TBSの10月期の日曜劇場枠『海に眠るダイヤモンド』の放送が10月20日から始まった。石炭産業で躍進した長崎県の端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる物語。どちらの時代でも、神木隆之介が扮する主人公に絡む女性陣、とりわけ宮本信子と池田エライザから目が離せない。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
世界遺産にも登録された『軍艦島』こと端島と、高度経済成長期から現代までの人間ドラマを描く本作。重厚長大なドラマかと思いきや、第1話冒頭で映し出されるのは東京・新宿のホストクラブと、そこに不釣り合いな老女のいづみ(宮本信子)。一体なんの関係が?と面食らっているといづみの相手をしたホストの玲央(神木隆之介)は謎の男に訳が分からないまま連れられ、いづみと一緒に長崎へ。「いづみさんって何者?」と玲央と同じ疑問を抱きながら、視聴者は1955年の端島に誘われる。
船に乗ったいづみと玲央の視点から時空が切り替わり、69年前のにぎやかな端島の情景や、神木が1人2役で演じる過去の主人公・荒木鉄平が登場する。
現代と過去で1人2役に挑戦する神木は、いずれの時代でも屈託のない青年になりきっている。ホストとしては放っておけないかわいげがあり、端島では炭鉱につきまとう暗く埃まみれのイメージを取り払う。そんな神木演じる鉄平が、大学を卒業してはわざわざ端島に帰ってきたのはなぜだろうか?「この島が好き」だけではない理由もありそうだ、と想像してしまう。
この島では、鉄平を取り巻く気になる女性が3人いる。幼馴染みで食堂の看板娘の朝子(杉咲花)、鉄平と一緒に長崎の大学で学んできた百合子(土屋太鳳)。そして進駐軍のクラブで歌手をしていたというが、素性不明の垢ぬけた女性の草笛リナ(池田エライザ)。素朴な朝子と、インテリらしさを匂わせる百合子だけなら、正反対の女子2人と男子2人(鉄平と、親友の賢将(清水尋也))によるありがちな関係性を想像するのだが、そこにリナが現れることでドラマは“戦後”の猥雑な空気を一気にまとう。すっかり平和になった現代日本ではつい忘れてしまうが、華やかさには裏があった戦後という時代の影を、劇中のリナはずっと背負っている。絶妙な存在感を見せているリナのおかげで一気に陰影がつくし、彼女の暗い事情を見抜くも「あんたに何があってどこから逃げてきたのか知らんけどさ」と受け止める職員クラブの管理人・町子(映美くらら)もまた、リナと別ベクトルで戦後をたくましく生きてきた女であることをうかがわせる。
鉄平・朝子・百合子がこれから訪れる右肩上がりの時代の象徴なら、そんな彼らと接してリナはどう変わっていくか?「人生を変えたくないか?」と鉄平に問われたリナは、現代パートで玲央に「人生を変えたくない?」と問ういずみとのつながりを思わせ、2人とも「いったい何者?」と興味をそそられる。
本作の伏線として気になるのが、第1話の映像が始まる前のほんの一瞬、真っ黒な画面に「1965」と映るシーン。続いて誰かが小舟を漕いでいる映像に、赤ん坊の泣き声が重なる。視聴者はさっそく「いずみの過去」が気になっているが、もしかするとこの赤ん坊がいずみと関係があるのだろうか?(1950年代に成人していれば、現代なら80代から90代。もしいずみが朝子・百合子・リナのいずれかなら少し年齢がズレているようにも思える)
「ヅカガール」「オフィスガール」「女給」と、しっかり1950年代当時の言葉遣いを考証し、初回で端島音頭をクライマックスに持ってきて、汗と埃にまみれる炭鉱夫たちの動的な映像美も魅力的。当時に生きた人々へのリスペクトを込めた緻密な作品づくりに期待が持てそうで、伏線と謎をしっかり回収するカタルシスを心待ちにしている。
第1話はこちらから
第2話予告編はこちらから
公式サイトはこちらから
TBSの10月期の日曜劇場枠『海に眠るダイヤモンド』の放送が10月20日から始まった。石炭産業で躍進した長崎県の端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる物語。どちらの時代でも、神木隆之介が扮する主人公に絡む女性陣、とりわけ宮本信子と池田エライザから目が離せない。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
世界遺産にも登録された『軍艦島』こと端島と、高度経済成長期から現代までの人間ドラマを描く本作。重厚長大なドラマかと思いきや、第1話冒頭で映し出されるのは東京・新宿のホストクラブと、そこに不釣り合いな老女のいづみ(宮本信子)。一体なんの関係が?と面食らっているといづみの相手をしたホストの玲央(神木隆之介)は謎の男に訳が分からないまま連れられ、いづみと一緒に長崎へ。「いづみさんって何者?」と玲央と同じ疑問を抱きながら、視聴者は1955年の端島に誘われる。
船に乗ったいづみと玲央の視点から時空が切り替わり、69年前のにぎやかな端島の情景や、神木が1人2役で演じる過去の主人公・荒木鉄平が登場する。
現代と過去で1人2役に挑戦する神木は、いずれの時代でも屈託のない青年になりきっている。ホストとしては放っておけないかわいげがあり、端島では炭鉱につきまとう暗く埃まみれのイメージを取り払う。そんな神木演じる鉄平が、大学を卒業してはわざわざ端島に帰ってきたのはなぜだろうか?「この島が好き」だけではない理由もありそうだ、と想像してしまう。
この島では、鉄平を取り巻く気になる女性が3人いる。幼馴染みで食堂の看板娘の朝子(杉咲花)、鉄平と一緒に長崎の大学で学んできた百合子(土屋太鳳)。そして進駐軍のクラブで歌手をしていたというが、素性不明の垢ぬけた女性の草笛リナ(池田エライザ)。素朴な朝子と、インテリらしさを匂わせる百合子だけなら、正反対の女子2人と男子2人(鉄平と、親友の賢将(清水尋也))によるありがちな関係性を想像するのだが、そこにリナが現れることでドラマは“戦後”の猥雑な空気を一気にまとう。すっかり平和になった現代日本ではつい忘れてしまうが、華やかさには裏があった戦後という時代の影を、劇中のリナはずっと背負っている。絶妙な存在感を見せているリナのおかげで一気に陰影がつくし、彼女の暗い事情を見抜くも「あんたに何があってどこから逃げてきたのか知らんけどさ」と受け止める職員クラブの管理人・町子(映美くらら)もまた、リナと別ベクトルで戦後をたくましく生きてきた女であることをうかがわせる。
鉄平・朝子・百合子がこれから訪れる右肩上がりの時代の象徴なら、そんな彼らと接してリナはどう変わっていくか?「人生を変えたくないか?」と鉄平に問われたリナは、現代パートで玲央に「人生を変えたくない?」と問ういずみとのつながりを思わせ、2人とも「いったい何者?」と興味をそそられる。
本作の伏線として気になるのが、第1話の映像が始まる前のほんの一瞬、真っ黒な画面に「1965」と映るシーン。続いて誰かが小舟を漕いでいる映像に、赤ん坊の泣き声が重なる。視聴者はさっそく「いずみの過去」が気になっているが、もしかするとこの赤ん坊がいずみと関係があるのだろうか?(1950年代に成人していれば、現代なら80代から90代。もしいずみが朝子・百合子・リナのいずれかなら少し年齢がズレているようにも思える)
「ヅカガール」「オフィスガール」「女給」と、しっかり1950年代当時の言葉遣いを考証し、初回で端島音頭をクライマックスに持ってきて、汗と埃にまみれる炭鉱夫たちの動的な映像美も魅力的。当時に生きた人々へのリスペクトを込めた緻密な作品づくりに期待が持てそうで、伏線と謎をしっかり回収するカタルシスを心待ちにしている。
第1話はこちらから
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