日曜劇場『御上先生』(TBS系)第6話は、第一章の幕引きとなった回だった。ずっと霧に覆われていた御上孝(松坂桃李)の過去。とうとう“それ”が明らかとなったのだ。
本作を観ていると、何度も思う。何度でも感じる。「御上先生と出会えて良かった」と。今回もそんなことを思った1時間だった。
※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。
御上は生徒にある告白をした。それは、兄・宏太(新原泰佑)のことである。
週刊誌に記事が出たことで、宏太の存在を知った3年2組の生徒たち。当初、御上は生徒に聞かれる前に「20年以上前のことだから」、「君たちには関係ない」と一蹴し、決して話をしようとしなかった。
ここで、富永蒼(蒔田彩珠)が立ち上がる。「みんな丸腰、丸裸で戦ってる。それ分かってます?なのに、なんでアンタだけ鋼の鎧、着込んでいるんですか?」と御上に説教したのだ。すべてが完璧に見える「御上孝」も人間だ。神様でも超人でもない。もちろん、生徒から教わることだってある。そんな彼女からの訴えもあって、御上は自身の過去を告白する決意を固めた。
御上から語られたのは、重くて苦しいものだった。教壇に立つ弟を見届けるように、宏太の亡霊も御上の告白を聞いている。御上だけでなく、隣徳学院の養護教諭であり、御上の過去を知る一色真由美(臼田あさ美)にも宏太が見えていたようだった。そんななか、御上は兄を見つめつつ、こんなことを言っていた。
「兄はどんなときも僕の速度を優先できる人だった」、「なのに僕は、兄の思いを汲み取ろうともせずに……」、「兄に最後の絶望を与えたのは母じゃない。僕なんだ」
御上は、よく生徒に「考えて」と語りかけている。彼の話を聞きながら、宏太が亡くなる直前、不用意に「友達に言われたんだよ。『お前の兄さん、この頃おかしいぞ』って」と言ってしまったことが、彼のなかでずっと引っかかっていたのかもしれない。二度と自分と同じような後悔をする人を増やしたくない、と思い「考えて」と言い続けているのかもしれない。そんなことを思った。
最後に、生徒と向き合う決意をしたものの、まったく向き合っていなかった、と反省した御上。「君たちはこんなにも向き合ってくれていたのに……。これからは絶対に目をそらさない。約束する」と述べた。このとき、教室には太陽の光が差し込んでいた。それはまるで御上の心を浄化するような、生徒たちと御上のあいだにあった最後の壁を壊すようなまばゆい光だった。
御上が教室を出たあと、安西淳平(森愁斗)が週刊誌を破り捨て、笑顔で「よし。弁当でも食うか!」とクラスメイトに呼びかけた。この一言で、教室がパッと明るくなり、無理やりにでも切り替えることができた。なんて素敵な生徒なんだ。
改めて言う。「御上孝」も人間だ。人間なのだ。彼だって苦悩してきた。辛い思いもしてきた。もちろん御上のすべてを知っているわけではないが、彼の苦しみに触れたあの29人は、御上にとって「救世主」のような存在になったに違いない。だからこそ、御上もすべてをさらけ出せたのだと思う。
御上は、真剣に話を聞き、すべてを受け止めてくれた生徒たちの表情を一生忘れないだろう。教壇から見たあの景色は彼の宝物になったことだろう。29人みんな最高だった。
そんな生徒からのプレゼントをもらった御上の表情にも変化があった。「約束する」と言った前後から、明らかに御上の顔が変わったように感じるのだ。彼の周りに漂う“なにか”が一気に消えて、御上の表情に色が宿ったような感覚を覚えた。神崎拓斗(奥平大兼)と話をしていたときも、とても穏やかで、すべてを受け止めてくれるような、そんな優しい空気感をまとっていた。
隣徳学院の裏側、真山弓弦(堀田真由)のこと、ヤングケアラーである椎葉春乃(吉柳咲良)のことなど、まだまだ問題は山積み。第二章を迎えた『御上先生』が、どんな展開を迎えるのか。次回の放送を待ちたい。
第6話はこちらから
第7話予告編はこちらから
公式サイトはこちらから
松坂桃李主演の学園ドラマ『御上先生』飯田和孝プロデューサー、宮崎陽平監督、生徒役・豊田裕大&山下幸輝が裏話を披露
美羽を取り巻く環境の切なさも胸を打つ、ドキドキの第9話をレビュー!
同期たちが専攻する科を決め始める中、未だノープランのまどかは新たに精神科に配属となる。 五十嵐から「精神科に向いている」と言われ、若干その気になっていたまどかだが、指導医・野口の「恋も仕事も距離感が大事」という言葉の意味を実感する出来事に遭遇するのだった。
広瀬すず主演のクライムサスペンス『クジャクのダンス、誰が見た?』第5話をレビュー