんだよ。疲れるなあ」
額面通り受け取ればネガティブな言葉に聞こえるかもしれない。だが、『ライオンの隠れ家』を追いかけてきた視聴者はみんな知っている。そこに愛があることを──。
洸人は、遊園地の乗り物に乗った美路人とライオンを眺めながら、これまでの騒がしくも温かい日々を思い出していた。ライオンが行方不明になって見つかったこと、美路人がパニックを起こしつつも、ライオンのおかげで人前でパフォーマンスできたこと、そして誕生日会……。そんな思い出に浸りながら冒頭のひと言をつぶやく。これは、洸人にしか言えないことであるし、この言葉に彼の想いのすべてが集約されているように思う。
なぜ、柳楽の台詞からはいつも感情の色が見えるのだろうか。今回も、たったひと言で洸人のさまざまな想いを感じることができた。決して視聴者を置き去りにせず、物語に没入できるのは、柳楽が洸人を演じているから。彼の俳優としての巧みさを感じるシーンだった。
3人が遊園地に来たのは、橘愛生(尾野真千子)と会うためだった。彼女側から「愁人(ライオン)に会いたい」とメッセージが来たのだ。
愛生は謎の人物・X(岡山天音)と何らかの契約をし、逃走のための協力をしてもらっていた。当初は身を隠して働いていたが、週刊誌記者・工藤楓(桜井ユキ)と天音悠真(INI・尾崎匠海)に居場所を特定され、記事も出されてしまった。その後、Xから言われるがままホテルに滞在していたものの、今度は警察に居場所を知られてしまう。
愛生は、警察が部屋に突入してくる寸前でXのスマホを奪い、一人で逃げた。そのスマホは、Xが洸人と連絡をとっていたものである。
逃げ込んだネットカフェで、盗聴アプリを開く愛生。しばらくアプリを開いたままでいると、ライオンのぬいぐるみに仕掛けられている盗聴器から洸人の声が聞こえてきた。
その頃、洸人はライオンのぬいぐるみの中にメモ帳が入っているのを発見していた。そこには「ひろとみちとがくるまで げんかんのまえにいること」など指示が書かれている。最後は「ひゃくじゅうのおうみたいにつよくなったらむかえにいくね」との文字が。どうやら愛生が書いたものらしい。
メモを見ていると寝ていたライオンが目を覚ました。彼は怪獣が出る怖い夢を見たが、逃げなかったという。
「百獣の王だから倒した。だって……強くなったら迎えに来てくれるって約束したから。僕、強くなった?」
それまでシリアスな表情を崩さなかった愛生が、ライオンの声を聞いた途端、一気に母親の顔になった。息子の言葉に涙が止まらない愛生。その後、自らメッセージを送って会う約束を取り付けた。
このシーンでは、俳優・尾野真千子の真髄を見た気がする。洸人とライオンの会話が終わったあと、すぐに次のシーンにいくのではなく、20秒ほど愛生が号泣する場面が流れた。回想シーンも差し込まず、ただただ愛生が涙を流しているシーンだ。この余韻があるおかげで、いかに彼女が息子のことを心配し、会いたがっていたのかが伝わってきた。そして、視聴者が彼女と一緒に泣くことができた。尾野が体現したこの「母親の涙」は、2024冬ドラマの名シーンとして語り継がれるべきではないか──。
洸人の一言、愛生の涙……。俳優たちの演技に圧倒され、人の愛に涙した第5話。ラストには、愛生が警察に捕まるという衝撃展開があったが、果たして次回はどうなる?
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涙なくしては見れない海里の切ない背景と、それを丸ごと抱き止めるほこ美の包容力に感動の第5話をレビュー!
第6話では、完全に関係が修復した千葉悠⼀(犬飼貴丈)と、相変わらず積極的なアプローチをする弟の悠人(山下幸輝)の間で、マチ(井桁弘恵)の心が揺れ動く展開に。